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   ◆


花梨が走り去った後、康太は呆然と公園のベンチに座っていた。


…恋じゃない?なんの話だ。


いや、本当は分かってる。花梨の言う通り、俺たちは確かににおかしかった。

あんなにアホみたいに好き好き言うなんて、10代のガキじゃあるまいし。


はあー。

康太は重いため息をついた。


おかしかったけど、俺が花梨を好きだと思ったのは本当で。

それだけじゃだめなんだろうか。

それとも、ただの口実?花梨はあの男と付き合ってるのか?


腹の底が煮えたぎった。


だめだ。花梨は渡さない。


でも…でもなあ。


しつこい男は嫌われるぞ、と冷静な自分が突っ込む。

このご時世、加減を間違えたら即ストーカー扱いだ。


いや、相手が嫌がってることをするのは絶対だめなのはだめなんだが。


康太はもう一度ため息をつくと、煮え切らない思いを抱えたまま立ち上がった。

ぶるっと身震いした。

どうやら、ぼーっとしている間にずいぶん時間が経ってしまったらしい。

日中は暖かかったが、夜は冷える。

安定しない天候に毒吐きながら、康太はあてもなく歩き出した。



周りからの視線を感じる。いつものことだ。

声をかけてきそうになる人を避けて、康太は足早に繁華街を抜けた。


こういうのも、花梨と恋をしてる間はまったく気にならなかったんだけどな。


世界が輝いて、煌めいていたあの時間は、終わった。


ふと横道に目をやると、花梨の髪の毛が見えた気がした。


髪の先だけ見て花梨だと思うなんて俺も相当重症だな…


自虐的に笑った康太だが、気になって仕方がなかったのでそちらに歩いて行った。


花梨…?


花梨らしき女性の後ろ姿が見えた。その目の前には背の高い外国人風の男。笑いながら花梨に手を差し伸べている。


「っ!」


だめだ、あの男はだめだ。


康太の直感が告げた。


「花梨!」

康太は大声で叫びながら花梨を呼んだ。


「花梨!花梨!」

周りの人が驚いて振り向くくらいの大声なのに、花梨には聞こえないようだ。


男は花梨の手を取ると、花梨の腰を抱いて歩き出した。

チラリと男が康太の方を振り向いて——


ニヤリと嘲り笑った。

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