表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/124

彼女の様子

「あー!疲れた疲れた、おつかれー!」


 俺は適当な芝居を打って風呂場へ向かった。


 普段の通りといえば帰宅したら風呂、そのようなルーチンなのだが、まず自室に行きスーツをハンガーに掛けなければならなかったのだ。


 俺はもう後戻りは出来ず、スーツを丁寧に畳みその場にそっと置いた。


 ウールに湿気が…….などと考えたってしょうがない事。


 どうにかこうにか思いつく限りの鼻歌を歌ってシャワーを浴びる。


 外にも聞こえるんだよ、鼻歌。


 俺は意味があるともいえない謎の打算で、ご機嫌を装った。


 頭からシャワーを浴びつつ薄っすらと目を開ける。


 水の流れる様子をただ見つめ、いつもより長めの時間を過ごした。


 シャワーの音を止めた瞬間、俺は不安な気持ちに駆られる。


 なんと声をかけようか、思いがけない彼女の様子を知って言葉がまた分からなくなってしまったのだ。


 謝ろう、とかそんな薄っぺらい話でなくて、なにか重大な問題に気付いてしまったのかもしれない。


 大雑把で、カラッとした性格の彼女。


 どんな時も前向きそうに、健気に頑張れるヤツ。


 実はメンヘラだったのか?


 俺の前であれを出されたらちょっとキツイな……。


 同棲を始めて半年、ただ付き合っている頃には知り得なかった彼女の一面。


 いや。


 まだ、深く考えるような時じゃない。


 取り敢えず、謝ったら彼女の気持ちは穏やかになるだろうか。


 俺はわしゃわしゃと頭をタオルで拭きながら脱衣所から出ると目の前に彼女が居た。


 俺はその不意打ちに、ハッと驚いた顔をしてしまう。



「なぁに、その反応〜」



 いつもの彼女がそこに居た。



「今ね、ご飯作ってる途中でね、二十分くらいまてる?」



「うん、ありがとー」



 それを告げると彼女は足早に俺の元を後にした。


 俺は脱衣所の戸を閉めかけて、スーツの事を思い出し抱え込むようにして、そっと自室へと向かった。


 ハンガーに掛けてこれでいつも通りと、ベットの縁に腰を下ろした。


 スマホを弄ろうと思ったところで、鞄を玄関先に置いてきた事を思い出す。


 全くもって自分の動きがチグハグだ。


 まぁ、仕方がないと玄関へと鞄を回収しに行き、スマホを見る。


 彼女から猫のスタンプが押されており、俺は頭が空っぽのまま文字を打った。



『今朝はごめんね』



 俺に見せた彼女の様子から、これを蒸し返すと良くないような気がして指が止まる。


 俺は送信ボタンを押さずにそのままリビングへと向かい、様子を見に行く事にした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