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プロローグ 

どうぞ、よろしくお願いします。

窮地に陥ったーー死に直面した時、潜在能力や、今までと比べものにならない程の力を発揮する。


なーんて聞いたことはあったけど、まさか私の身にそんなことが起きるなんて想像したこともなかった。


だって、私はそこら辺にいる貴族令嬢で特に何かの能力に秀でているわけでもなく、本当に平凡な令嬢だった。

付け加えると、珍しい銀髪を持つけど、瞳の色は多くの人と同じ碧眼で容姿は家族みんなは飛び抜けているのに、私だけ普通。


しかも、貴族令嬢で1番私が必要だと思っている品性に関してはあまり無い。

貴族としては平凡というより下が知らない私。


そんな私がこんな力を持ってるなんて、今でも信じられない。

世の理に反する前に、この力がバレた時は、私の人生即終了だわ。


◇◇◇◇


「よく来てくれた。アクランド公爵、そして公爵令嬢」


私とお父様は突然、陛下に呼ばれた。

きっと婚約のことなのだろう。

そう思いながら陛下の言葉の続きを待つ。


「マルティーナ・アクランド公爵令嬢。

 是非とも、我が息子ーー第二王子のベスター・ベリンガムと婚約して欲しい」


陛下の言葉は予想通りだった。

ベスター様と婚約することはある程度決まっていたことだし、私もベスター様も互いに恋愛感情はなくとも、共に育ってきた幼馴染で、支え合う親友のような気持ちを持っていた。

だから、つい先程までは2つ返事をする予定だった。


それなのに、どうしてだろう。 

なぜか。

なぜなのか。

根拠はないのだけど。

この婚約をしてはいけない気がする。

ベスター様に問題があるというより、婚約や結婚より優先しないといけない何かがあるような気がする。


そう思っている時だった。

お父様が心配そうに私を覗き込んでくる。


「ティーナ?どうした?」

「え。ええと」


私は、上手く返事をできずにいた。

婚約を決定するのを延ばすにはどうしたらいいのか。

まだ良い案が思い付かない。

そんな中、お父様は私の異変にすぐさま気付き、助け舟を出してくれた。


「陛下。申し訳ございません。娘の様子がおかしいので、この婚約の話はまた後日でよろしいでしょうか?

 どうか、幼馴染の誼で私のお願いを聞き入れてくれないでしょうか?」


「あぁ。私とお前の仲だ。

 マルティーナ嬢の気分が優れないのかもしれない。

 早く休ませてやれ」


「ありがとうございます」


そんなこんなで、私とお父様は皇帝の執務室から退出した。

すると、お父様は城内で同僚から呼ばれ、私だけでアクランド家の屋敷に帰ることになった。


1人になったので、改めて先ほどの考えを整理する。

だからだろうか。

考えに夢中になりすぎていた。

周りの景色に目を向けた時、そこはどこなのかわからない森の奥深くだった。


私は、馬車に向かうために庭園を通ったはずなんだけど、ここはどこかしら?


さぁ、どうしようかしら?

歩くのは良くないかもしれない。

でも、歩かないことには誰にも会えないかもしれない。


そんなことを考えていた時だった。


ガサガサッッッ


葉っぱを掻き分けたかのような音が聞こえる。

もしかして、誰かが私を探しに来てくれたのかしら?

申し訳ないことをしたけど、とてもありがたいわ。


そう思い、私は音の近くに近づいた。


すると、出てきたのは全てが黒色で覆われた獣だった。

それも、目はギラギラとした興奮状態。


あぁ。やばいわ。 

そう思った途端、私は後ろを振り向き走り出した。

公爵令嬢とは思えない、はしたない姿。

やっぱり、危機に陥った時は素の自分が現れる。と言うけど本当なのね。

それでも、自分の命を守ることが大切だ。

そう思い、全力で走る。


そうして永遠と思える時間走っているような気がした。


もう無理だ。走れない。

足が回らない。

もう、足があがらない。


あっ。


どうやら、私は切り株に躓いたようだ。

最後の足掻きとして、獣を正面から睨みつけ、お尻で移動してみる。


私の走るスピードに合わせ、私の体力の限界になるまで追いかけ、少しだけ私に生きる希望を持たせていた残酷な相手はフェンリルだった。


そして、最後の足掻きである、お尻で移動していた距離もどんどん縮められていた。


あぁ。終わった……かも。




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