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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
日常の兆し

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そう、長一日(昼食)

 昼休憩は各々、業務タスクに合わせて取ることになっている。


 ランチミーティングと称して、示し合わせて行動するグループもあるがうちの課は常時必要な連携業務はない。その為、ポツリと抜けてはポツリと戻ってくる人達が多い。


 俺は大体、皆が行き終わった頃に昼飯にする事が多かった。


 わざわざ待ち時間の発生する昼時のピークタイムに外出する必要はないのだ。


 しかし、今日は朝食がプリンだったせいで腹が減っている。朝からアホに絡まれたことも俺のエネルギーの消費を速めたのだろう。


 空腹も相まって仕事も捗らない……午後が長くなるが早々に午前の仕事を諦めて俺はデスクトップを落とした。



「お昼休憩、一緒にいきませんか?」


 

 緑町さんだ。


 画面を消したのを見て、休憩に出ると思ったのだろう。



「いえ、ちょっと寄るところがあるので」



 これが断る理由になっているかは分からない。休憩に出るわけじゃないと嘘をつこうと一瞬、頭を過った。


 緑町さん、あなたの事は先輩として尊敬してます。普段のお誘いでしたら、喜んでお供しましたよ。


 きっと、後輩の俺を心配してくれているからなんだと感じてはいます。でも今日は……どうしても、鬱陶しいと感じてしまうんです。


 イラつくんで、これ以上探ろうとしないでください。


 俺は緑町さんに、にっこりと微笑んで上着のボタンを留め直しパッと出て行った。



 その先の緑町さんの表情を見たくはなかった。



 俺はエレベーターを待たずに、階段を駆け降りる。

寄るところがあると言うのも嘘ではない。


 店に腰を下ろしてモタモタ食事を摂っている時間はないのだ。


 コンビニでサンドイッチとおにぎりに、コーヒーとお茶。どっちも食べたい、悩む時間を使うなら両方食べちまえばいいんだよ。


 昼食の入手が終わったら、50メートルほど先の百貨店の地下へと潜る。


 混雑をすり抜けて飴玉屋でラッピングの可愛いものを選ぶ。仕事を押し付けてしまったお姉様方への配慮的賄賂、何の味を渡したかなんて関係ないのだ。


 緑町さんにも、何か買って行った方がいいだろうか。そんな気持ちが湧いて出た。


 会計を待っている間、猫の絵が描かれた缶入りの飴が目に留まる。ワンコインで買える安すぎず、高すぎない良いものに見えた。


 これも追加して、会計を済ますとお姉様に渡した個包装の飴玉の試供品がまた貰えたのだ。



(この飴、可愛いから愛にやろうと思ってたんだけどな、すっかり忘れて別の人に渡しちまったよ……)



 飴玉渡してたら、なにか変わったか?子供じゃあるめぇし、飴玉ひとつで馬鹿な事考えんなよ。



 思考が忙しい俺は、試供品の飴はスーツの内ポケットに仕舞い、お礼を言ってその場を後にした。



 時計に目を遣ると、出発してから十八分経過。まずまずのペースだな。これなら、ある程度ゆっくり昼飯が食える。


 普段なら、このまま戻ってデスクで昼食を食べる事も考えられたが今日は一人の時間が欲しい。考え事がしたい。



 社の途中の公園に行こう。


 人混みを避けながら階段を駆け上がる。

 地下の灯りからすると燦然と輝く太陽が眩しい。少し歩けば公園だ。


 足早に、大して急ぐ必要もないのに足早に。それは目的の場所が俺のものになるか、ならないかの瀬戸際だから。


 俺はそんな予感をしながら公園の前へやってきた。


 まさに木漏れ日の降り注ぐ一等地のベンチ、そこに空きがあったのはラッキーだった。

 

 どかっと腰を下ろし、隣に住人が来ることを阻むべく、持ちものを横に拡げる。


 そして昼食の開封の儀に勤しんでいると、ベンチの温かさが伝わってきた。


 温かいものに触れると……猫が、降りてくる。


 あいつちゃんと留守番出来てるかな。

 変なもん食ってないか。


 そんな事考えたってしょうがねーな。


 床トイレにすんなよ。

 壁引っ掻いたりしてないか。


 そんな事考えたってしょうがねーよ。


 腹空かせてないかな。


 もう少し多めに餌やればよかったか……?


 考えまいとするほどに、頭にまとわりつく猫が居た。



「あー、ウゼ……」



 俺は咀嚼に集中しようと三口ばかりでサンドイッチを食べ切った。


 コーヒーで流しながら、スマホを確認する。


 一件の通知。


 愛からかもしれないと期待してしまう自分が嫌になる。


 開けば、椚のアホからだった。


 特に要件というか、今夜の待ち合わせ場所と思しき飲み屋の名称が送られてきていただけ。


 不意に内ポケットのメモ紙も開こうと中身を確認すると、上下に言葉が挟まれているだけで内容は椚と同じものだった。


 俺の居ない間、どんな話してたんかね……鬱陶しい。


 ーーーーまた、そんな事思ってすいません、緑町さん。


 分かってるんですよ、でも俺自身が受け止めきれてない事を他人に分かってもらおうとか、聞いて欲しいとかそういうのないんです。



 俺は木漏れ日を見上げて、洗われる心とそうでない心を感じた。


 口をぽかーっと開けて何も考えたくない、ワニとかそういう生き物になりたい。


 そんな事を考えつつも俺の手はおにぎりのビニールを剥いていて、全自動で昼食を済ませたのだ。


 時計を確認する、パッと帰れば余裕がある。


 そう思い身支度をしていると、ビニール袋を風に持ってかれてしまった。


 今日の俺はとことんイケてない。


 俺はその袋を追いかけていくと、その先には猫がいた。


 ここで会ったが百年目、そんな言葉が脳裏を過ぎる。


 その猫は犬のように、ヒモに繋がれながら地べたに身体をこすりつけていた。


 猫はもう食えん、腹一杯だ。


 俺は、止まったビニール袋をパッと取り、猫の飼い主であろう女性と目を合わせないようにしていた癖に猫の顔、猫の様子をまじまじと捉えていた。



 変な顔の猫、うちの猫とそっくりだ。


 シャノちゃんと同じように顔がパンチされていて……可愛い……変な猫は他にもいるんだな。


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