友隆の困難1
椚先輩と愛の事。
うぜーし、だりーし、何だってんだ。
もう関係ないだろ、関係ない事。
そう思おうと考えるから、どんどん頭から離れなくなっていく。
けれど、椚先輩はそういう人じゃない。そう信じてる。信じきれないのは俺の心が浅ましいのか?どうなんだよ?おい、俺はそんな弱い人間なのか?
自問自答を繰り返す。
こう言う時に感情的に考えちゃいけないんだ。
それも誠さんが教えてくれたこと。
俺、喧嘩っ早いとこあって、すぐ感情的になってたんだ。
そんな俺に誠さんは言った。
『まず、事実を確認しろ』
『気持ちは横に置いとけ』
あと、何だっけ……思い出したい。
こんな風になる事ずっとなかったもんな。
誠さんが俺に言った事。
目をつむり、考える、考えろ、思い出せ。
『事実と置いた気持ちが合ってたら殴ってもいい』
ん、そうかな、そんな感じ……。
「……ばっか。殴ってもいい訳ねぇじゃん」
要約すると『冷静に』ってことだろ。
俺がそう考えられると信じて『殴ってもいい』なんて言ったんだ。
お前らガキにはわかんねぇだろ、このありがたいお言葉が。
俺は大学の友人達を思い出してこんな事を思った。
「あー!!嫌だっ!!俺あんな下品な先輩嫌いだって!!なのに超慕ってんじゃん!!」
「……」
思い起こせ、誠さんとの日々……俺にとって大事な存在だったはずなんだ。
憎みそうだ、どうして思い込んでその感情が湧き起こってくる?
いいか、誠さんは今まで俺を裏切った事なんて一度もない。
ケーハクで、ショーモナイ人だけど。
……。
…………。
「愛が相談したんだろ」
俺は、途端に視力が良くなったような、ぼんやりとしていた目の前の光景が鮮明に見えるようになった。
この考えに行き着いた途端だ。
そうだろ、なんならそれ以外になにがあるんだってんだよ。
「あ、もう良いか?」
俺は膝に乗っていた猫を、揉んでいたのだ。
ァ……
「猫はニャァだろ、何でお前はア、とかウ、とか泣くんだ?」
俺の膝からピョンと飛び降りたと思ったら、今度はその場にバタリと倒れて俺の足に頭が乗っかる。
すっと足を横に移動させ、頭を落として様子を伺っていると今度は手が伸びてきた。
「いてぇ!!」
シャノは俺の足首に爪をたてて、靴下に爪が引っかかった。
そのまま気にも留めていない様子だったが、俺はその爪をそっと外す。
「爪か……」
何となく知っている、猫の爪は切らないといけないんだって事。
分からない、どうやって切るのかさっぱりだ。
こういうのって獣医さんにお願いしてもいいのか?
俺はわしゃわしゃと頭を掻いて、万能辞典のスマホで検索をかけた。
「後ろから抱える」
「肉球を押す」
「??」
「肉球を押す??」
肉球
押し方
「????」
ダメだ、意味がわからねぇ。
今日はちょっと置いとこう。考え事の後に考え事は難しいんだよな。
シャノ、悪いな。
今は俺は俺の事で目一杯なんだよ。
毎日お前にやってやれる事、やらなきゃいけない事はやっているつもりなんだよ。
よく知れば、お前のことちゃんと飼えるかもしれない。
「…………」
ァ……マァ……
「なんだよ」
目が合うと、声を出すんだ。
俺に何かを言っている。
ク……ァ、ア
俺はフ、と笑いが漏れる。
一緒にいてやりたい、こいつが俺を嫌わないならってぐらいの事だが。
.




