決着の時8
迫ってる、愛と会う日が。
ただ、何気なく過ぎていくはずの毎日を気にする俺。カレンダーなんて、そう見ないさ。
ここ数日は毎日、曜日を確認している。
あいつと会って話す事。正直、何にもねぇんだよ。
別れた理由が知りたいって?いやいや、気持ちの問題以外に何があるんだよ?
片方の気持ちが離れたら、例え自分に気持ちがあったって……どうする事は出来ないんだよ。
そんときゃもう、仕方がないんだ。
俺は居なくなろうとする奴の手をギュッと掴んだりは出来ない。
そーゆーの、カッコ悪いじゃん。
ただ見送るし、何か相手の為に祈れるんなら……いい願いを込めて祈りたい。
だからさ、そういう世間話的な俺の何が嫌だった?とか、あん時ゴメンね、とかないよ。
シャノが自分の意思で俺の元を去るんなら、お前の尻尾を掴んだりもしない。
でも、そんなんないって今は思うし。
俺の腹の上に落ち着くシャノを手放すとか、捨てるとか、そんなんあり得ない。
ヨリを戻して、シャノと一緒に皆んなで暮らそうとかも、マジであり得ない。
そうそう、あり得るのはさ。
快く愛がシャノを俺に譲るって事。
「…………」
「で、何て話したらいいんだっけ?」
俺は背中をポンポンとして、撫でてみるとシャノからはゴロゴロ振動が伝わって来る。
「猫は喋らない、喋らないぞ」
アン……ニャ
「……そんな事ないって?」
ン……ム
「眠たいんだな、ごめんな」
猫を避けてスマホを片手で見るのも大変だ。
俺は仕方なくスマホを放り投げて目を瞑った。
シャノが飽きるまで、居たいだけ居させてやりたいよ。
**********
怖い夢、夢じゃない、現実だ。
パッと目が覚めて、音のない世界にいる。
ひとりぼっち、あたし、ひとりじゃ何も出来ない。
そんな事ない、ずっとそうしてきたじゃん……寄ってくる男の人の力を借りて。
結局そういうこと。
やっぱ一人じゃダメだね、あたし。
就職も上手くいかなかったよね。
あー思い出したくない。ヤダヤダ、消えて。
違う事考えよう、そうそう、友隆との約束の日が迫ってる。
何だか早く会いたいよ、このまんまじゃ、あたし……。
「シャノちゃん……」
呼べばクルルって可愛い声を出して、近づいて来た。
幸せな家族のカタチには必ず猫ちゃんが居るの。
だからあたしには必要だった。
別に相手が友隆じゃなくたって……ううん、今思うと友隆って凄く素敵だったけど。
でも、もうあの人は無理だよ。
そーゆー人だもん。
「先輩も悪くないよね……コンビニの正社員ってイケてるのかな?」
「またそんな事ばっっかり!」
あたしの悪いトコなんだぁ……
「…………」
ぶっちゃけ友達もいない。
あたしに媚びてくる子は沢山いたよ。でもそんなの友達じゃない。
お揃いの服、お揃いの靴。
バック、ポーチ、アイシャドウ。
「……ほんっっっっとウザかった!」
服を買ってあげるから、一緒に出掛けよう?
お揃いの服着て出かけよう?
その服に似合うネイルを一緒にしにいこう?
「ウザいウザいウザい!あたしはそーゆーのマジでウザい!」
自分がない訳?誰かと一緒、お揃いが嬉しいって頭沸いてるくない??
あたしは仲良くなりたいとか、仲間に入りたいからって何か物をあげたり、何かしてあげるなんてないよ。
「みーーーんな、馬鹿!」
合コンの誘いをアタシが断ったってなんなのよ。
で?
じゃぁ、代わりに行くよって??それ、お前の責任だから!
ーーでも、でもね、後味悪いじゃん?
だから友隆にお願いしたし、結局守ってもらったんだろ?
トモかっこいいから!近づけないよね?
「ヒトの彼氏に色目使ってんじゃねぇ!!」
あーいやだ、みんな
「汚い」
あたしに色目使う奴らも
「全員キモイ」
そう思うと、友隆はよかったな。なんで嫌になっちゃったんだろ。
でもね、アタシだけ見ろってんだよ。
「誰だよ、緑町って?」
そうそう、だから嫌になったんだよ。あと、アタシがやってる事にケチばっかつけてさー。
あと、マコにぃも、良かったよ。
でも、ウチの家の事知ってんのはキモイ!!
「きもいきもいきもい!」
あーあー
なんで、あたし、こうな訳?
やり直したい……母親と一緒じゃん。男に寄生して生きる感じ。
「あー死にたい、死にたい」
「なんでなんでなんで」
「おばさんが産んでくれたらよかったのに。マコにぃのねーちゃん、あたしと変わってよ」
「女のくせに、背が高くてさ、モテないでしょ?いいよ、モテなくても」
「もうやだもうやだ!」
あーだめだ、メンタルぐちゃぐちゃ。
痛めつけて、忘れよう。
まさか、あのバイト先に鮎川さんが来るなんてね。
今は、自分に罰を与えなきゃ。
それで償うんだよ。
過去の『アタシ』を。
やり直したはずだったのに……こんなんじゃ、こんなんじゃ……。




