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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
緩やかな修羅場

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友隆の困難3

「友隆、飯食い行くぞ」



「あれ、大丈夫ですか?随分と早いですけど」



 そう言うと椚先輩は顎でくいっとある場所を差す。


 その先にはヒィヒィ言いながら仕事を進めている同僚。


 ……その同僚の仕事待ちって事ね。



「手伝ってやったらいいじゃないですか」



「いつまでもおんぶに抱っこじゃ困るんだよ」



「あ、そうすか……」



「ーーなんか感じ悪いなお前」



「心にゆとりがないからそう思うんですよ」



「あーー!!感じワリーー!!」



 俺らは支度しながら、そんなやりとりをして部署を出た。


 これが『俺ら』のいつもの関係だ。傍目からは心配されるかもしれない。


 けれどもこれが日常の会話であって、お互いが言いたいように言える関係。


 俺は歳下だから逆に無礼も働けるんだよ。

 俺から友達だとは言えないからこそ。


 歳下だから多めに見てくれっていうアドバンテージと、通じるものが釣り合ってる。


 分からない奴には分からないさ。


 でもこれは俺の思い込みじゃないと信じてる。


 そう信じていいだけの関係が俺らにはあるんだって……ここでも信じる心だな。



「喫煙室寄っていいか?」



「まだそんなもん吸ってんです?」



「お前なぁ……誰のタバコだ誰の」



 俺は口をパカーっと開けてアホ面で椚先輩を見上げた。



「あてっ……」



 椚先輩は俺の口を目掛けてライターをぶつけてきたのだ。



「食っちゃたらどうすんですか!」



 俺の口元に当たって転がったライターを拾い上げ、椚先輩の胸元へ投げる。


 パシリと構えた手でナイスキャッチ。


 

「いいから付き合えよ、一本だけだって」



「まぁ、分かりましたよ」



「一本いる?」



「愚問っていうのはこの事ですかね」



「吸わねぇのかよ……」



「そんなんだから、モテないんですよ」



「お前ってホントブレないよな」



「それ俺があげたやつですか?」



「買い足してねぇよ、もうなくなるからな。このタバコがなくなったらもうやめようぜ」



「……まぁ、吸いたかったら吸えばいいじゃないですか」



「おーお前が吸うなら俺も吸うよ」



「ハ……まぁ、あーそうすね」



「キッショ」



 そう言いながら椚先輩は確かに笑っている。


 そして俺も今きっと笑顔なんだよ。


 こんな感じが小気味いいんだ、俺はもうこの人を疑ったり出来ねぇよ。


 俺は椚先輩から一本タバコを受け取り、火をかざして貰った。


 ジワリと火が付くタバコ。


 その火を逃さないよう、俺は息を吸い込む。



「ボーイズラブたとさ、タバコ同士くっつけて火をつけるんだよ」



 俺は唐突な話に目線を上げてみる。


 椚先輩は普通にタバコをふかしてた。



「なんの話ですか……」



 ついにモテなさすぎて、男に目覚めたんかこいつ。



「いや、姉ちゃんが持ってた同人誌の話な」



「へーーその知識役に立ちました?」



「……気をつけようと思って」



「は?」



「お前と出来てるなんて噂が立つかもしれねぇじゃん」



「そういうアホな事本気で考えてんのかと、たまに疑いますけど」



「ジョークに決まってんだろ、なんか言いたくなっただけ」



「こわーい、やだー思わせぶりってやつ?」



 椚先輩は煙を吐くと同時に、ため息とも取れる呼吸をした。



「なんでお前がモテんのかわかんねぇよ」



「どこでモテてました?」



「ウゼーな、嬉しそうじゃん、分かってんだろ」



「好きな子にモテるのが大事ですよね……興味ない子にモテたって……」



「好きな子いたか?」



「……」



「……」



「なんか俺を傷つけようとしてません?」



「いや、お前の見切りの早さは知ってるつもりなんだよ。何か咎めてるわけじゃねぇさ」



 いや、愛のこと言ってんだろ。付き合ってみたら楽しかった、幸せだった。


 いい時間を過ごしたと思ってるよ。


 でも、俺が愛にどれほどの想いを寄せていたのか。この人は遠目から見てそうじゃなかったと伝えてきているようだった。



「それって、椚先輩が俺に伝えたい事に関わりますか?」



「ん……実は愛ちゃんにお金貸したんだよ」



 俺は唐突な話に目が丸くなる。


 先の先輩のようにため息と共にタバコの煙を吐いた。



「あーー……それは、すいません」



「巻き込まれたような腹いせでさ、お前に意地悪したんだよ」



「……いや、まぁ、そうですね。愛、荷物ほとんど無かったんでどうとでもなるんだと勝手に思い込みました」



「そうか」



 そうだな、普通に考えて仕事をしてたならともかく、仕事をしてない状態で家を唐突に出るって言うのはかなり無理があるよな。


 どこかでそれを理解していたからこそ、男の影を疑ったんだ。


 椚先輩との関係を疑ったんだ。



「いくら貸したんすか」



「んーー、八百万円ほど」



「嘘つけ、ばか……」



「俺の貯金額!!」



「……結構持ってるっすね」



「まあな!!」



 こりゃはぐらかされて、教えては貰えないんだろうな。


 もちろん俺が責任を全面的に取るべきことじゃないが俺がこの人にその分を返せば、俺と愛との問題に差し戻せる気がしたんだよ。



「なんか、甘いもの食いたいっすね」



「んー蕎麦屋でパッと食って、コンビニでアイスでも買おうぜ」



「それいい案ですわ」



「じゃ、行こうぜ」


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