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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
日常の兆し

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そう、長い一日(ファミレスと家)

「ドリンクバー二つ、あと、フレンチトースト、えーと、また頼みますから」



「俺に酒を飲まさないディフェンスを感じるな〜」



「ファミレスで飲む人がいるとは知りませんでした」



「そら世間知らずだね!」



 これがラブラブのカップルだったらいい掛け合いなんじゃないかな〜残念マジギレされてますからね。


 下から睨みつけるような緑ちゃんの視線。


 俺にツンツンする人が物珍しいわけじゃないんだよ、そんな……叱ってもらえなくなった老人みたいなさ……そうじゃないんだよこの、楽しさは。



「俺もフレンチトースト食べようかな、夜に食ったことないけど」



「フレンチトースト美味しいですよね!!」



 なんなんだ、その笑顔は。いや、わかってんだよ、この子、コミュ症気味の子なんだよ。


 感情の強弱がコントロール出来てない。


 だからつっけんどんになっちゃって、人間関係苦労しそうだわな。



「それで、あの、富海君の事……」



「うん、ドリンクバー俺取ってくるからさ、フレンチトーストだからコーヒーかな?ホット?」



「すいません、気が利かなくて……私が行きますね、何飲みますか?」



「カルピス7対オレンジジュース3で」



「……大人なんですから、そういうのやめた方がいいですよ」



友隆なんか、オレンジウーロン茶だぞ、言わねぇけど……



「先行っといで、緑ちゃん戻ってきたら行くね」



 俺はやれやれという感じで、頬杖を付きながらろくに見ないメニューに目を落とした。


 夜にトーストかぁ、それじゃ寝る前に腹減っちゃうよ。でも同じトースト食べて感想言い合いたいのう、女子らしく。


 そんな事を考えていたら、緑ちゃんがホットコーヒーのカップをカタカタさせながら俺の注文らしきものを運んできてくれていた。



「やべ、」



 俺は、立ち上がりソーサーからカップを取り上げてテーブルに着地させた。



「すいません、ありがとうございます」



「ミルクとか、砂糖とかはいいの?」



「あ、砂糖が……」


 

 俺は彼女が運ぶのを諦めたであろう、砂糖とスプーンを取って席に戻った。


 すると目線を下に落として、落ち込んでるというか……こんなくだらない事なのに。


 その正体が不甲斐ない自分を責めてるって、分かるから。



「さすが、緑ちゃん一発で7対3で入れてくるとは!!もうね、色でわかんのよ、これが俺の飲みたかったカルピスオレンジだって!!」



「そういうの、いいですから」



「ちゃんと伝えるのは大事でしょ、そういのも」



「あの、すいません、慣れてなくて……」



「ごめんね、ホットはそれしか運べないよ、ありがとね」



「ハイ……富海君の事なんですけど……」



「……」



「あの、話しづらいことでしょうけど……えっと」




「……ああ、ゴメン、そういうbotかと思ったんだわ」



「……?」



「美味しいよ、カルピスオレンジ」



「はぁ、……」



「友隆が来れば、話せた事もあるんだけどさ俺も勝手にあいつの事は言えんのよ、それはOK?」



「すいません……」



「それと同じで緑ちゃんから聞いた事誰に言うわけじゃないし、もちろん友隆にも言わないよ。聞きたい事があって今日ついて来たんでしょ?」



「ーーあの……!!」



「お待たせしましたーフレンチトーストです」



「ありがとうございます」



「……」



 あーあ、フレンチトーストが緑ちゃんを阻んだぞ。また、もじもじタイムか。



「取り敢えず食っちゃいなさい、俺カルピスオレンジおかわりしてくるから」



「半分……はんぶん、あげますよ」



 えぇ、なによ、それくれんの??俺は間接キスを喜ぶ中学生男子だぞ。



「ありがとね、一枚頂くよ、えーと……食っちゃいなさいだけど、ゆっくり食べていいんだからね」



「ハイ……」



 俺はドリンクバーに行くと人の邪魔にならないよう脇でスマホの確認をする。


 母さんからメールが一通。

 友隆からの連絡はなし。


 完全にバックレかよ……


 こいつまーじで腹立つなぁ。


 まぁ、今更だ

 煽り散らしたろ。


 俺はメールを打ち、用を済ませて席へ戻った。



 すると、そこにはハムスターが居た。

 ほっぺを膨らませながら、一生懸命に食べている。


 緑ちゃんは視線を向けて、何故かペコリと頭を下げた。


 この人ホント、可愛いよな。なんでも一生懸命で。


 早く俺に皿を渡そうと頑張ってるんだろ、別にそんな食べたい訳じゃないのに。

 

 俺は席について、緑町さんに氷の入ってない紅茶とガムシロップを側に置いた。




**********




 あーもう、鬱陶しい!!


