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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
緩やかな修羅場

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友隆の困難13

「手がかかる子ほど可愛いっていうのはホントだな」



「……そうですかね」



「そうだろ」



「まぁ……」



 俺はシャノの顔を拭いてやり、頭を撫でて放った。


 そのままテーブルの下で毛繕いを始めたと思ったらすぐに止めてバタリと倒れる。



「離れられねーだろこりゃ」



「……意地悪言わないでくださいよ、俺にはどうにもできないって」



「俺はお前次第だと思うけどな」



「……」



「あのさ、俺から蒸し返すのも悪いけど……」



「……」



 言いかけて本当に話していいかこの人は俺の顔を見て確認を取ってる。


 きっと俺にとって希望のある話。


 多分そうなんだろうと、聞かないと後悔するんじゃないかと……そう思えて俺はこくりとうなづいていた。



「いや……悪いな、愛ちゃんの事こう言うのさ……」



「まどろっこしー野郎だな、とっとと言えって」



 俺は幼馴染とか、そういう関係の外の人間だ。いつまで経ってもこの人からすると身内感があるんだろう。


 ま、その気遣いはありがたい事だけどな。


 俺に責任があるって思ってるから、悪く言って欲しくない。そう言われちまうのも俺の責任な気がしてもっと罪悪感を煽るんだよ。



「……愛ちゃんには無理だろ」



「……」



「あの子じゃ責任取りきれねぇよ」



「……そうかな、シャノは愛の事好きでしたよ、きっと」



「懐く懐かないじゃない、相手がお前だったから良かっただけで保健所持ってかれたって文句言えねーから」



「保健所……」



「そうしない相手だって確信出来たらオッケーじゃない、本人が行き詰まった時にどうすんだって話」



 俺が思っていて言えなかった事。


 愛に感じた『酷い』と思う部分。


 きっと相対したら傷付けられるだけ傷付けて、それで引き渡しちまうんだ……俺。



「多分、あの子捨てちゃうぞ、そんで捨てた猫を後から必死で探すんだよ」



「……」



「ただ、お前も覚悟しろ……ゆうに十五年は生きるからな」



「それは、……」



 十五年……そうか、十五年、そんなに生きるとは思わなかった。こう、何年って想像してなかったけど……いや、十五年か……。





「……なにお前ニヤついてんの?」



「いや、思ったり生きてくれるんだなーって」



「おう、頑張れば二十年もいけるみたいだぞ」



「そっか……」



 椚先輩は、ビールを飲み終えたようで席を立った。


 俺もそろそろなくなりそう。



「誠さん俺も……」



「なんかバケツないわけ?」



「あー、理解ですよ、でも酔ってそこにオシッコしないで下さいね」



「……こんなトコにマーキングしてもな」



「……」



 俺は椚先輩を座るよう促して、テーブルの食べ物とシャノを見張りつつ上の戸棚からワインクーラーを取り出した。


 その様子に気づいた椚先輩はテーブルの上を見ていてくれている。


 俺は冷凍庫のアイストレーから氷をぶちまけてビールを数本入れてソファーへと戻った。



「こう言う時に彼女は大事っす」



「うわっお前それ駄目だぞ……」



「勝手にお世話焼いてくれるよね」



「動かない為の努力はしよーぜ」



「だるいっすよね、酔っ払ってる時にちょっと動くってやつ」



「ま、これで暫くは重たい腰を上げずに済むとな」



「あー……こういうとこで嫌われたんかな俺」



「そうは言ったけど、お前は甲斐甲斐しいよ」



「まーた、キモいなぁ……」



「なんか俺が褒めるとキモいって言うよな」



「……照れ隠しだから許して」



「10回までだから」



「もうすでに叩かれましたけど」



「それは撫でただけや」



「俺も撫でてあげますよ」



「……」



「……」



 しばしの沈黙。何やらぷくぷくとソファーの下から奇怪な音がするじゃんか。



「これ、イビキか?」



「可愛いでしょ」



「そーね、うん」



 再び隣同士、美味い酒を飲む。 時折まずい酒。でもやっぱ美味い酒なんだよ。



「……猫って五年くらいだと思ってた」



「野良猫とかは、そうかもな」



「そうなんだ……」



「このマンションいつまで住めるんだ?」



「どうかな、後十五年は堅いっすね」



「ちゃんと町内会みたいなの参加してるんか?」



「基本免除っすよ」



「ほー」



「ま、母ちゃん知ってる人が生きてるうちですね」



「そうか……」



「シャノの事、酔ってるからかな、俺、前向き」



「そうか、お前は立派な猫オジさんになるよ」



「なんすかそれ」



「野良猫とかは拾ってくんなよ」



「シャノのみたいなのが居たらわかんないっすね」



「野良エキゾチックは居ないだろー」



「あ、ちゃんと調べよっと……エキゾチック」



「後でやれや」



「誠さん、猫飼ってましたっけ?」



「……なんだよ、一般的な話だっての」



「ふーん」



「……好きな子が猫好きだったの」



「ひと昔前の俺なら愛の事かって疑いましたね」



「別に愛ちゃん嫌いじゃないってか、可愛いと思うよ。でも恋愛対象ではないってのが……信じ難いよな〜」



「通算して恋愛感情ゼロは信じませんけど」



「んー幼児の俺に聞いてみないとその辺は……」



「ま、いいけどね。付き合ってた女がモテるのはいい事だって」



「変な着地すんなよ、お前らは弟妹だっての」



「お兄ちゃんは緑町さんと上手くいくといいですね」



「あー!!言った!!俺の秘めたる想いを言語化した!!」



「笑う……」



「それで愛ちゃんとの仲疑うなよな〜」



「いや、好きな女の子が一人とは限りませんから」



「……お前はそういう奴なのか?」



「小学生の頃は三人くらい居ましたよ」



「俺は小学生じゃねぇ!!」



「あ、なんか電話……」



「ん…………」



「……」



「出る?」



「……なんで俺が」



「……」



 騒ぎ立てていた二人の間に突然沈黙が訪れる。


 そして振動が収まった。



『瑞江 愛』



 もはや宿敵、俺の立ち向かう相手。


 元彼女。


 椚先輩の顔を見ると、口元に手を当てて何か思案しているようだった。


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