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俺は猫とメンヘラがキライだ。  作者: 反射的な司馬懿
緩やかな修羅場

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決着の時7

「お疲れさまでした」



「お疲れさまです、あの、先輩、申し訳ありませんでした……」



 仕事を終えて、施錠をしている時だった。


 結局お金は10円合わなかった。自動釣り銭機でお金が合わないのは間違いなく、あたしがぶち撒けたせい……。



「しょうがないよ、後でまた捜しておくから……」



「……アタシ、払いましたけど」



「ダメだよ、10円じゃなかったらどうするの……そういうの始めると歯止めが効かなくなるから」



「……すいません」



「……」



「あの、今日の事は本当に……」



「店長には……その、さっきの男の事……言わない方がいいのかな?」



「えっ?!」



 予想外の言葉に驚いてしまった。


 ……そっか、あたしの立場が悪くなるかもしれないって考えてくれてるって事だよね。



「それは、その……」



「瑞江さん、可愛い……から、さ。そういう被害、きっと大変だよね」

 


 何だろう、何だろ……。


 あたしはこの言葉に胸がギュッと苦しくなって、突然涙が出そうになる。



「や、あの……」



 話した方がいいかもしれない。全部じゃなくていい。昔、ガールズバーで働いてた事。その時のお客さんだって事。


 でも、それを言ってお金の事……鮎川さんからバラされたら?きっと信じて貰えない。


 信じて貰うって?アタシの嘘を?


 嘘を信じて貰えなくなるから困るって事?



 ーー私はまた、言葉が紡げずにいた。



「瑞江さん、家どっち?」



 気付けば駅から出ていたあたし達。


 あたしは指を刺すだけで、結局言葉が出ない。



「近いんだっけ……俺チャリ取ってくるからさ、今日は送るよ、危ないよ」



 アタシはこの言葉に頷く他なかった。


 この人は悪い人じゃない。先輩として、本当に心配してくれてると思う。


 アタシは先輩が走って駐輪場へ向かう様子を見送った。


 棒立ちで、ただそこに居る。


 待っているともつかない。


 頭が空っぽ。


 そんな私の目に入る、自転車を押しながらも走ってくるヒト。



「……」



 何でそんな急いでるんだろう……。


 そう先輩は、すぐに戻って来てくれたって事。


 

「ごめんごめん、じゃ、行こう」



「……後ろ、乗りますけど」



「何言ってんの、危ないから……」



「……」



「……」



「……」



「……」



 無言だ、話す事がない。


 でも、足早には歩けない。


 気まずいとか、そんな事を考える訳じゃない。


 ただ、申し訳なかった。



「……迷惑だったかな?」



「そんな事ない……」



 アタシは立ち止まってしまった。


 ダメだ、涙が堪えきれない。


 何でアタシみたいなのに優しくする?


 まだ入って、間もないのに。



「……瑞江さん、明日仕事来れそう?」



 アタシは頷いた。



「中番勤務にしようか?夜、俺ワンオペでも平気だし」



 アタシは首を横に振った。



「うん、無理しないでね?」



「……ごめ、ごめ……なさい」



「いや、瑞江さんが謝る事ないよ!10円もしょうがないから!」



「ハイ……」



 私が一歩進むと、先輩もゆっくり着いてきてくれる。


 ゆっくり、ゆっくり。


 特にそれっきり会話もなく、アパートの前に着いた。



「ここなんで……」



「……」



「えっと、ちゃんと前まで送るけど……変な意味じゃなくて」



「ここですってば」



「……へー、」



「……そんなにアレですか?」



「いや、中はリフォームで違うのかな……」



「別に……入り口に柵があるので……」



「そうだね、いや、なんか、瑞江さんて意外と堅実なんだね」



 マコにぃもここじゃダメって止めたっけ……。でもシャノちゃん飼えて安いとこ。


 こんな感じのアパートしかなくってさ。


 てか、ずっと住んでた団地もこんな感じだったし。


 入り口に柵があるって部分で折り合いがついたけど。



「……ふーん、そんなに住めそうなトコなんだ」



 アタシはつい、意地悪くそう言ってしまった。



「えー、いや、年頃の女の子はあんまり選ばないかもって!」



「ふふ、すいません、冗談なんで……」



 堪えきれなかった涙は、ひと粒ふた粒だ。


 でもあたしは赤い目で、先輩の顔を見たと思う。


 その照れ隠しについ。


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