 俺は道中震えたスマホを確認した。


 緑町さんの事もあったし、気にしていない訳がない。



『緑ちゃんの恋愛相談室!気になったら来てね!』



 別に緑町さんに愛との事を話されたって……いやそもそも出て行った事を何故アイツが知っているのか。


 これも、はっきりと聞いた訳じゃないが間違いなく知っている様子だった。何で?


 そういや中学が同じだったって、いつか聞いた覚えがある。大学で再会してそれで??


 愛ちゃんカワイイカワイイっていつも言ってたっけ。


 愛も、中学の時は生徒会の先輩で凄く目立ってた……ってか、あの苦笑いに見えたのはなんだ?



 ーーやばい、妄想が膨らんでるぞ。



 愛と別れた事は事実なんだよ。別にどうだっていい、関係ないだろ。


 仕事もしてない状態で家はどうしたんだ?椚先輩の家に転がり込んだから?実家に帰ったかもしれねぇじゃん……そんなんありえねぇけど。



 あー嫌だ、こういうの考えてると蕁麻疹が出そう、明日の事も考えたくねぇ……いったい何が待ち受けてんの?



「いてっ!!」



 俺はスマホと睨めっこしながら急足で家に向かっていた。そのせいで暗がりのガードレールの端を見誤ってしまったのだ。


 腰の辺りを勢いよく殴打して、心配したのはスーツの上着だった。


 あー……ボタンはずしときゃ良かった。


 

 暗がりではよく見えないが、きっと擦れてるだろう予測が出来た。


 マンションの前まで来て、電灯の前で立ち止まり再チェック。


 見えそうで、見えない程度の擦れ具合。ただ認識してしまえば明らかに有る。



「……」



 俺ってば、みみっちいやつかもしれんな……。


 最近、よく自分を嘲笑ってる気がする。愛にもそんなような事言われてたっけな。もう昔話のような感覚だけど。



 俺は長い長い階段を登り、四階の自宅へと辿り着いていた。

 


 鍵を回し、パチリと音が鳴る。


 鞄を玄関先に置いて、買い物袋をリビングのドア前へ。


 自室の前でスーツを脱ぎかけた時、リビングのドアに黒い影を発見した。


 構わずに適当な格好へ着替えているとドアを擦る音。



 サリ……サリ……と、こいつも鬱陶しいな!!


 そのままリビングへ行くつもりが俺は風呂に入ることにした。


 もとより、帰宅したら風呂。清潔になってから食事を始めるもんだ。俺はずっとそのようにしてきたんだ……愛と同棲するまでは。


 彼女が俺の帰宅が遅かろうが早かろうが、いつでもスタンバイして俺に温かい飯、美味しい飯を出してくれていた。


 そんな彼女を待たせて、風呂なんて個人的な事に時間を費やせるわけがなかったんだよ。


 俺はこれまで通り、帰ったら風呂、全てを終えてから飯、このようにするんだ、なるんだよ。


 相変わらず考え事が忙しい。


 そんな俺は風呂からあがり、無造作にリビングのドアを開けてしまった。


 ドアの前にはまだ猫がいたようで、ササっと後退りこちらを見て、口を開けてる。

 

 なんだ?


 カサカサと袋の中身を取り出し、今食べるものと冷蔵庫に入れるものをより分ける。


 しつこく俺の足元にまとわりついているので、踏みつけそうで恐い。



 「ちょっと待ってろ、すぐに飯をやるから」



 俺はしまうものをしまったら、下の戸棚を開ける。



 ーーさっきからなんだ?この違和感は。



 謎の違和感に猫を見ると、また口を開けている。


 いや、開けっぱなしじゃない、ちゃんと閉じる。



「??」



 口が開いているが、声が出てない。



 これは……ミュートだ。


 

「シャノ、シャノ、」



「シャノちゃん、」



 名前を呼んで耳を澄ませると、微かに……殆どが空気のようだが、微かに音が載っている。



「どうしたんだお前」



 俺は速攻でスマホで検索をかけた。サイレントニャーなるものがある。喉を痛めている。


 今の俺には判断がつかない。


 

「シャノちゃん、シャーノ」



 また、口を開けるが声は出てない。



 ……ァ



「お前、喉が……」


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