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マーダーストーム  作者: エッグ・ティーマン
10/10

エピローグ

 1982年 インディペンデントシティ インディペンデント警察

 「今朝インディペンデント司法局長から電話をもらってね、マーダーストーム事件解決に喜びを評して下さった。君のおかげだ。感謝しよう。」とレンブラント署長。サラ警部は丁重におじぎをして続ける。「ラドクリフ巡査をはじめとする優秀な部下達のおかげです。」「ああ。それもあるだろうな。だが、私は君の貢献を評して・・・君を警視に格上げしたい。」とレンブラント。「警視に!?しかし私ごときで・・・」「いいんだよ。アシュリー警視も喜んでくれたよ。というか、君の昇格はアシュリー警視からの提案なんだよ。」「え?」


 オフィスに戻るとアシュリー警視が笑顔で出迎える。「署長から何か重要な話はなかったかしら?」「ええ、ありましたよ。私を警視にして下さると言うお話が!あなたの提案だとお聞きしました。」「あら?署長ったら・・・あの人口が堅いと信じていたんですけどねえ・・・」「本当に感謝します。当初マーダーストームの捜査をして下さっていたのはあなたでしたのに・・・」「いえいえ。捜査をあなたに引き継いで良かったと思っているわ。それにしてもさ・・・」「ええ。」「どうして犯人がアンドリューだって分かったの?」「ああ、それですか・・・まあ勘にすぎなくて偶然当たっただけなんですけどね、アンドリューが気になる発言をしていたんですよ。」「気になる発言?」「ええ。彼は犯人は被害者から切り取った乳首や目玉を保存するために冷蔵庫を持っているんじゃないかってね。犯人出ない人物からそんな発想がいきなり出てくるとはおもいませんからね。」


翌日 インディペンデントシティ インディペンデント警察第3分署

 「この部屋でいいか?」とドロゼンバーグ警部補はダスケに尋ねた。「ああ。完璧だ。マッケンジー分署長はいるか?」「今は分署長会議で不在だ。何か伝言を残すか?」「ああ。レンブラント署長への口利きの礼だ。」と言ってダスケはドロゼンバーグに細長い茶封筒を手渡す。「随分厚みがあるな。」「ふん。マッケンジーの野郎はがめついからな。後・・・お前への報酬は別にあるからそれは確実にマッケンジーに渡せよ。奴は賄賂を寄越せとうるさいからな。」「ハハハハ・・・確かにあいつはがめついな。だけど使える分署長だろ?」「ああ。正直今回の和平協定締結の場を設けるに当たって一番邪魔なのがワトスンだった。マッケンジーがレンブラントを説得してワトスンに戦争をやめさせたときは、正直に言って驚いたぜ。」「まあマッケンジーはレンブラントとは同期だしな。」「ふん。それもあるな。」「とにかく、あんたがうまく和平を取りまとめられることを期待してるぜ。じゃあな。ハイチ人と南米人らが来訪したらしらせ・・・」「ちょっと待て。」「うん?どうした?」「マッケンジーは老いぼれだ。先はそう長くないだろう。」「ふん、まあな。」「そうなった時、俺にとって信用できるのはお前だけだ。」「あ、ああ。」「マッケンジーは引退した暁にはお前に色々頼み事をするだろう。その時はよろしく頼むぜ。」「ああ、分かった。ただし払うもん払えよ。」「もちろんだよ。」


 20分後

 「ここの警備を頼んだよ。」とドロゼンバーグは部下二人を部屋の前に立たせると副分署長を連れて入室した。

 「全員そろっている。始めよう。」とダスケ。


 ダスケはまずタルコザファミリーのボスを見る。「今回俺らもあんたらも多くの犠牲者を出したよな。」「ああ。そうだが?」「結論から言おう。不毛な争いはやめよう。これ以上犠牲者を出したら互いに苦しむだけだぞ。和平だよ。」だが顔を真っ赤にしたタルコザファミリーのリーダーは机を叩く。「ふざけるな!お前らスライサーズは俺らを苦しめようとしてきただろ!この和平提案の裏にも何かあるんじゃねえか?」だがダスケはにやり、と笑って答える。「確かにスライサーズは南米人を敵視してきたし、これからも敵視するだろう。だがな、俺は違う。」「は?お前はスライサーズの・・・」「ああ。少なくとも『今は』スライサーズインディペンデント支部長だ。だけど、俺は・・・そのうち独立するのさ。あんたらにとっても悪い話じゃないだろう?」「ああ。そうだな。」と少し警戒しながらタルコザファミリーのリーダー。「とはいえ、このハイチのご友人方は制裁を所望している。」と言いながらダスケはデッド・ボーイズを代表して来た二人の幹部を指し示す。「ああ。お前らから戦争を仕掛けてきたんだぞ。」と若幹部カルロスが言う。「その通りだ。お宅らからなにかしらの賠償があってしかるべきだろ?」と老幹部。タルコザファミリーのボスは舌打ちをする。「何が望みだ?」「お前たちが仕入れているヤクを半分だけ買った時の値で俺らに売れ。」とカルロス。タルコザファミリーのボスの顔が再び歪む。「クソ・・・もし断ったら?」するとダスケが口を開く。「戦争続行だ。あんたらには不利になるぞ。」「けっ!何を言ってやがるんだ。お前らはインディペンデント市警の取り締まり対象だぞ。抗争を続けていたらワトスンにパクられちまう。」だがダスケは薄ら笑いで答える。「俺の読みが正しければワトスンは手を引いたぞ。」「何だと!?」「インディペンデント市警はお前の味方をしてくれんぞ。」と言いながらダスケがドロゼンバーグが差し出した紙を受け取ってタルコザのボスに渡した。紙を見たタルコザのボスの顔が青くなり、また赤くなる。「くそ!ワトスンの野郎・・・」「残念だがヤクをデッド・ボーイズとシェアするしかないぜ。」「くそ!分かったよ。ヤクを流してやろう。で、あんたの望みは何だ?」「俺か?スライサーズ本部に対して独立戦争を仕掛けるとき、あんたにも協力して欲しい。それだけだ。テリトリーの分割も経済的保証もなくていい。」とダスケ。タルコザのボスは不審そうな顔をしているが「分かった。」と言う。

