整理整頓清掃2
「お前、留守番出来んのか?」
「人間いなくて、悪い事しないの?」
「何思いついて、悪さすんのか知らんけど」
あっ、また猫に話しかけてる……と一瞬思ったが、もう気にするのはやめよう。
俺は適応力があるからな。
(これは冗談で言っているだけだ、誰かにアピールしてる訳でもない。)
動物に人間の俺の言葉は通じない。
これが世の原理原則、理、宇宙の法則なんだよ。
だがコイツは確かに返事をしてくるんだ。
意味が分かってる訳じゃない。
絶対にだ。
なのに、何故聞いてくれていると、分かってくれていると思えてしまうのだろうか。
ーーーー俺は深いため息が出た。
ここ数日で、何度も何度も。
俺はため息を吐いている。
「ねぇ、猫ちゃん、あんたいい子にできんの?どうなの?だいたい寝てるの知ってるわよ?寝てるのよね?何もせんよな、おい」
俺は俺が納得する為にそんな事を言ってみる。
猫は俺に飽きたのか、目は開いているがそっぽを向いて尾をペタ、ペタ、と上下させているだけだ。
ジャンプ力が凄い、あれば何でも食べそう、何をするのかさっぱり分からない。
正直俺の妄想か想像か、靴下を食べて喉に詰まらせてしまうんじゃないかという事まで考えられた。
食べると言う想像で、コイツの体調が気に掛かったが帰ってからこれまで通りに見える。
ーー良かった。
……何がありえて、何がありえんのか。
取り敢えずありえんのは、俺が明日仕事を休む事だ。
そんな事を考えつつ、俺は既に動いていた。
もう、同じような事件を起こしちゃならないんだから。
猫はこのリビング内に居てもらう。
これは決定事項だ。
餌場もあるし、だいたい見かける場所、窓際。
おそらく、彼女が居た頃もここで過ごしていたはず。
本棚が倒れて下敷きになる?
そんな馬鹿な。
俺は本棚を部屋から出そうとしたが、重すぎてその場に倒した。
「倒れそうなものは先に倒しておけばいいのだ!フハハ!」
ふざけてみるも、またため息が出た。
ハンガーラック、倒れてもそうは下敷きにはならないだろうがこれも恐い。簡単に倒せそうだ。
俺はラックを玄関に移設する事に決めた。
元より大したものは掛けていない、ちょっと外へ出る為のジャンパーとか小さなバックとかそんなもんだ。
「危ねぇ!!」
ラックを持っていると、唐突に猫が俺の足にまとわりついていた。
「足が絡まっちゃうだろ、窓際にいろよ」
また、ため息が出た。
猫に声をかけつつラックを出して、改めて室内を見渡す。
猫は相変わらず俺の足元をぐるぐるしている。
あれもこれも、何かされそうで、何かが起こりそうで恐い。
俺は頭を掻いた、抱えた。
もう一度考えろ、何が危険になるのかちゃんと見てみろ。
猫の敵、リモコン。
これは流石に食えないだろう。
テレビ……俺は止めたが彼女が猫に動画を見せて遊んでいた。
猫のパンチ如きじゃ、倒れたりしない。
それなら本棚も倒れなかったか?まぁいいか……。
そもそもテレビは消していく、大丈夫だ。
テレビの配線。
……えー無理無理。
どぉすんのよ。
配線食っちゃたりするの?感電すんの?
コードは全て抜いていく、これでいいだろう。
洗濯カゴ、たまに入ってるが、勝手に入ってろ。
ソファーは、傷が付いている。
どうでもいいな、今更だ……が、爪を壁で研いだらどうしよう。
傷っていうのは、こいつが引っ掻いたんだよ、本当になにしてくれてんだか。
「壁を引っ掻くのはやめてね」
これで、ヨシ!
馬鹿げているな……。
そんな調子で俺は、家を猫の留守番仕様に変えていった。
最後に気づいたゴミ箱を廊下に出して、またソファーに倒れ込んだのだ。




