わたくしはモブですことよ。
皆様、ごきげんよう。
わたくしは、乙女ゲームのヒロインの先輩役。
フランチェスカ・リヴィアと申します。
与えられた役目といえば、ええと、いわゆるモブですね。
背景となり、時にヒロインの背中をモブとしてサポートする。本編には顔は登場しませんの。
わたくしはそのような人物である。と思い出したのは先ほどですが個人的には本編登場は台詞だけなのでとても楽でしたわ。
それも先ほどヒロインが本編を終わらせたようなので今はエンドロールですわね。
残念なことにこの世界で生まれてから死ぬまでの人生をおくらなければいけませんが、本編が終わったのでとりあえず一段落。
ヒロインの選択肢としてフランチェスカに教えてもらうというものがありましたのでわたくしは、ステータスをあげるただの教師役の令嬢ですわね。おかげさまで本編には顔など一切登場しておりませんが美貌と才能に溢れております。
はぁー、スッキリ終わってよかったですわ。
この世界は特に嫌がらせをする方もいらっしゃいませんし、いちゃいちゃしてヒロインとくっついた方が二人で幸せになっておしまい。
キスとかもないプラトニックラブですわ。
「やっと誰が大切だと気づけた」
「ええ、私もです」
そんな台詞でエンドロール。
くっつかなかった方々は、皆様ヒロインと友情を育んでおしまいですわね。
はいはい、めでたしめでたし。
そう思ってたんですが、この状況は一体どうなってますの!?
「フランチェスカ様みぃつけた♡」
「フランチェスカ様、ここにいたんだね」
「フランチェスカ様、会いたかった…」
「フランチェスカ様。お慕いもうしあげております」
「フランチェスカ様…」
ヒロイン以下攻略対象に追われてますの。
助けてくださいませーーーーー。
淑女にあるまじき全力疾走ですわよ~ーーー。
あっお友達発見ですわっ!匿ってもらいましょう。
ジュリアのいる鍵のあいた教室に駆け込む。
ひとつしかないドアを慌てて閉じる。
ここならちょっとはわからないはずですわ。
「ジュリアっ助けてくださいませー。」
うえええんと半泣きで助けを求めるわたくし、フランチェスカ。
後を追いかけるヒロインと大勢の攻略対象。
うん…と察してジュリアは鍵を閉めた。
「フランチェスカ?貴女好感度ステータスをあげすぎたのね」
「好感度ステータス???」
なにそれ。フランチェスカはモブだからわかんないですわ???
「えっ???わたくしは本編には登場しておりませんが???」
「隠しキャラの自覚なしか~」
ジュリアは頭を抱えた。
「いいことフランチェスカ。貴女は隠しキャラよ」
諭すようにジュリアは話しかけた。
「かくし…きゃら???」
「ええ、本編1周目にフランチェスカに教えてもらうって言うのがあったでしょう」
「ええ、モブの役割ですからありますわね??」
「フランチェスカに教えてもらうと能力値が上がるのは誰かしら」
「まんべんなく?全員??ですわよ???」
「そう、本編には一切登場しないのに全員と関わりがあって名前もあるのよフランチェスカ。」
「ジュリアも名前がありましてよ???」
「そう、現時点で本編には一切登場しておりませんが名前はありますね。フランチェスカルートでは貴女のお世話役よ」
「お世話…役??お友達ですわよ…???」
「ええ、そういってくれて嬉しいわ」
こんこんこんっ。
「失礼、フランチェスカ様はこちらにいらっしゃるだろうか」
「あっはむぐぐ。」
「フランチェスカ貴女バカなの。」
思わず返事をしたフランチェスカをジュリアは素早く捕まえる。そして
フランチェスカの口を押さえつけて小声で注意した。
「フランチェスカ様の声がしたぞ…。まさか…」
「今ここはジュリア・シルベチカが使っておりますわ。フランチェスカは先ほど外扉から中庭へと逃走しましたわ」
ジュリアが大声で言う。
「なるほど、情報提供感謝する。」
「理解してないようですから追い詰めないであげてくださいませ」
「追い詰めてなど…ようやく「フランチェスカが逃げますわよ」
ジュリアは最後まで言わせないと言う気持ちで叫ぶ。
「ありがとうっ」
バタバタと複数の足音が去っていく。
ジュリアは、窓のカーテンを全て閉めた。
灯りをつけて影がうつらないように窓の下へ座らせる。
フランチェスカは脳内に大きなハテナを浮かべてジュリアを見つめた。
「ジュリア…わたくしはモブですわよね??」
「1周目はね。説明してあげるわ…」
「ええ…。お願いしますわ」
ジュリアは語る。
「まずこのゲームが友情エンドで終わったのは理解してるわよね」
「そうなんですの??思い出したときにはエンドロールでしたがヒロインは無事にお相手とくっついておりましたよ??」
「ヒロインはキスもしてない、告白もされてない、大事な人がわかったって台詞でしょう」
「ええ、皆様、バルコニーで夜空を見上げて周囲の方々が背後で微笑ましそうに見てらっしゃいましたね」
とても素敵な風景でしたとうっとりとフランチェスカは思い出した。わたくしも近くにおりましたが、素晴らしかったですわ。
「フランチェスカ。俗にいう友情エンドよそれ」
「そうなんですの!?!?」
フランチェスカは驚いた。
だってヒロインと攻略対象はあんなにいちゃいちゃしていたのに…???
「いちゃいちゃねぇ…。具体的には??」
「だってお手製のクッキーを差し上げたりランチを食べたり一緒に青春を過ごしたり」
「それをフランチェスカはどこでみてたの」
「もちろん、画面にうつりませんが、近くにおりましたよ。ヒロインという立場ではありますが淑女たるもの男性と二人きりにさせるわけにはいけませんからね」
ジュリアは頷いた。
「そうよね、貴女にも記憶があるはずよ。クッキーに関してはフランチェスカがみんなに餌付けされてランチもイベントもフランチェスカは同席してたわよね」
フランチェスカは否定した。
「餌付けなどされておりません。皆様、クッキーもランチも美味しいものを教えてくださっただけですわ。イベントに関しても淑女たるもの男性と二人きりにさせるわけにはいけませんからね画面にはうつっておりません。」
「クッキー美味しかったかしら???フランチェスカ、美味しいものを、食べさせてもらったりしていたりイベントも画面外だけど一緒にいたのよね」
「ヒロインのお手製のクッキーは確かに美味しかったですわ、そのあと皆様シェフのお手製の美味しいものを続々持ってきてくださるようになったからわたくしは幸せで…。って違いますわ餌付けされておりません。」
「その時、音がしたとか変わったことは」
「クッキーを食べるごとに友情ポイントがアップしておりましたわ。ヒロインとわたくしのステータスもありましたの。エンドロールの最後の日は皆様とお友達の証が満杯でしたわ!」
モブ、やりきりました。
誉めて誉めてと言わんばかりの笑顔を浮かべたフランチェスカ。
「はいはい、えらいえらい。フランチェスカ、これから貴女ありで第2ディスクがはじまるのよ。モブだけど、モブじゃないの。明日から、頑張りましょうねフランチェスカ。貴女は攻略対象よ」
「ええええええええ!?」
フランチェスカはモブなのにっモブじゃなかった。
これからフランチェスカの物語がはじまる。
書けたら連載したいな