一節「魔女狩りの始まり」
古生暦864年、聖王暦誕生より十年前、、、
突如として現れた魔精種と呼ばれる脅威に人系種である森精種、人間種、鬼人種、小人種はなすすべなく蹂躙された
小国であった国は壊滅していき人系種の生存圏はみるみるうちに縮小していった、
そこで唯一壊滅せず魔精種の進行を食い止めていた四大国である
森精種の国アリアトロワット魔導国、人間種の国アギアノワルド神聖国、
小人種の国ギアフェルド機装国、鬼人種の国デセアルドラ武力国は結託し、
人系種最終生存圏を結成した
アリアトロワット魔導国は森精種のその比い稀なる魔法の才で魔精種を倒し、
アギアノワルド神聖国は魔法は使えないが神の祝福と呼ばれる魔法と似て非なる力で魔精種に抗い、
ギアフェルド機装国は四大国の中でも最高位の技術力を持ちその技術力で作り上げた武器で魔精種と戦い、
デセアルドラ武力国は他国より技術力は少し劣るが鬼人種の卓越した強靭な肉体で魔精種を倒していった、
これにより人系種の小国からの難民は平穏を手に入れることができた、
一時的な平穏が、、
この頃難民の中である噂が流れた、
[人系種に擬態する魔精種が現れた]
というものだった、、
今までは魔精種かどうかを判別するのは簡単だった、魔精種は特徴的な目と角、そして翼がある、
だが擬態する種が現れたとなれば判別する手段が消えてしまうことと同義だった。
───アリアトロワット魔導国にて、───
「エリアラ様!!!エリアラ様はおられますか!」
従者の男が切羽詰まらせた声を上げながら、王の書斎へ入ってきた
「何があったのですか?ライアそこまで慌てて、、貴方らしく無いですね」
そしてその声に答えたのは、
アリアトロワット魔導国、女王エリアラ・シヴィ・アリアトロワットである、
「実は、避難してきていた避難民の中で噂となっていた擬態する魔精種の件なのですが、、」
「それが何かあったのですか?」
エリアラはライアとは違い、落ち着いた様子で答えた
「はい!噂となっていた擬態する魔精種、、今は臨時で擬態種と呼ばせていたただきますが…その擬態種が!国内にて存在が確認されました‼それも避難民による証言ではなく巡回中だった警備兵が目撃したとのことです!」
ライアのその発言にエリアラは戦慄したなぜなら今までエリアラは擬態種の噂をただの錯乱した避難民が見た幻覚か何かだと思っていたからだ。
「なんですって!それは、、何かの見間違いではないのですか!」
「いえ、、その可能性も考え、目撃された場所一帯の監視魔法を確認しました、
ですが確認の結果、設営された避難民区画の第7区画にある監視魔法の一つに魔精種に変異する避難民が確認されました」
「‥‥‥‥‥‥‥」
エリアラはもはやため息を吐くことすらできなかった、
自分の中で幻覚と片付けていた問題が、
まさか自分の国で起こるとは思っても見なかったからだ、
そしてエリアラは少しの間考え重い口を開いた、
「この問題は明日臨時の〈対魔精種四国会議〉を開き他の三国にこの危機を伝えます」
「、、、、かしこまりました」
従者であるライアは主の決断に葛藤ののち答えた
───〈対魔精種四国会議〉にて、───
「‥‥‥このように我が国で噂として流れていた擬態種の出現が確認されました」
この会議はアリアトロワット魔導国女王エリアラ・シヴィ・アリアトロワットの、
擬態種出現の内容報告から始まった、
「、、、それで我々三国は貴殿の発言にどう答えればいいのですかな?」
擬態種出現の報告に場が静まり返る中そうめんどくさそうな言い方をしながら答えたのは、
ギアフェルド機装国、国王セリべス・ギアフェルドである
「それは、、、」
エリアラが話そうとするのを遮ってセリべスは続ける
「貴殿の報告で擬態種が現れたことは分かっただが、その上で我々にどうしてほしいのか、どう対応してほしいのか、そこが抜けていては我々はなぜ集められたかわからないのだが」
セリべスはエリアラを問い詰めるように責め立てる
「、、それをこれから話し合っていこうと、、」
