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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
緩やかな修羅場

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友隆の困難12

「なんかさ、シャノピーお前に似て可愛い猫だな」



「……また、キモ……」



「……」



「ネギトロ食うのこわいっすね」



 俺はまた『キモい』と発しそうになって話題を変えた。


 椚先輩はじとっとした視線を俺に送ってくる。



「なんか、おやつねぇの?」



「おやつ……」



「冷蔵庫に猫の牛乳が」



「シャノピー、おやつが牛乳だってよ!かわいそ!」



「おやつのあげすぎは良くないって……」



 そう言われると、そんな気もして可哀想に思えた。ただシャノは牛乳が多分好きなんだよ。


 いつも顔をビシャビシャにして飲んでるし……。


 

「あとエネルギー有り余ってる感じするよな、ちょっと遊んでやれよ」



「支度任せていいんすか?」



「ネギを切り始めた時から覚悟してるわよ」



「ハーイ」



 俺はすっかり台所に興味をなくして窓際で倒れているシャノを触り、スツールから猫じゃらしを取り出した。


 すぐに半身を起こしてこちらを見ている。


 そうだなーなんか、色々足りてねぇのかも……。


 ごめんな、シャノ。


 あんまり感情移入したくなくて買ったはずなのに。


 そんな訳にはやっぱいかないよな。


 キャットタワーの一人遊びは結局可哀想じゃん。いる時は構ってやらないと。


 俺は相変わらず、猫じゃらしを振るのが下手だ。


 仕方なく遊んでもらってるよ、俺が。


 

「地味な遊びだな」



「こういう猫なんですよ」



「新体操のリボンのように振ってみろ」



「むっ」



 俺は解せなかったが言われた通り、イメージでピョンと猫じゃらしを跳ね上げてみた。


 シャノがザザッと潰れた身体が更に低くなる。


 お?


 床をスライドするように上へと流すと、シャノはバッと跳ねて猫じゃらしを叩こうとした。


 俺は正直ビビってしまう。



「ハハ……何ビビってんだよ」



「驚いただけだって」



 まさに図星だったが、俺は今までしゃがみ込んでシャノの目線でだけ猫じゃらしを振っていた。


 そうだ、こいつは鳥なんかが飛んでくると興味を示していた。


 高い位置を意識して、緩急をつけて上に跳ね上げる。


 面白いようにシャノはその動きに合わせて飛んだ。


 

「すげぇ!!」



 もっと高く、もっと高く、シャノは飛び上がって来る。


 俺はドキドキしながらも、猫じゃらしの動きと同じようについて来る身体能力に感動していた。


 思いがけず襲われた時は幾度かあったが、楽しい……これは楽しい。


 

 シャノはまだ飛びかかろうと、ぐるぐると回って見せる。



「友隆、その辺にしとけよ」



 その声に我に帰って、シャノに連続ジャンプを決めさせていた事に気付く。



「めっちゃ遊んだ……」



 猫じゃらしを振るのをやめたと同時にシャノはその場にバタっと倒れて少し息を切らしてるようだった。



 台所から先のネギトロやら、揚げたポテトフライやらを運びテーブルへ置くとシャノの元へと椚先輩は向かう。



「すげー遊んだな」



 そう声を掛けて、ポンポンと頭を触りやがる。



「遊んでやったのは俺ですー」



「友隆と遊んでくれてありがとな、シャノピー」



 ったく、勝手にあだ名まで付けやがって。


 俺はスツールに猫じゃらしをしまい、椚先輩の代わりにビールやらなにやらを取り揃える。


 ついでにシャノの牛乳を持って、小皿でシャノの前に置いてやった。


 すぐさまシャノは嬉しそうにぺろぺろ舐め出す。


 舐める勢い余ってか、床に牛乳が飛び散り見る間にシャノのもビチャビチャだ。



「なんか飲むの下手くそだな、こいつ」



「そ、飲み終わったら拭いてやんないと……」



「あ、なんかこのポテト味がねぇ」



 椚先輩はシャノから離れると徐につまみ食いをして、台所に手を洗いに行く。順序が逆だ。


 

 塩を持って、着席。


 俺も習って、着席。



 変な気恥ずかしさを感じつつ……



「「せーの」」



 二人でプシュッとビールの蓋を開ける。


 乾杯するわけじゃない。


 これが俺らの挨拶だった。


 ぐぐっと喉にビールを通過させて、息を吐く。



「うまーーい!!」



「おー、昼の酒最高だな」



「なんか、こんなに美味いとは……」



「なんだよ、友隆」



「いや、気まずい酒を義務的に飲むんだろーなって……」



「思ってたわけだ」



「そ、」



「俺も辛気臭くても飲めばマシってな」



「思ってましたよね〜」



「おー」



「ねぇ、ポテトフライ味なくね?」



「塩かければいいでしょ」



「一応確認してからだな」



「鬱陶しいヤローだな、そんなん勝手にしろよ」



「てめー、気遣いをなんだと思って……」



 こんなやりとりをしながら俺らは相変わらず笑ってる。


 久々に旧友と再会したかのような、ふわふわとした楽しさが漂った。


 毎日仕事で顔合わせてるのとやっぱ違うな。



「お、シャノピー来たぞ」



 グシャグシャに濡れた顔で、シャノは俺らの合間で止まって鼻をヒクヒクさせていた。


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