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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
緩やかな修羅場

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椚誠の苦悩9

 仕事帰りに一杯、いっぱい!

 俺が好きなのは、っっっ……ぱい!!


 飯を食ったら速攻いくぞ、二軒目!!


 目、め、目一杯!やっぱりっっっパイ!!



 ……あーアホな事考えんの超楽しいわ。


 それに付き合ってくれる女の子がいたらもっと楽しいわな。


 俺の夜は大抵外食。まっすぐ家に帰れない男子なわけ。


 愛ちゃんと同棲始めて、友隆も付き合いわりーし、孤独も孤独よ。


 求める誰かからの連絡はなし。


 俺は容量を下げるべく、不要なメールを削除していた。


 ーーそこへ、思わぬ客人からの連絡があった。



 えー愛ちゃん?

 どこの愛ちゃんよ。



 内容を確認すると、こないだ友隆経由でお願いした案件についてだった。


 ドキュメントが添付されている。


 いやー俺、退勤したら仕事の件はないなー。


 が、これはお礼の一つも入れんといけないわ。


 でも、なんで直接連絡くれたのかしら?

 なになに、文末にお願いがあるとな?


 えーこんなん気になって眠れなくなるじゃん。仲人かな?


 忙しなく自分の中で飛び交う言葉。

 一人の時でも相手がいるかのように想像が膨らむ。



 俺の既読を見たのか、今度は電話がかかってきた。


 俺は条件反射のごとく通話ボタンを押していた。



『……』



 無言だ。一瞬ボタンが押せてなかったのかと思ったが、通話中独特の空気の音のようなものが確かに聞こえる。


 なんの意地か俺も無言を貫いた。


 ほんの数秒だろうか、それでも通話中は長く感じる空白の時間。



『……お疲れ様です』



 ポツリと一言、女の子の声……愛ちゃんの声が聞こえた。



『どしたぁ?俺の声が聞きたくなっちゃたの?』



『えーとぉ……お願いがあって……あの、お久しぶりです』



 俺の言葉を完全に無視して話を進める相手に、俺はますます自分を貫き通したい。


そんなもんは、ただの冗談悪ふざけでしかないんだけれども変な意地があるんだよ。



『俺の声が聞きたかった?』



『いや、やっぱりいいです……その、酔ってるみたいだし』



 ぷつっと電話は切れた。


 冗談も通じないのね、なのか、冗談を言う場合じゃない、なのか。


 これって永遠のテーマだとか考えつつも俺はすぐに掛け直していた。


 すると一方的に切った割に、愛ちゃんはすぐに電話に出たのだ。



『そう言う手なわけ?気になって眠れなくなっちゃうでしょ!お前から聞いてよ!的な?』



『……』



『……』



『……』



 どうやら、気安い話じゃないらしい。


 それを察する程、彼女も曲がらない。



『……いや、今ファミレスだわ。まだ酔ってないのよ、酔うのは二件目からでさ』



『はい……』



『トモと喧嘩したんか?』



『……』



『可愛い後輩からの連絡だからさ、俺も取り合うわけよ……でも自分から連絡しておいてさ』



『あの、……』



『相手が男だったらたぶんイラつくわ』



 あー言っちゃった。


 でも、これは言葉通りで、愛ちゃんにイラついたりしてそう言ったわけじゃない。


 そういう態度は家族、彼氏だけにしなさいよっていう歳上としての単なる指摘だった。


 耳に聞こえる、何とも言えない呼吸音。



 ……あ、これ泣いてるわ。



 俺が泣かしたんじゃないよ、泣かしたのは絶対友隆。


 自分の行いに言い訳をしつつ、俺は愛ちゃんの言葉を待った。



『ごめんなさい……』



 震える声が聞こえた。

 もうこうなると、結局優しくするだけなんだよ。



『関内来れそう?駅前のファミレス来れる?』



『……』



『ドリンクバー飲んで待ってるからさ』




『はい……』



 もう、蚊の死ぬ前みたいな声でしたわ。


 言っておくが、俺のせいじゃないって事。



 

