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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
緩やかな修羅場

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友隆の困難6

 掴もうとした瞬間に早歩き。


 勢いよく捕獲しようとすると、飛び跳ねる。


 そしてバタバタと追いかけっこ。



「シャノ、待てって…….」



 にじり寄ろうとも何を察してか、すかさず逃げる。


 愛とやってたのってこれか?


 あの騒音の正体を今更知って、なんともいえない気持ちになる。


 俺は食事を終えてシャノの爪を切ろうと格闘をしていた。


 随分動画も見た。肉球を押す意味も分かった。


 後回しにしていたが、こいつの爪がそこここに引っ掛かる。


 ひとりの時にカーテンに爪を引っ掛けて取れなくなったら……


 色々な情報を見知って俺は、いてもたってもいられなくなったんだ。



 最終的に、シャノは洗濯カゴの中へと入っていった。



「バカなやつ……」



 俺はしめしめと洗濯カゴを持ち上げた。


 するとズンと、洗濯カゴが重くなり、シャノがカゴから勢いよく飛び出したのだ。


 バカは俺だったのか。


 仕方なく無理に掴もうとすると正に火の中の栗。


 猫は弾けるかのような勢いで俺に傷を負わせて散っていった。



「あてーー……」



 腕にとんでもないみみず腫れが出来て、こんなに手酷くやられたのは初めての事だった。


 見た目にはジワリと血が滲み出てかなり痛々しい。俺は一先ず腕を水で流した。


 滲み落ちていく血はさほどでも無く、直ぐに止まる。


 キッチンペーパーでちょんちょんと、拭き取ると腕にはみみずだけが残った。



「痒……」



 いつぞや俺のモモにつけられた傷を思い出す。猫の引っ掻き傷は痛いのは一瞬で、基本的には痒いもんだな。


 俺は傷の周りを指でなぞり、その痒みを紛らわす。


 そんな事をしていると、シャノが俺の足を頭突いてきた。



「もーー……何なんだよお前は」



 ぐーぐーと喉を鳴らして、足元をくるくると……。



「あー、どうすっかな」



 つい無理やり掴み掛かってしまったが、それは大失敗だった。やっちゃいけない事だとハッキリと分かった。


 ま、コイツあんま気にしてない様子だけどな。


  

「シャノ、悪かったよ……頼むからさ……」



 また俺は何を言ってるんだか。


 ぼすりと俺の定位置、ソファーに座りテーブルの上の猫の爪切りを見つめた。


 スツールの中に入っていた爪切り。シャノの小道具はだいたいその中にあるようだ。


 まだ使ってない七つ道具があるんだろうか……。


 

「シャノちゃん」



キャ……ァゥ、ア〜



「……」



 ここに腰を下ろすとなかなか立ち上がれないんだよ、俺。


 また猫の爪切り動画を検索して見ていたところシャノがトッと俺の横にやってきた。


 大チャンスなんだろうけど、またスウェーでかわされる未来がみえる。


 俺は放っておきつつ、ソファーに背をつけてテーブルとの空間を作って待ってみた。


 そう経たずにシャノは俺の膝に乗り、更にはテーブルの上に乗りたげにする。


 シャノを先に掴むか、爪切りを先に掴むか俺は一瞬迷う。


 答えはシャノのデコを撫でながら、爪切りを持つ。これだ。


 よし、警戒されてない。


 

「……」



 ああ、わからねぇコイツを抱えたまま肉球を押して爪を切るって……手が四本必要だよ。


 いや、とにかく、取り敢えずやってみるんだ。


 俺はシャノを片手で抱き寄せて、腹が見えるような格好にする事が出来た。


 思いのほか、俺自身をソファーの背もたれにするような感じでシャノは収まっている。


 そっと前足を一本持ち、肉球を押してみた。


 ニュッと出てきたその爪に俺は変なワクワク感を覚えた。



「スゲェ……」



 ここで爪切りの持ち手を間違えていた事に気付いたが、開いて閉じるだけ。


 そのぐらいの動作は利き手じゃなくても出来る。


 しっかりと出た爪の先に、爪切りをセットして……



パチ……



「……」



「……」



 何も起こらなかった。爪は切れた。


 隣の爪を狙うべく、少し指をスライドさせてニュッとまた出す。



 おぉ……



 心の中の感嘆を抑えて、また慎重に同じ動作を繰り返す。



 凄い、俺、



「……」



 シャノの切った爪はその辺にポロリと落ちたり、飛んで行ったりしているがそんな事を気にかけてもしょうがない。


 途中『フス……』と、シャノのため息の様な音が聞こえてドキリとしたが両脚の爪を確かに切る事が出来たんだ。


 最後に頭を撫でてやるとピョンと俺の上から退いていった。


 待っててくれたんだろうか。



「……」



 俺はセルフビンタをかまして、爪切りをテーブルの上に置き、切ったシャノの爪を拾い上げていく。



「1、2、3、4……」



「あれ、4本づつしか切ってねぇや」



 合計8枚の爪をティッシュの上に並べた。


 俺はシャノの手のひらを想像しても結局5本目が分からなかった。


 スマホで確認するとあっさりと在処は分かったが……



「もう駄目だよな?」



 フス……



「うん、俺ももう駄目だ、まぁいいかな?」



 先程も聞いた、ため息のような音。そして窓際でバタリと倒れ込んだ様子を見て俺は爪切りを完了させたのだった。


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