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サイハテノハテ  作者: そるとん
-序章-
7/9

-夢の続き-


「死ぬのはお前だ」


月の光に反射した剣が振り下ろされ、ディルの背中から血飛沫があがる。


「なんで……お前!」


その場に倒れ込むディルを踏みつけたのは


「ユアン……!」


「遅くなりました」


息を切らしいくつもの傷を負ったユアンは手についた血を服で拭い、座り込むナスカに手を差し伸べる。


「……ありがとう」


手を取り立ち上がると、足下のディルが元気に喚き出した。


「クソッ!こんな事してあの方が許すと思うなよ!」


「……ナスカ様は向こう見て耳を塞いでいてください。煩い口を塞ぐので」


何をするのか分かりすぐさま言う通りにするナスカを確認して、ユアンは剣先をディルの足に突き立てる。


「何するつもりだ!?」


「背だけでは足りないみたいだから、足も念のためやっておこう。」


「や、やめろ!!」


表情も変えず突き立てた剣で素早く掻っ切ると、血飛沫と悲鳴があがる。放っておけば多量出血で死に至る。


「ぐ、うあ……!この化物め!!」


「聞き飽きた言葉だな」


過去に言われた事のある中傷の言葉に鼻で笑う。呻き声を出すだけで話さなくなったディルに背を向け、ナスカの肩に手を置く。


「もう大丈夫ですから。行きましょう」


ナスカは力なく頷き、暗い暗い森を進む。


「どうしますか?城に戻ると危ないかもしれませんが暫くどこかに身を隠すか、それとも」


「……僕に考えがあるんだ。ついてきて」


「え?」


「さっき言ったと思うけど……実は少し前から知っていたんだ、この城で起こる事を。」


俯きながらポツポツと話始める。


「あの男が他の仲間みたいな人と魔女の話してるのを聞いて、今日が王城を乗っ取る作戦の決行日だった。それでたぶんその魔女が、お母様に取り憑いているんじゃないかと思う。」


「王妃様が魔女に……。もしかしてそれは先ほど言おうとしていた、伝えなければいけないこと、ですか。」


「うん、タイミング悪くて言えなかったけど。」


「最近は王妃様の出掛ける日が少なくて、中々お話できませんでしたからね。」



城の騒ぎとは打って変わって不気味なほど静かな夜道は、2人とフクロウの声だけが聞こえる。


「それでね、準備した物があるんだ。」


「準備?」


「この先に小舟がある。」


「は、小舟?」


「話を聞いてからずっと考えてて……どうせ殺されるなら、危険でもいいから旅に出たい。そう思って夜中窓から抜け出して、港の船をね。」


気まずそうに話すナスカだが、どこか誇らしげだ。ユアンは言葉を失い、しばらくの間沈黙が続く。


確かにあの場に残っていれば確実に殺されていたし、国外に逃げるのはいい考えかもしれない。だがこれから2人だけで、生き残れるのか?私の力でナスカ様を守ることが出来るのか?


そんなことを考えているとユアンは途端に不安になり、血濡れた拳をギュウと握りしめる。


森を抜け、海辺へたどり着いた。言われた通り、そこには一隻の小舟がある。

ナスカは振り向いて微笑む。夜に浮かぶ月が背景で、まるで一枚の絵だ。


「どうせ見つかったら僕もユアンも殺される。


連れて行ってよ。あの最果ての"果て"まで。」


その台詞めいた言葉でユアンの頭には一匹の猫が浮かぶ。夢の中で幾度となく会った、言葉を話す猫。


「えっと今のは、僕の好きな本の台詞で……」


「……危険です。もしかすると、今日よりもっと残酷で辛いことが起こるかもしれません。」


照れ臭そうに笑うナスカとは対照的に、ユアンは神妙な面持ちで目を合わせる。


「うん、わかってるつもり。でも今の城へは帰れないから、強くなって、お母様に取り憑いた魔女を倒さなきゃ。」


14歳の少年とは思えない決心に、ユアンを力強く頷いた。


「わかりました。」


「いいの?」


「私だって国王陛下や王妃には大変お世話になりましたから、放ってはおけません。それに」


ユアンは振り返り、ディルの倒れている森を見据え、剣を交えた時の会話を思い出した。



「お前の母親、光の魔法を使ってたっけな」


「……何故それをお前が知ってる?」


「なんでだと思う?」


「まさ、か」


「はははは!"光翼の魔女"が事故で死んだと思っていたのか?お前らは2人ともお気楽だな!」


ユアンの母が、死んだのは事故ではないと言って笑うディル。今回の事件の事と何か関係があるに違いないと確信したユアンは、それを突き止めて必ず母の無念を晴らし、プレア王妃も救うことを心に決めた。



「私も目的は同じですから」


迷いのない眼差しを見て、ナスカは嬉しそうにユアンの手を取る。


「僕たちはこれから、仲間だよ!」


「はい、ナスカ様」


「まずはその言葉遣いやめて!」


「……わかった。行こう、ナスカ」



そうして2人は小舟に乗り込み、真っ黒な海の上をひたすら進んだ。


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