HAHAHA! クリスマスは夏祭りだぜ!
「HAHAHA! Merry Christmas!」
眩しい日差しの下で、サーフボードを持ったサンタさんが明るい笑顔でそう告げる。
「――って、おかしいだろ! なんだよこの暑苦しい空気、騒々しいテンション! こんなの絶対、『クリスマス』じゃねーだろっ!」
「何言ってるのよ、祐樹」
言いながら、ビキニ姿の千夏がバーベキューの肉をひっくり返す。
「南半球、オーストラリアの12月は夏なのよ。だからクリスマスは、日本で言う『夏祭り』と一緒。こうやって暑い日差しの下で、熱く楽しむものなんだから」
したり顔でそう言ってのける千夏は俺の従姉妹で、ホームステイの間にすっかりこの国へと馴染んでしまっている。そんな千夏に「ちょっと英語を習ってきなさい」と送り出した母親を恨みつつ、俺はサンタ帽に海パンという日本なら即・通・報な恰好で立ち尽くした。
「いや、サンタが日焼けして波に乗ってるとかありえないだろ……つーか相棒のトナカイはどうしたんだよ……」
「それは北欧の人たちがトナカイを使っていたからついたイメージ。だいたい、サンタの赤と白のイメージだって某炭酸飲料メーカーの宣伝で定着したって言われてるぐらいだし……要は、『ところ変われば品変わる』ってやつよ」
「いや、そんなもん日本人の俺にはわかんねーよ……やっぱり『サイレントナイト』とか『ホワイトクリスマス』の方が馴染みあるし……」
「バレンタインとかハロウィンだって同じじゃない。日本人はとにかくお祭り好きなんだから、要は騒げればなんでもヨシ! ここは十分に、『南国の夏祭り』であるクリスマスを楽しみなさい!」
そう言い終えると、千夏はさりげなく俺の手を取る。……こうやってボディータッチが多くなったのも、海外生活が長い影響だからだろうか? 真っ赤になる顔を隠そうとそっぽを向けば、千夏がそっと俺に耳打ちする。
「日本のクリスマスソングは失恋系の曲が多いけど、夏の曲は燃え上がるような恋をテーマにしたものが多い……でも、こっちではクリスマスが夏だもの。真夏のクリスマス、私はチャンスを逃す気はないわよ」
千夏の意味深な言葉に、俺の心臓の鼓動が早くなる。
ただからかわれているだけか、それとも何か含みがあってのことなのか。
海ではハイテンションなサーファーサンタが歓声を浴びる中、俺は一人そんな劣情に囚われ――近すぎる距離の千夏にに、劣情を煽られながらクリスマスを過ごすことになるのだった。