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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
日常の兆し

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そう、長い一日(帰路の途中)

 車両の扉から駅に足を着けると、一日の終わりを感じる。


 夜空を見上げて今日も頑張ったぞーって。

 それが朝の目覚めと同じぐらいに軽快なんだ。


 意味もなくワクワクするような不思議な感覚。


 どんなに疲れてたって、家に帰るまでの道のりが最高。


 まあ、これは一種のメンタルコントロールの習慣なわけで。



 今日も効いてるな、さっきまでのどんより感がずいぶんと軽減された。



 母ちゃんが死んだ時に教わった克服術。



 愛にも教えてやったけど、やっぱ専門の先生じゃないとダメなんだわな。



 俺は改札を通ると、家とは逆方向の輝き方が違うコンビニへと足を運んだ。


 灯りを感じるって良いよな。

 人の温もりを感じる。


 ……お、このポジティブ、今はやめておこう。



 コンビニ特有の不思議なメロディ。

 いけないひーと ごらーいてん。


 俺の中では不摂生なイメージだからな、こう、何か勝手なセリフを想像しながら入っちゃうんだよ。



 さて。


 まず、悩まずに買えるもの。


 おいしいやつ、プリン。

 小ちゃいくせに重たい価格。


 二つ…………つい掴んでしまった。


 その瞬間、電気信号が走るように一つを戻し、一つだけカゴの隅へとそっと入れた。


 憂鬱な食い物、プリン……こんな事いちいち気にしてたらさ、しょうがねぇだろ。


 そもそもプリンが好きなのは俺、お、れ、だ、か、ら!!


 よし、排除完了だ。



 くるりと方向転換をして、お弁当のコーナーを見る。ディナーは三つと決めていた。


 あんかけ蕎麦、中華丼、鶏肉も食べたい気分だ。

 『餡』が被るが今日は迷えないんだよ。


 目についた順にカゴへ入れたら、もうこのコーナーは見ちゃいけない、迷うからな。



 朝はクロワッサン。


 小さなサイズが三つ、四つ入ってる。



 あぁ、パンの形が、見えるぞ……なんか、家にいるあれに……。


 早く帰らないとな、心配です、家が。



 自分の中では手際よく選び取っているつもりが、チラと時計をみるともう十分経過。


 こういう時の時間経過は早いもんだ。



 お茶も二本くらい買って、不足するより過剰ぐらいで迷わずに……酒〜冷蔵庫に入れてこなかったから、ちょっと買おう、よし、終了!!



 ここのコンビニは、駅直結でないが必ず他の客がいる。


 そして何でか並ぶのは同じタイミングなんだよな。



 「袋、付けてください、温めなくて大丈夫です、あと45番のタバコを一つ」



 あーあ、随分やめてたのに買っちゃうのかよ俺。



 入り口に灰皿が置いてある、今となっては数少ないコンビニだ。さっき、これを認識した時に、買う事を決めてたかもしれん……家で吸うと換気扇の掃除が大変だからな。



 「ありがとうございます」



 袋を片手に、受け取ったタバコを開けかけてライターがない事に気づいた。


 もうここまで来て吸わない訳にはいかないので俺はライターを買いに戻る。


 どこにあるのか探したものの、すぐに見つかり手前のものを掴んだ。そして隣のコーナーにあった猫の写真が写ったパウチも掴んでいた。


 よくわからぬまま何故かそれを手に取ってしまった俺。


不思議な気分ではあった、が、まぁいいかと会計をそのまま済ませる。


 

これは……タバコを吸う時間を待ってもらう代わりのお詫びなのか、なんなのか。


 たまたまライターが置いてあるコーナーの隣がペットフードのコーナーだっただけなんだ。



 澄んだ森林の空気を吸い込むように。

 深いため息のように、吐き出す。


 あー……立ちくらむこの感覚。


 すげー気持ちいいわ。




**********




「緑ちゃん、どうしたわけ?」


 緑ちゃんは斜め後ろを、なんとなく俺に着いて来ている。目を離すといつの間にかいなくなるんじゃないかというぐらいの距離感だ。


 前を見るのと緑ちゃんを見るので忙しい。躓きそうで、足元にも気をつけつつ歩かないといけない。



「どう、というのは?」



「えーまどろっこしい事聞いてる?俺」



 もはやバックステップだ。

 でも、彼女の顔を見ずして聞けないこと。



「付いてきた動機を聞かれてるんでしょうけれど、それは富海君の様子が普通じゃなかったので……先輩としてです。



「俺の聞き方に、それ以上の何かを感じちゃった訳?」



「本当に、いちいちつっかかりますよね」



「いや、何でさ、そう、敵対的ポジションにいるのかなって……」



「…………すいません、思い返すと、言葉がキツくなっていると私も感じました」



 うわー、めっちゃ素直だよこの子、そんだけ素直にされると逆にたじろぐんだが〜



「あーいや、あー……緑ちゃん何食べたい?」



「行く場所は決めてたじゃないですか」



「ありゃ、トモと行く予定での店でさ……あいつボソボソ喋るから卓が超ちぃせぇのよ」



「富海君が?それは椚先輩に比べたら?でもボソボソはないです」



「近いから、椅子とテーブルが同じぐらいのサイズで顔と顔がぶつかるくらい、超近いところだからさ」



「そんな所で、私を何処に置くつもりだったんですか?」



「……ん、来ると思ってなかったから」



「誘って来たのはあなたじゃないですか!!」



「……」



「駅前のファミレスで結構ですから、そちらに行きましょう」



「何でも食べてね、一万円超えるくらい食べて良いからね……」



「ファミレスでそんなに食べるわけないじゃないですか!!」



 そうだね、そう思うよ、緑ちゃん……その返しはやべーわ、ツッコミじゃなくて、キレてるもんな……あーー盲腸になりそう、笑い堪えすぎて。



「何がおかしいんですか?」



「いや、は……く、っ……笑ってないよ?」

 


「割り勘ですよ!」



「ははっは……は、」



 そのムスッとした顔も可愛いよ、緑ちゃん。


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