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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
緩やかな修羅場

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友隆の困難11

「……触わんじゃねーよ」



 徐に足元のシャノに椚先輩は手を伸ばした。



「ゴロゴロ言ってる」



「……」



「いい猫なんですよ」



「それ、分かってねーだろお前、懐っこいやつだな」



 椚先輩が間をおかずに抱えるもんだから俺はとんでもなく驚いた。


 引っ掻かれ……ないか。



「さっきは驚いちゃったんだよな、ごめんな?」


 そんな事を言いながらあやされてシャノはすっぽりと椚先輩の胸で丸くなり目をつむっている。



「ヒデェ……」



「何がだよ」



「……猫慣れてますね」



「お前が知らなすぎるんだって」



 椚先輩は、笑いながらシャノの喉を掻いてる。シャノは嬉しそうにしてる。



「……」



「お前、コワイゾ……何だよその顔は……あ、もういい?」



 そう言いシャノを手放すとピョンと飛び出していく。



「……スゲェ、愛と一緒だ」



「なんで禁断のワードを自分で出すんだよ」



「……そう思ったから言っただけです。俺はそんな風に出来なくて……猫の気持ち分かるんすか?」



「何だ、マジメか」



「は?」



「大人になったらだいたい似たり寄ったり、大差なくなるような事もあるけど、お前はマジで動物に触れてこなかったんだろーな」



「母ちゃん、動物嫌いだったし」



「……」



「なんか、あったのかもな」



「そのしたり感ムカつきますね」



「いや、猫抱っこするぐらい誰にでも出来るんじゃね」



「今は、だいたい、出来るし」



「うわ、その返答恐いな。お前ハムスターとか握り潰しちまいそう」



「……そういう奴もいるんですよ」



「……そうだな」



「……」



「ネギトロ食う?」



「もう酒始めるんすか?」



「いや案外、根掘り葉掘りないし……」



「あー……いや、どうでもいいかなって」



「それだからお前、爬虫類系って、フ……」



「なんだよ……」



 椚先輩は笑いを堪えている。



「動物を可愛がってるお前、変だよ。まぁでも、その辺大事にした方がいいんじゃね?」



「……よくわかんない」



「友隆お前、冷たい生き物だって周りから言われてたんだぞ」



「手を握ると冷たいねって……」



「分かってて言うなよ」



「そんなつもりないんですけど」



「……俺もそうは思うけど、いや、むしろ暑苦しいぐらいアツイ奴なんだけどさ、つっけんどんなトコで冷たく見える時があるんじゃね」



「……言い方がキモい」



「お嬢さん方が表面的にお前のギャップ萌えに好意寄せてんのが気に入らねーんだよな」



「なんすか、それ……」



「んで、愛ちゃんとより戻さねぇの?」



「……アンタそんな事言う先輩でしたっけ?」



「俺も必死だから」



「……へー、しつこいんで止めてください」



「まだそんなにしつこくしてない……」



「ネギトロって、ただのトロですか?」



「ネギトロ用トロだな」



「ネギないです」



「小ネギがあります、買ってきました」



「自分でやれよ……」



「素トロよりも、ネギ入ってると捗るじゃん」



「……まぁ、刻むだけだしね」



「トロの話よりも話されない事があるんだね」



「……折り合いはつけてたんで」



「冷たい生き物だな〜」



「そんな事ないと思うけどな……」



 俺はつい口を尖らせてしまう。


 なんだってんだよ、冷たい生き物だったらこんなに悩んでねーよ。



「……ったく、俺が刻んでやるよ」



「たまに彼氏っぽくなってキモいです」



「へーこれが彼氏っぽいんだ、知らなかったわ。あとそれからな、キモいが10回超えたらぶん殴るぞ」



「10回も言っていいのか、気が長い先輩だ」



「イテッ」



 椚先輩は俺の頭を間髪入れずに叩いた。まぁ、叩かれると分かっていたけど。


 ホント、どうでもいい話しばっかだよ。


 学生時代もこんな感じだったな。


 同じ会社に勤めて、先輩呼びが増えたくらいか……。


 椚先輩は俺を叩くと同時に席を立ち、ネギを刻み始める。


 何でもさっさとはじめるんだから、感心しちゃうね。右往左往、身動きが取れなくなってる俺とは違うよ。



「椚先輩、失恋した時どうしてました?」



 何とも言えない表情で、俺に視線を送ってくる。



「……失恋までの段階があってだな、突然失恋した事ないから」



「……へー」



「失恋に備える、準備万端、回避できるように出来ることは全部やる。そんで失恋したら……やりきった俺に悔いはないよ」



「へーそれ、模範解答なんすか?」



「そうはいかないけどな、ただ悲しい事に備えておくのは大事だろ」



「案外繊細ですもんね?」



「お前ほどじゃねぇよ」



「……そうかな」



「シャノちゃんにトロあげていいか?」



「は?」



「いや、足元にすげー絡まってるから」



「ちょっと調べてみろよ、ネギなしの今だけだ」



「……ネギがいけないって知ってるんすか」



「んーわりと、常識?」



「ほんとかよ」



 俺からすると、この人って結構博学だよな。何でもパッと吸収するんだよ。



「脂っこいのはだめだって」



「猫のくせに、トロはダメか、そうか」



「ハイ」



「……友隆、シャノピ回収しにきて、今すぐ」



「は?」



 俺はその言葉の意味がよくわからないまま台所側へ向かうと椚先輩の足をクライムしているシャノを見つけた。


 椚先輩は刻んだネギを覆い隠しつつ、トロをひじで守っている。


 ちょっとオモロいなと思いつつ、シャノの脇を掴むが、中々離れない。



「シャノ、駄目だぞ」



グゥ〜ゥ……ゥ……



「コワスギw」



 唸り声を上げながら必死にしがみついている。そして爪の先が椚先輩のジーパンに引っ掛かっているようだった。



「友隆、戸棚だ、戸棚開けろ」



 そう言いつつ、手についた小ネギを払い椚先輩は万歳をしながら壁際へ背中を付けた。


  腰まで到達したシャノから俺は手を離し、すかさず下の戸棚を開けると、シャノは椚先輩を蹴飛ばすような形で降り立った。



ア〜〜!!マァ〜マ……ア



「おーーすげ、よっぽど食いたかったんだな」



 俺は餌の袋を振りながら、シャノを誘導する。


 そして餌の数粒を皿に落とした。



「ビックリした〜」



「もうちょっとやっとけよ……」



「あー怪我しませんでした?」



「中々、気合い入った蹴りだったわ」


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