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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
日常の兆し

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朝がやたらと長いこと

 まただ、また聞こえる。


 扉を引っ掻いているような、そんな音。


 開けるとそこに姿はない。


 けれども、開けるまで続くんだ。


 まるでお化け、お化け、猫の……



 枕元のスマホで時間を確かめる。

 アラームの鳴る数分前。


 いつもより一時間も早く目覚ましをかけていたが、今日の緊張感が原因だろう。


 俺は無駄に腹筋だけを使って起き上がる。


 つまり、うだうだする気が起きないのは、朝から使命が盛りだくさん……抜け漏れは許されないから。



 リビングに行くと窓際で猫は倒れていた。


 伸びていると相変わらず、モップの先感がある。


 猫を一瞥した後俺は、いの一番猫のトイレの引き出しを開けた。


 ゴム手袋を捨ててしまったが、昨日の俺とは違う。

 結局、寝る前にベットでスマホいじりをしたからな。


 猫無知の俺が、そのまま眠れる筈がなかった。

 


 このトイレの天井には、掃除用のシャベルが収納されている。


 掃除用具がゴム手袋なんて有り得ねぇんだよ。


 猫のトイレ掃除の記事を読んでいたら、オススメのトイレの表示に見覚えのあるオシャレなお家を見つけたのだ。


 興味本位でその買い物サイトに飛んでみると、機能の中に天井裏があるんだとよ。


 確かに、天井に指の掛かる窪みを発見できた。



「ーーなんと!シャベルの収納付き!」


「収納すんな、見せとけ、見せとけ、わかんねぇだろ……」



 俺はオシャレなお家の見出しによっぽど腹が立ったのさ。



「俺が馬鹿なのか?そうか?見えてりゃそれが掃除をする物だってわかったわい、砂を掘る物、シャ、べ、ル!」



 朝から絶好調の一人芝居をソッポを向いた観客、窓際の前の猫に披露して、俺はさっさとトイレの掃除を済ませる。


 台所で手を洗い、戸棚を開けて餌を出す……すると猫が駆け寄ってくるわけで。



「俺の芝居は無視してそれか?」



 これをあしらい、餌皿に盛る。

 昼は居ないから少し多めに、だ。


 もう片方の水の皿とポットを持って、両方の水をリセット。


 皿を戻し、ポットの線を差す。


 俺はテキパキと朝行うことをルーチン化していく。

 寝る前にシュミレートもしたからな。


 コップを置いて、ポットが沸くまでの間で着替え……は駄目だな最後にしよう。



 そうなると、ソファに座ってテレビを見るか、と言っても浮世離れしない程度の情報を目にする為。


 大きなニュースや天気ぐらいで、テレビは観るものというより流すもの。



 ここで、朝飯がない事に気付いたがなんのその。


 冷蔵庫にプリンが一つ残ってた、プリン食べてコーヒー飲めばそれでいいんじゃね。


 そもそも、俺料理すんの嫌いじゃないし。

 ひとりだからって今更困らないだろ。

 なんの問題もない、いいじゃん俺の気分で食いたいもの作り放題だ。


 俺、無理してテンション上げようとしてるかもな。


 でも、それでいいんだよ……しょうがねぇ事悩んでも損するって。


 

「な、猫、飯食い終わったか?」


「寝てすぐゴロゴロすんなよ、でっかくなるわ」



 こいつとの付き合いも実は昨日今日の事じゃなかったのに、こんな風に話しかけたりしなかった。



「あいつさ、俺が寂しくないようにお前置いてったんかね?」



 俺は冷蔵庫からプリンを取り出しながら、独り言を続ける。


 ソファーに座って、コーヒーを入れたところで猫は俺の足元に来て鼻をフンフンさせた。



「コーヒーは飲まねぇだろ、プリン食うか?だめか」



 プリンの蓋を開けると俺の足を掻いてきたので、速やかに腹へと入れた。



「こーゆーの、欲しがってもあげちゃいけないって書いてあったもんな」



 猫はつまらなそうにその場に座り込んで、尻尾をペタペタさせる。



「その尻尾ジェスチャー返事してるらしいじゃん、偉いもんだね」



 何が偉いのか、俺は自分でも意味不明な事を言ってるな、と思いつつもテレビで時間を確認する。


 出る時間から逆算すると、かなり早い。

 もうこっちの部屋でやる事は、コード類をぶっこ抜いて終わりだ。


 後は自分の部屋に戻って着替えるだけ。



 ふと、彼女がしょっちゅう猫と遊んでいる動画を見せてくれた事を思い出す。


 時間はあるし猫の遊び、つまり運動も必要な気がした。

 

 決して気まぐれでも、この猫と仲良くなりたい等という下心でもない。


 必要なんだろう。



「遊ぶか?ベタベタ床で寝てたら健康に悪い」



 俺は収納スツールから猫じゃらしを取り出して、何となくその場にしゃがみ込んで振ってみた。


 猫はシュッと頭を屈ませると、これを狙っている風だ。


 さっきまでソファーの下にすっ転がろうとしてたが、変わり身が早い、凄い切替だ。


 だが、その後なかなかやってこない。


 俺の振り方が悪いのかと、猫じゃらしの先に視線を落とし動きを確認をする。


 すぐに猫に向き直ったが、なんと近付いて来ているではないか。



「忍者だなー」



 俺は関心しつつ、緊張感を持って振り続ける。



ピピピピピ………



 スマホのアラームが鳴り、俺が猫じゃらしを持ったまま立ち上がったその時だ。



 猫が飛びかかってきて、猫じゃらしをはいたのは。



 俺は余りの衝撃に、手から猫じゃらしを落として立ちすくんだ。


 そして、床に落ちた猫じゃらしを、これでもかと猫はしばき回す。


 ある拍子に猫じゃらしは、カーテンの隙間に滑り込んで行った。


 後を追うが見失ったようで、前足を片方伸ばしたままフリーズする。



ピピピピピ……


 停止時間が終わると唐突に毛繕いを始めてーーーー


 俺は我に帰り、テーブルの上のスマホのアラームを止める。一度で起きられなかった用の二段仕込みのアラームの時間だった。


 取り敢えずもう、俺の遊ぶ気持ちは完全に失せたのだ。


 猫が毛繕いを入念に続けているのを見て、コイツには認識できていない猫じゃらしをカーテン裏から取り出す。


瞬間、猫と目が合う。


『ア…』


 こいつはそんな顔をした気がするが、俺は無視して猫じゃらしを収納スツールへと戻した。




 この時俺は、やってはいけない事をしている認識が全くなかったのだ。


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