 副分署長がサインした紙にデッド・ボーイズの老幹部・ダスケ・タルコザのボスが署名する。


 「あんたには感謝してるよ。」と署の入り口でカルロスがダスケに言う。「ああ。俺らはスライサーズ本部との繋がりがあるからヤクを確保できているが、お前らはヤクが安定して供給されないだろ。せいぜいイタリアンとの取引のため出張してきたコルシカ人どもが申し訳程度に売ってくれるだけだろ?だから南米人に協力させた。」「ふうん。だがあんたのことだ、俺らからヤクの利益を奪うつもりだろ?あんたが俺らに仲介料を何も求めねえ筈がねえ。」「タルコザと同じだ。独立戦争に協力してくれ。」「だがよお、あんたが独立したらあんたのグループはヤクをどうやって確保するんだ?」「心配ありがとよ。だが手は打ってあるんだよ。実はな、イタリア人の一部が俺と同じことを考えてる。まあ親グループへのクーデターだな。で、俺は独立を模索するファミリーのために雑用を請け負う代わりに奴らにヤクを分けてもらう予定だ。だから財力は心配ねえ。だけど独立戦争を起こしたら多分本部は殺し屋どもを沢山黒人街に送り込んできやがる。俺のところの連中だけじゃ足りねえ。お前らの兵力を無償で借りるぜ。」

 そういうダスケの目はぎらついており、カルロスはどことなく信用できない男だと感じるのだった。


二日後 インディペンデントシティ トール地区

 テレビではニュースキャスターの取材に応じるサラ警部が映し出されている。

 「なぜパークスマン氏はマーダーストームに関する事件の捜査に圧力をかけたのでしょうか?」「彼は脅されていたのです。」「脅されていたとは?」「実は彼の息子が違法ビデオを売りさばくビデオ屋、そう当初我々がマーダーストームだと睨んでいたデュークからビデオを購入していました。デュークからその情報を聞いたのでしょう。マーダーストームは彼にパークスマン氏を脅させたのです。」「なんと!つまりパークスマン氏はデュークを通じてマーダーストームに脅されたいたというのですか!?」「ええ、その通りです。マーダーストことアンドリュー元検視官からも証言が取れています。」「ところでアンドリューはデュークも殺害していますよね?」「ええ、それに関してもアンドリューは容疑を認めており・・・」

 「くそが!」パークスマンは叫んでテレビを消した。「あの婆が・・・くそ・・・」そう言うと彼はリモコンを投げ捨てた。それでも怒りが収まらないパークスマンはテレビを蹴りつけ、観葉植物を倒して大暴れする。

 「おい、少し静かにしてくれよ・・・」とドアを開けた息子を「馬鹿野郎!」と怒鳴りつけて壁に押さえつける。今にも首をしめそうな父親に驚く息子。「貴様のせいだぞ!」と怒鳴って息子を押し倒したパークスマンは突然ぐったりとしてソファに座り込む。

 「俺らは終わりだ・・・お前のせいでな・・・」とつぶやくパークスマンは顔を抑えてうめいた。


同日 ジャカシティ ジャカ警察

 デボンはコインロッカーで着替えていた。ジャカ警察の制服だ。

 「新人、着替えたら来いよ。婦警の連中が金持ちのじじいどもと寝るためにパトカー二台で移動する。俺らはそのパトカーの警護だ。」と先輩部長刑事が言う。「へい、承知です。ところで先輩・・・」「ん?何だよ。」「俺らは婦警の連中とはねれないんですかね?」「ふん、馬鹿言えよ。俺らみてえなブスがあの女どもに需要があるか?」「それもそうですね。ハハハハハ・・・」「おもしれえ新人が入って来たもんだぜ。」


三日後 インディペンデントシティ インディペンデント警察

 バドルがレンブラントから表彰状を受け取るとカメラのフラッシュが一斉に焚かれた。

 その様子をサラ警部は見守っていた。彼についてはメディア各社が「完全に更生した元囚人が警察を手助けした」という形で報じるだろう。彼の「前科者」と言う烙印はその報道によってかき消されるはずだろう。


 表彰式が終わった後、サラ警部が「あなた・・・緊張したでしょう?」と声をかけるとバドルは「あ!警部!」とすぐに気づいた。「警部!贖罪が出来てよかった・・・」というバドルにサラは疑問を投げかける。「あなた・・・本当に偶然捕り物現場に居合わせただけかしら?」「ええ。サラ警部が何者かを追いかけているのを見て、これは捕り物だろうと・・・」「そうならいいわ。」「え?」「あなたが贖罪にこだわってマーダーストームを捕まえようと考えていたとしたら・・・警官として少しお背説教が必要だったかもしれないけどね。」「それは・・・」「まあいいわ。偶然とはいえ、あなたが贖罪行為をしたことによって過去は清算された。今度は犯罪とは無縁の人生を送るのよ。」と言ってサラは去っていく。

 バドルはそんな警部の背中を見守りながら「はい!頑張ります。」と深々と頭を下げた。

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