椚side[誠は嘘がつけない]
「トモ、そんじゃ帰るわ」
ほろ酔いぐらいで帰らないと明日寝て終わっちまうからな……。
つっても、もう夜なんだよな……何時間も居てすげー印象深い話はなかった。ほんとくだらねぇことばっか。
友隆とはサシで飲んでるとテンポがいいって言うか、あんま悪酔いしないよな。
相手によっては今日の半分飲んだだけでベロベロだ。
程よくトルクが回るっていうのかな。
いい感じなんだよ。
友隆はシャノピーが変なもの食わないか、せっせとお片付け中だ。
大変だなー生き物と暮らすってのは。
「なんすか?」
「いや、別に……」
「そうそう、椚先輩、お金」
友隆は、裸銭を俺に押し付けて来る。
「ん?」
「いや、最近買い出しに行けてなかったんで……めっちゃ助かりました」
「なんだよ、場所代で取っとけって」
「出来る彼氏感がキモいんで……」
「可愛げねぇんだよバーカ」
「カップ麺やら冷食やら野菜やら……無駄がないっす」
ああ、バタバタやってたのって俺が何を補充したかの確認だったワケね。
「そんな気にすんなら、次外で奢ってくれよ」
「はい!喜んで!」
「ハハ……まぁ、そん時俺が覚えてたらな」
これでいて気ぃ遣いだからな、生意気ギャップに俺はやられちまってんだ。
友隆はチラリとシンクに目線をやった。
「悪いな、やりっぱなしで……」
「いや、愛の料理後よりずいぶんキレイだなって」
「そーゆーとこだな」
「でも片付けるのは俺でしたから」
「そりゃお前が気になってやってた事だろ」
「おぉ〜確かにその通りだ!流石!」
「出てたんだろうな、女の子はそういうの感じ取るぞ」
「でもそんな俺、細かいほうじゃないんですけど……」
「コッワ〜wお前は細けぇよ」
「誤解ですね、次使うときに困るじゃん?って」
「お前はさ、優秀なんだよ。思考と行動にいつも理由があって……」
「そんなんトーゼンじゃん」
「人はそう言う生き物じゃないって、シャノちゃん飼い始めて分かったんじゃねーのか」
「……」
およ?意外と真剣に俺の話を間に受けてやがる。どうした?友隆よ。
「なんでも分かっちゃうんだ……」
あーどっかで聞いたようなセリフだ、ホントお前らはお似合いだったと俺は信じるね、同棲して似てきたんだろーけどな。
「なんかキモいぞ、もじもじしてる」
「いや、シャノが可愛いって……なんか良いなって思うのを認めるの、俺、結構時間かかった気がして」
「ふーん」
「……そうね、動物飼うのに俺は合理的な理由を探してたんかもなぁ……」
「ま、愛ちゃん出てって……突然だろ?お前の脳内大変だったろなw」
やべ、何となく禁句……。笑って誤魔化せるかな。
俺の心配をよそに、友隆は爽やかな顔つきだった。
「俺も色々折り合いつけてるんで」
「……そうだな、無理すんなよ」
「うす」
「なんか、帰り際が一番まともそうな話してんな」
「なんだよ、こんだけ居てくだらねー話ばっかしてたわけ?」
「そら、お前もだろ……シャノシャノ、またな」
クルル……
「自信なくなるわ」
「んー」
「シャノピ、友隆はお前手放したりしねぇから」
ンァン、ァ……
「返事してるみたいでしょ、こいつ」
「返事したんだよ」
「そ……」
「じゃ、週明けは緑ちゃんも戻って来るみたいだからさ」
「あ、そういや課長どうしたんすかね?研修期間終わってません?」
「さぁ?俺も聞いてないけど」
「ま、居ないほうが今のところ捗ってますしね」
「言ってやんなよ」
「自分も思ってるくせに」
「……じゃ、またな」
少しづつ玄関先へと近づき、とうとう俺は戸に手を掛ける。
なんか、俺を見送る友隆の視線は見据えてるように感じられた。
……俺が隠したものにも気付いているかもしれない。
別にどっちでも良かったんだけどな。
酒は入ってないほうがいいよ。
愛ちゃんからのメールは二通送られてきていたんだ。
やっぱり猫を引き取りたいって相談事。
俺もよくよく考えて返事しないとな。
友隆はあんま、愛ちゃんのメンタルに配慮しない感じあるし。
どっちの味方っていうと、友隆優勢なんだけどさ。
お前の味方したってしょうがないだろ。
いや、言っとくべきか?
俺は外へ出た後、ドアの前で動けなくなった。
「……」
「友隆、あのさ」
ガチャリとドアを開けると、まだ友隆が玄関先に居た。
「……なんすか」
「友隆、愛ちゃんからな」
「ん、分かってますよ」
「……そうか」
「帰り際に後ろ髪引かれすぎだっての」
「……悪りぃな、お前から連絡はすんなよ」
「着拒されてるんで〜」
「いや、もう、通じるようにしてるだろ」
「そうかもね」
「ま、静観に努めるからさ」
「いや、椚先輩が説得してくれると……」
「わかってんだろ、お前が勝ち取らないといけないって、じゃねーと、なんか引きずるって……俺は上手くフェードアウトするだけだよ」
「……ホント、苦労かけますな」
「いや、俺こそ首突っ込んで悪かったよ」
「……俺、誠さんには感謝してますよ。」
「……」
「まじで、色々」
「そうか」
「ひとりじゃ思い込んで、こいつ諦めてたもん。」
「そうか……」
「こいつの寿命聞いて俺嬉しくなったし」
「そうだな、お前にはさシャノちゃんが必要だよ」
「なんでよ」
「ん?閉した心があっただろ」
「……うん、猫ってすげぇわ」
俺が再びドアを閉めると、今度は確かに鍵の掛かる音がした。
願わくば、元鞘で友隆に彼女、シャノシャノも一緒。これが俺のベストなんだけどな。
愛ちゃんから完全に心離れてる感じだったし、もう猫を彼女にしてもらうしかねーわ。
俺も人間だからな、友隆。
あんま感謝してくれるなよ。




