友隆の困難10
「ほら、姉ちゃんはちょっと歳が離れてるからさ、別の生き物っつーか」
「兄弟いないんで、わかんないっすね」
「んー、歳が離れてるとさ、気持ちだけでお兄ちゃんお姉ちゃんとはいかないのよ……いつも絶対的にお姉さんじゃないきゃいけなかった人」
「……」
「俺と愛ちゃんは、友達でも良かったし、たまにお兄ちゃんになれば褒められてたんだよ」
「へー」
「俺が絶対的な兄の歳だったら、そもそも愛ちゃんと関わる事はなかったかもな」
「……難しい話っすね」
「まぁ、ある日愛ちゃんが遊んだ帰りにすっ転がってな、足から血が出ちゃったのよ」
「……」
「俺も慌てたぜ、愛ちゃんが見た事ない勢いでギャンギャン泣くからさ」
「子供の頃は慌てたりしたんすね」
「あたりめーだ、すぐに母さん呼んで消毒やらバンソコーやらさ」
「……ほんで?」
「夜に愛ちゃん家のお父さんが家に怒鳴り込んで来たのよ」
「……それ、ぜんっぜん……っ笑えないんですけど」
椚先輩は思い出し笑いっていうか、微笑みながらその話を打ち明けた。
「えー?今となってはだよ」
「……そう」
「母さん土下座して謝ってたな」
「……」
「でも、俺を連れて謝りには行かなかったよ。同級生とじゃれて怪我させたなんだってのはよく連れてかれてたけど」
「……いいお母さんですね」
「……ま、ここで歳下の女の子の友達は居なくなったわけだな」
「……なんか、すいません」
「ハハ、お前、気まずい話させたと思ってんのか?いつの話だってーの」
「いや、ホント、なんか、……」
「とゆーわけで!!そんなもんだよ。中学生の頃云々は知らねぇな、一年しか被ってなくて大学で再開した時もそんな覚えちゃいなかったぞ」
「……はい」
「だから、別に狙ってねーよ」
「……やだっ!!恥ずかしいっ!!」
俺は冗談めいてそう言ったが、本当に恥ずかしくなった。ちょっとふざけるのが精一杯で。
100疑ってた訳じゃない。けれども疑う心が確かにあった。
「んで、俺はお前との関係ありきでいいように使われただけってこと」
「……」
「あー、お前らさ、俺の妹と弟で、恋人同士のセットじゃなくて……俺から見たらそのまんま、弟妹ってこと」
「だからうっかりだよ」
「……キモいっすねっ……てっ!!」
俺は誠さんに叩かれた。
「……より戻せばいいじゃんか」
「いや、それはないです」
「即答すぎw」
「なんか、ふっと……冷めちゃって」
「愛ちゃんいい子じゃん」
「……そんなん分かってますけどね、もともと合わなかったのかもしんない」
「あんなイイ子いないぞ」
「……いい奴でしたよ、でも、なんつーか……薄情すぎて……引いた」
「シャノピの事か?」
「かなり堪えましたね……コイツの事知れば知るほど、愛がヒデェ奴に思えた」
「事情があったんだろ」
「……でも、俺は手放したりしないよ」
「……ん?」
「え?……いや、俺がその立場だったら!!」
「まぁ、お前が決める事だよ。少なくとも俺には、お前に権利があると思うけどな」
「……なんだよ、キモい」
「お前ぐらいだぞ、俺にキモいって言うの」
「……で?いくら貸したんすか」
「ん、回収の目処立てて俺も動いてるからさ、ほっとけよ……俺の責任だって」
「そう言うなら、俺に八つ当たりしてませんでした?」
「……人の気持ちってのは難しいもんだな!!」
「床の傷、弁償させますよ」
「恩知らずだな、お前」
「いや、言っただけ」
「そうだな、でもびっくりした」
「……誠さん、」
「ん?」
「……いや、なんでも……いや、やっぱ……」
「伝わってるって、言わずもがな」
「俺がバカって言おうとした事?」
「……ガキが、そーゆーとこ、ま、嫌いじゃないからな」
俺と誠さんは顔を見合わせると自然と笑い合えた。
納得ずくじゃない。
けれども、俺はこの人に頼ったっていい。
この人もそれでいいと。
きっと思ってくれてる、そう感じるぐらいにこの人は優しかった。
「シャノピ、寝てるな」
「あ、ホントだ」
シャノは自分の名前に反応してるのか耳をピクッと一瞬させた。
俺の足元と、誠さんの足元。
半分づつに乗るような形で丸くなっていた。




