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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
緩やかな修羅場

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決着の時9

「瑞江さん、もしかしてデート?」



「あ、それセクハラです〜」



「えっ?!…………すいません」



 冗談だけど、ちょっとからかうと青ざめちゃう感じ。先輩可愛いな。



「ふふ、冗談ですけど。何でそう思うんですか?」



「いやっ……あーその、いつもより…………」



 いつもより可愛いって?それはちゃんと言葉にして欲しいなぁ……。随分おめかししたもんね。


 友隆に舐められちゃいけない、女はね勝負する時一層可愛く魅せるもんだから。


 そしてあたしは悪びれもなく、先輩を問い詰める視線を送る。



「……」



 汗かいちゃって、耳が赤いよ。


 別に悪くないんだけどな、あんまり経験ない感じ?



「デートじゃありませんよ!先輩っ!!」



 あたしは固まってる先輩の肩を馴れ馴れしく叩いて、モップをステッキのように振ってみた。


 

「うん、そっか……」



 なに笑ってるんだろうね。デートじゃなくて安心したわけ?あたしもね、色々覚悟決めてるから。


 シャノちゃんの事、ちゃんと話し合ってくるよ。



「大丈夫……」



「えっ?何か言った?あー……さっきのごめんね?」



「……何の事ですかぁ?」



 あたしはすっとぼけた。


 つい、声が漏れちゃったけど……大丈夫だから。


 どうにかなる。


 どうにかするんだ。大丈夫だよ、『アタシ』は大丈夫!



「瑞江さん、今日お休みだったのに本当に助かったよ」



「先輩なんて一日中居るんでしょ?」



「休憩時間に寝るから……」



「先輩が寝るためにあたしは出勤しました!」



「そう言われると……尚更、ごめんねぇ〜」



 ーー友隆が平日に予定をずらしてくれたお陰ですんなりお休みは取れたんだけど。


 パートさん達お子さんが風邪ひいたって、二人もお休みが重なった上に続いちゃったんだよね。


 休憩回し要員で連絡があったけど、たった三時間。


 友隆と会うまでの時間を潰すのにちょうど良かったし。


 そんなん快く引き受けなきゃ。



「そろそろ行きますか?」



「うん、流石に眠い……混んだら気にせず呼んでね」



「ハーイ、行ってらっしゃい」


 

 社員さんは大変だな、朝から日付変わるまで居なきゃいけないんだから。


 あたしは、バックルームに入っていく先輩を見送って二時間のワンオペに備えたレジ周りの業務に手をつけた。


 コンビニって高校の時にバイトしてたけど、やる事ホント多いよね。


 その時は全部覚えたつもりだったけど、高校生にはやらせてくれない業務もあったんだ。


 なんか、そうやって知ってるつもりでいた事に新しい発見があるのが楽しい。


 ライターなんてやってたけど接客業って嫌いじゃないよ。こういう端々にある雑務がまた良いんだよね。


 懐かしい想いも感じつつ、何事もなく過ぎていく時間。


 この駅各停しか停まらないし。ピークも朝ぐらい。時折やってくるお客さんに挨拶して、たまに世間話。


 なんか、あたしの家って感じがしてる。帰る場所……出勤すると気持ちが落ち着く。


 週五で働いたらさ、そりゃそんな風にも感じるよね。


 前の職場では、そんな事思えなかったのに。


 働く時間って長いから……こういう場所に巡り会えたの感謝しなきゃね。


 備え付けの時計を見るともう一時間……早いもんだ。


 

「いらっしゃいませ!」



 扉が開くと同時に条件反射で出る言葉。


 言葉の後に認識する相手。


 あたしはそのお客さんに目が丸くなった。



「よ、ちゃんと働いてるな」



「まこ……椚先輩……!!」



 あたしの驚きに反して、静かに椚先輩は微笑んだ。



「え、何で?外回りですか?」



「いや、休みなんだけどね」



「平日なのに?てかスーツじゃん」



「ん、まぁ……ちょっと野暮用でね」



「なんか、改めて見るとカッコいいよね!スーツが!」



「……はは、俺の事かと思って一瞬ドキドキしたわ」



「チャラ!」



「……」



「……えーと、どうしたんですか?」



「いや、ちょっと確認というか……うん、愛ちゃん今日何時に終わるの?」



 あたしは再び時計に目をやって、時間を計算する。



「あと、50分くらい……」



「今日早いんだね」



「……なんだ、知ってて来た訳じゃないんだ」



「は?」



「今日、トモと会うんです」



「……」



 なに、その顔。変な顔すんじゃん。友隆と会う事を知ってたわけじゃなくて、確認?



「なんですか、確認って」



「何かめっちゃ間が悪いかな……友隆とは何時に会う予定?」



「19時半に、関内の駅前」



 椚先輩は腕時計に目をやり何か考えている。



「……時間あるね」



「先に行って待ってるつもりだったんで……あと、一回家に帰って靴を履き替えますけど」



「そっか、じゃあさ俺この駅の西口のカフェで待ってるから……あがったらひとまず来れない?」



「……」



 なんだろね、変な感じ。友隆の用じゃなかったらなんだっていうんだろ。



「ごめんね、連絡も入れずにさ……」



「……別にいいですけど」



「うん、宜しくね」



「はぁ……」



「お姉さん、45番のタバコくれる?」



「かしこまりました〜!」



「板についてるね」



「でしょ、高校の時にバイトしてたし」



 良かった、いつもの笑顔じゃん。


 なんだろね、ホント。今聞いてもいいけど、仕事中だし。



「ありがと、じゃぁ待ってるね」



「……うん」



 あたしは颯爽と去っていった思わぬ来客に、面食らった。


 でも相手がマコにぃだから心揺らぐ事もなくて。


 ただ不思議な気持ちばかり。


 またチラと時計を確認するけれど、ちっとも時間は経っていなかった。


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