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サイハテノハテ  作者: そるとん
-序章-
5/9

-逃亡-



「あいつだ、史上最年少で騎士になったとからいう……」


「女?嘘だろ」


「年上のオレたちが稽古つけてやろうぜ!」



1人の少女を取り囲み、男たち数人が木の剣を振るう。それでも少女には勝てず、いつも返り討ちにされていた。

化物だ、悪魔だ、などと罵られ少女は孤独だった。


しかし国王陛下と王妃だけは彼女に優しかった。



「ひどい怪我!こちらへいらっしゃい。」


「王妃殿下、一介の騎士などにはお構いなく」


「なりません。貴方も私の民なのですから。」


王妃は優しく傷の手当てをして、気まずそうに俯く少女の頭を撫でた。


「群れを成す生き物たちには必ず抗争が起きるものよ。でもそれを諦めて受け入れてはいけないわ。」


「理由もなく抗争が始まる訳ではないでしょう?私に何か原因があるのです、きっと」


「いいえ、それは違う。

貴方に酷い事をする人は、本当は貴方が素晴らしい人と知っている人なの。貴方に嫉妬しているのよ。」


「嫉妬……」


「自分が悪いと決めつけて自分を責めてしまうのは、とても悲しい事よ。貴方だけは自分を信じてあげて。」


「……ありがとうございます」



恥ずかしそうにお礼を呟く少女を王妃は抱きしめた。



「王妃……殿下……」



王妃を呼んだ瞬間ハッとなり目を覚ますと、天井が真っ赤に染まっている。血かと疑うほどの紅。だが違う。むせ返るほどの熱気と煙にすぐに火なのだと理解し飛び起きた。


「クソ!起きやがった!」


「さっさとガキの方を始末しろ!」



「ユアン!逃げて!」


背中に走る激痛。そんなことよりも目の前で起きている出来事に動揺する暇もなく、ナスカに刃を向ける騎士を蹴り飛ばす。



「ぐあっ!」


「寝起きのくせになんて力だ……!応援呼んでこい!」


立ち込める炎の中大声で叫ぶ騎士に隙が生まれ、一瞬でユアンの拳が顎にクリーンヒット。剣を奪い、応援に来てしまった騎士と睨み合う。


「まだ殺してなかったのか!?女子供に時間を食うな!かかれ!!」


ユアンは冷静に状況を見る。正面と左は一撃で仕留められるが、右奥の男は完全にナスカ狙い。


「(間に合え……!)」


「我に仇成す者を貫け!"ホーリーランス"!」



右隣で聞こえた声は間違えるはずがないナスカのもの。宙に光の槍が3本現れ、真っ直ぐに騎士の心臓を貫いた。


「早く!」


ナスカは呆然と立ち尽くすユアンの手を掴み、部屋を出て走り出す。


「ナスカ様、今のは!?」


「気にしてる場合じゃないよ!」


先ほどの光は確実に魔法。それも見たこともない強い魔法。ユアンはそれをナスカが発動させた事実に動揺してはいるが、持ち直してナスカを抱え上げた。


「僕走れるよ!」


「こっちの方が早いです!出口に向かいますから道の指示お願いできますか?」


「ダメ、たぶん出口には人がいる!地下を通って行こう!」


「地下?」


「説明は後でするから、とりあえずこのまま進んで突き当たりを右!」


ユアンは言われた通りに走り続け、やっとその地下の扉があるとされる図書室へ辿り着く。


「ゲホ、ゲホッ!」


「大丈夫ですか!」


少し煙を吸ったのか咳き込み始めたナスカに焦り、急いで部屋の中にある扉を探すがどこにもない。


「三段……め、黒っぽいやつの、ゲホゲホッ!金の猫……!」


そのヒントで何か仕掛けがあるのだとわかり、全棚の三段目を見て調べる。


「金の猫!ありました!」


黒い布で出来た表紙に、金色の猫が小さく刺繍されている珍しい本を見つけて伝えるが、限界なのか苦しくて話せなくなっているナスカ。

ユアンはとりあえず思いつきでその本を棚の奥に押してみた。


カチッ


同時に何かが押し込まれた音がして、そのまま本棚ごと動き始める。


「開いた!」


倒れたナスカを抱きかかえ、開いたその奥の地下へ入り込んだ。人が入ったことを検知したのか扉は勝手に閉まっていくが、閉まりきるのを見ている暇もなく階段を飛ぶように降りていくユアン。


「ぷはぁっ!」


階段の一番下へ辿り着くと、抱えていたナスカが突然思いっきり息を吐き出す。


「よかった……生きてる」


「はぁ、はぁ、息、止めてただけ……」



2人は息荒くも微妙に灯りのついた道を進み、丸い大きな扉に辿り着く。


「ここから外へ?」


「地下水道だよ。」


「さっきから思っていたんですが、何故こんなことを知っているのですか?」


「それは」


ナスカが答えようとしたその時、冷静になりつつあるユアンが何者かの気配に気がつき、手に持っていた剣を構える。


「ナスカ様、危険なので少し離れてください」


「う、うん」


薄暗い空間から出てきたのは、何度か顔を合わせたことのある人物だった。

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