『友隆連絡できるか?』




 これ、俺の悪いところ。後でバラすんじゃなくて、すぐにバラしていくスタイル。


 すぐに連絡が入り安堵する気持ちでメールを開く。



『都の星の観測中』



あっ今日深夜残の日か、会社遅く出社したよな。



『たまに連絡くれる?』


 ……


 …………


 ……これ、既読スルーだわ。


 急用として判断されなかったようだ。そうなるともう仕方ない。完全ワンオペでいく。


 愛ちゃんを待つ間、何とも言えない手持ち無沙汰で想像を膨らませていた。



 仕事前に喧嘩したんかな……。



 でも俺に相談しても意味ないじゃん、そんなん拗れちゃうよ、アイツあれでいて嫉妬深いんだから。


 あーでもない、こーでもないと理由を想像しながら、どう対時するか考えていたところ。



 愛ちゃんは少し大きめのボストンバックを持っていたがフツーに登場した。



 俺もオレンジジュースとカルピスを混ぜたおいしいやつをストローで吸ってたさ。


 頭を深々と下げる愛ちゃん。



「お久しぶりです」



「ん、まぁ座り」



「先輩大きいから、すぐ分かりました」



「んー、それは座高が高いということかね?」



「いや、身長が高いので、座高も高いんですよ」



 俺はその返しにちょっと吹き出しそうになってしまった。



「何言ってんの、なんか、重症じゃね?」



 愛ちゃんは気まずい笑顔で、俯いている。



「大丈夫だぞ」



「え……」



「ん、大丈夫だから、話してみ」



 ソッコー友隆に連絡取ったがな、どんな話であれ別に裏切ったりせんよ。


 大丈夫と言うのも、まぁ……この年頃の女の子がそう抱え込む問題は決まり切ってるからな。



「あの、いや、その……」



「……」



「……」



「……」



「……」



「話かけられんの待ってる?」



「いや、えっと……」



「口にし辛いなら、紙に書くか?」



 俺はスーツの内ポケットから手帳のメモのページを破って、ボールペンと共に渡した。



「えっとぉ……」



 何が感極まってしまったのか、普通そうにやってきたはずの愛ちゃんの顔は途端に紅潮した。


 すんごい、うるうる、堪えてて溢れそうで溢れない。


 それじゃ、びっちゃり落ちるよ。


 そう思ってる間に涙はどんどん溢れていく。



 ポロポロ泣けよ。


 ビチャビチャ泣くなよ、似合わんぞ。



 俺はその様子に多少動揺しながらも、無言でとにかく待った。


 すると愛ちゃんは文字を書き始めて、手が止まったと思ったらスマホで漢字を検索している様子だ。


 書いては手を止めて。その繰り返しをして、十五分は経っただろうか。


 備え付けのペーパーナプキンが山積みになった頃。


 そろりと裏返して俺の前に置いた。



 俺は躊躇なく捲り上げ、こちらを凝視する視線を感じたが目を合わさずに、とにかく文字だけを読み取る。



「……」



 ーーーーその内容を見て正直困った。


 全く戸惑わないというわけじゃなかったが……難解な話でもなく、むしろ明確な内容。


 俺の困り果てた顔を見たせいか愛ちゃんは気まずそうに咽び泣いている。



「あー、あー?」



「ずみま……せへぇん……」



 俺は変な空笑いが出た。



「とりあえず俺が泣かせてるみたいなんだわ」



「……はぃ、はい、はい」



 もう、なんか子供が泣いてるみたいでさ。



「ちょっと落ち着こうな、あったかいやつか?」


「お茶か?コーヒーか?」



「……っビール…飲みます…」



「おう、ビールな、了解」



 俺はな、真面目に話を聞くために酒をいれなかったんだぞ。


 それに対してお前はなんだ!


 そんなお軽い苦情を持ちつつ俺は愛ちゃんにビールを注文して差し上げた。


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