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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
新たな生活

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整理整頓清掃1

 


 知ってるか?


 猫を鷲掴みにしちゃいけないんだぜ。


 掴めりゃいいってもんじゃない。


 脇に手を入れてしっかり持つ。




……脇はどこだ?

 

 いや、俺は結構飲み込みがいい方だからな。

 

 これはただの応用編。


 俺は収納された手の位置関係から、この辺が脇であろうと言う部分を掴んだ。



 そしたらどんどん伸びる、伸びるじゃないか。


 こんな事は先生に教わっていない。


 その伸び幅に横になったままの俺の腕の長さでは足りない……腹筋を使い上半身と共に猫を持ち上げる事で、どうにか成功した。


 見開いた目のこいつが俺を見ている。


 ドキリ、というわけじゃないがちょっと恐い。


 俺はパッと手を離してしまったが、縦に伸びた身体は元通りになり、トンとソファーの下へと着地する。



 (バネの玩具みたいな構造だな)



 すると猫はさっきまでの様相とは違い、全くこちらに興味のない風で窓際へと行ってしまった。



「お前一日中寝てるんだろ、そんなのに付き合ってられねーからな」



 猫のあまりの変わり身に何だか、言い訳がましいことを言いたくなったのだ。



「……」



 何をしていいのか分からない。


 スマホを取り出し画面を確認したところで、返信はない……そもそも、着拒の時点で最早なんら期待は出来ないんだ。


 俺もこう、彼女自身に未練が〜とか、話し合いたかったとか、そう言う気持ちがないわけではないが、もしかするともう、どこかで冷えていたのかもしれない。


 毎日接していたその熱源がなくなって、ほんの数日で彼女への想いが冷たく、心動かすものでなくなった。


 なにより、生きたモップの先っぽの対処が俺にとって重大過ぎるんだ……。



 あれこれと考えても、どう行動すればいいのか結局分からない。



 行動のヒント、それは読み飛ばした手紙にあるんだろうか。



 読みたくないのは、冷えたはずの俺の心を温めて惑わすからと予想しているからか?本当のところどうなんだ?


 


「あー身体に悪い!精神に悪い!」




 俺はそう声を出して、彼女の手紙を再び手に取った。




ーーーーが。




……が、だ。



 猫の飼い方の合間合間に『ありがとう』とか『ごめんね』とかそれを言い換えただけの『感謝してます』だの、『本当に申し訳ない』とかそんなような内容でしかなかった。



 俺が期待していた、猫を飼わなくていい救済の文言は一切なし。



 俺が飼う前提の話しか綴られていなかったのだ。



 ただ一つ新たな発見があったところは、ところどころに滲んだ跡があって彼女がどんな心情で綴ったのか……なんとなく読み取れた。



 それに気付くと、俺は心が痛んだ。



 そして、猫を誰かに渡すこともいけないんだろうという気持ちも湧いてしまう。



 これは、俺にとってはよくない方向だ。



 ただ、彼女に対して感謝ばかりだった事は嘘でも偽りでもない。


 これまで俺の生活を支えてくれた彼女の功績を想うと……



「……」



 猫と暮らす事、この考えを、決定を、俺はしなければならないんだろうか。


 

 無意識にスマホを手に持ちネットを開く。



『猫』

『飼い方』

『猫』

『貰い手』



 昨日よりも猫に続くワードが打てるようになっていた。


 だが、どうもピンとこないんだよ。


 文面で読んだとて、既に実物があってハウツーはあまりにも知らない猫過ぎるというか……この猫の事はどこにも書いてないから。



 貰い手で検索すると、俺が貰う側のような内容ばっかりだ。


 もちろん俺がこの猫を掲載して募集が出来るようだが、見ず知らずの他人へ譲渡する想像がつかない。


 彼女が飼うか、元々の持ち主だった彼女の友人が飼うかのその二択だけを考えていたからな。


 そもそも、他の猫と比べてこのモップの先が選ばれるとは思えなかった。



 窓際で倒れている赤茶色の、変な猫。


 顔もパンチされたような、変な猫。


 鳴き声もなんだか、変な猫。


 まとわりつく時は、まとわりついてくるくせに、突然知らん顔をする性格の、変な猫。


 車に乗ると変な声を出す、変な猫。



 俺のイメージの中にあった猫と全く違う。


 

「なんか、お前変な猫だよな」



 俺は窓際にいる猫に、正直に伝えた。



「お〜やべー……俺猫に話しかけちゃったよ」




「……」




「なんとか言えよ、ニャーと鳴けっ」



……マー



「ニャー」



ァ…



「ニャーも出来ねぇのかよ」


 

 猫はウザそうな顔をして、若干鳴く。


 なんとなく相手をしてくれているような……


 俺は自分が奇妙な事をしていると馬鹿馬鹿しい気持ちになってきた。




 しかし、気づいてしまったんだよ。


 明日は月曜日。


 平日、ということは仕事なんだよ。



 ……どういう事だってばよ、俺が何に焦っていたのか、その原因を、自分で理解するには遅すぎた。


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