「ならば報告が終わった直後にその議題へ移るべきだろう、何故、間をおいた?」
「それは、、一度皆様の顔色を伺おうと、、」
「今は擬態種の出現により、すぐにでも打開案を出さねばならぬ状況で顔色を伺う余裕がありましたのかな?」
セリべスはなおもエリアラを責め立て続ける
そこへ一人の男が二人の会話に遮って入った、
「セリべス王よ貴殿もまた、その何も生まない言い争いはやめないだろうか、」
そう言ったのはアギアノワルド神聖国、国王シュバルツ・リール・アギアノワルドであった
「そうですよ、そのように言っては、、そのように言ってはエリアラ様が可哀想です、、」
シュバルツに続いて妻であったリリエル・リール・アギアノワルドも状況に戸惑いながら続いて言う
その発言にセリべスは虫を払うような動作を取りながら言った、
「ほう、ただ見ているだけで俺が発言するまで何も言わなかった男がよく言うな」
「それは、打開策を考える時間が必要だった為で何も考えずに喋らなかったわけではない」
セリべスの言葉には負けずとシュバルツも果敢に言い返す
「それに貴殿も最初に言っていたではないか、その議題へ移るべきだろう、とそれなのに言った張本人が言い争いで時間を潰しては本末転倒ではないか」
それを言われセリべスは、
「チッ、、」
舌打ちをしセリべスは苦虫を嚙み潰したような顔になり遂に言ってはいけないことを口走ってしまった、
「人間種風情が!俺に指図をするな!!」
怒気を含ませその言葉を口にした直後、、
「(ドンッ!!)いい加減にしろ!!セリべス‼」
セリべスの隣に座っていた女性が声を荒げた
そしてそこにいたその女性以外の全員が固まる中、
女性はしゃべり続ける、
「これは魔精種に対抗する為に開かれるものであり貴様が言いたい放題言っていい場所ではない!!そして人系種最終生存圏結託以降禁忌としてきた種族差別までするとは貴様、、何が国王だ恥を知れ!!」
こうして怒りをあらわにしたのは、
デセアルドラ武力国、女王ベリエル・ルーラ・デセアルドラだった、
「、、チッ」
だがそれでもセリべスは舌打ちをし、貴様に何ができる?とでも言いたげな顔をした。
しかしベリエルはそんなセリべスを無視しこう続けた
「とにかく今は擬態種に対する判別できる特徴がないかを調査するのが先決だと思うのだがこれに賛成の者は、」
このベリエルの発言に他三国の王たちは手を上げ賛成の意を表した
「ですがしかし、擬態種の判別特徴など、どう見つければ、、」
エリアラは深刻な顔で言った
それに対し先ほどまであれだけ怒りあらわにしていたセリべスがこの空気に折れたのか言う
「血液調査、、」
他の王たちがセリべスを見た
そしてその視線に満足した様にセリべスが言う
「魔精種どもは魔精だ、どんなに上手く擬態し我々に化けてもその血に混じる自分たちの闇属性の魔力が混じった血液までは化かすことはできないだろうよ」
先ほどとは打って変わって冷静にセリべスが言う
そして他の王の面々もセリべスの言葉に納得し話し始めた、
「そうですね確かに血液までは擬態できないはず、、」
「ああ、だがしかしどうやってその血液を採取するんだ?」
「あたしの国にはそんな技術はないね」
「私たちの国にも血液採取の技術まではありません、、」
と王たちでの話し合いが行われる中おもむろにセリべスが手を挙げた
「なら俺の国が引き受けようか?」
その言葉に王たちは驚きながらセリべスを見た、
それにニヤリと笑みを浮かべながら王たちの視線に答える
「確かにお前らの国じゃあそんな技術力ねぇだろうが、こちとら技術力で魔精種と戦ってんだ血液採取技術ぐらいとっくのとうに出来てるぜ」
その言葉に王たちは驚きながらもセリべスの発言に
我々にも勝機があることを確信した。そしてこの臨時会議は終わりを告げた
───そして一か月後、───
擬態種は次々とみつかり、特に人系種の女性へ擬態する種が多いことが分かり
避難民の間では擬態種調査のことを魔女狩りと呼ぶようになった