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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
緩やかな修羅場

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決着の時10

「じゃぁ、上がりますね」



「お疲れさま、今日は本当にありがとうね」



「いえいえ、先輩は後、学生さん来るまでひとりでしょ?」



「まぁ……トラブルがない事を祈るだけ」



「サスガ、頼もしいです。お疲れさまでした〜」



 あたしはパッと上がれずについつい、話しかけてしまう。なんか冷たい感じする気がして。


 目を合わせながら、私はお店を出た。


 自動ドアが閉まり空気感が変わる。なんか変な感じ。


 さっきまでいた世界がまるで別の世界みたい。


 今日は友隆と会う。


 ーーと、椚先輩との約束あるんだからこっちじゃないじゃんね。


 一応スマホを確認してみるが、特に連絡もなし。あたしを信じてくれてるのかな。



『ちゃんと覚えてますよー』



 今から向かうと連絡すればいいのに、ついおかしなメールを入れてしまう。


 それでいて出口を間違えそうになっちゃうのはさ、もうこの帰路に慣れたから。


 トイレで顔チェックしても良いかな?


 椚先輩に会うのにそんな必要ある?


 いやいや、先輩に会うからこそ、ちゃんとしてなきゃね。



『急がなくていいです』



『はーい』


 

 そんな何でもないやり取りをしつつ椚先輩があたしの動きを読んでる感じがあって、ちょっと恥ずかしくなった。



 トイレの鏡に映したあたしの顔。


 後毛がイマイチか?


 若干メイクが浮いてる気がする。


 鏡を見ながら手鏡まで見る。


 指でアイメイクの滲みを修正。


 リップも塗り直す。


 右から左から、上から下まで角度を変えて自分の顔をチェックする。

 


「……」



「……やば」



 スマホに目を落とすと、随分時間が経っていた。


 

『もう着きます』



 さっとそう打ち終えて、あたしは西口のカフェへと急いだ。


 小走りになりつつ、カフェの入り口の手前で椚先輩と目が合った。


 ガラス張りの窓際の席、椚先輩が苦笑いを浮かべてる。



『モテる女は違うね』



 そんな嫌味なメールを確認して、ガラス越しにアイコンタクトを取った。


 指を刺して、この席に座れって合図。


 そして椚先輩は席を立った。


 あたしも中に入ると、椚先輩が注文をしている。


 

「ケーキ食べたい」



「どれ?」



「チーズケーキ」



「座ってて」



「ハーイ」

 


 嫌味を言われたお返しとばかりに、あたしはケーキをねだった。半分冗談だったのに。


 あっさりオッケーだよ。


 あたしは席に着くと、また手鏡で自分の顔を覗いてしまった。


 椚先輩は結局のところイイ男だ。


 こういう男に慣れると、他の男と付き合えなくなるじゃんね。


 そんな勝手な事を考えつつ、鏡をしまった所で椚先輩が席にやってきた。



「ごめんね、突然だったのにありがとう」



「……いえ、すいません」



「ん?なにが」



「随分お待たせしたかと……」



「顔チェックも大変だね」



「あーからかった!」



「いや、そういう焦らしは有効だよね」



「椚先輩に?」



「ガキが、調子に乗んなよ」



「たは〜」



「なにが『たは〜』だよ」



 あたしは大袈裟にオデコを叩いてみせた。


 椚先輩はあたしがちょっと、気のある風な事を言うとガキがって言ってピシャリと締め出すんだよね。


 そういうところも好きだな。


 お兄ちゃんとしてね……。



「で、なんですか?」



「ん、何時までいけるんだっけ?」



「えーと、家に戻らなければ三時間くらいは余裕です」



「どっちでも大丈夫なの?」



「靴履き替えようかと思ったんだけど、何かもう足痛くて……」



「働いた後だもんな」



「そ、はりきっちゃって!」



「偉い……スニーカーでも可愛いよ」



「あっ……そうですか〜」



「適当ってバレた?」



「バレバレじゃん」



 軽口を言い合いながら、フツーにお茶する時間。友隆と会う前に椚先輩に会えて良かったかも。


 同じような心の準備が必要だったから。



「……」



「……ケーキおいし」



「……」



「何ですか?」



「いや、喋りながらは食い辛かろうと」



「なーんだ、あたしに見惚れてるのかと思いましたよ」



「俺っぽいこと言うじゃん」



「でしょ、あたしだって椚先輩のこと分かってるんだから」



「そうかよ」



「……」



「ちょっと一服してきていい?」



「出て左手をくるりすると喫煙所です」



「くるり了解」



 あたしは視線を合わせない椚先輩を見送った。


 こういう時、皆んなあたしと視線が交わる。


 そうじゃなかった人が好き。


 そうじゃない人にしか興味が持てない。


 そんな気がした。



「友隆も、そっけなかったよね……」



 あたしはケーキを食べ終えて、居ない椚先輩の席を眺めた。


 まるで隣に友隆が居てくれたみたいに。


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