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ジルのオススメ

 それから一週間ほどが過ぎる。俺の狙い通り、このダンジョンに関しては解放した冒険者によって話が広がったようで、一日に数パーティーの冒険者が訪れるようになった。


 こうなってくるとマナの増え方も安定してくるので、そろそろダンジョンの一段階目の改築を行っても良さそうだ。というよりさすがに三部屋しかない状態ではあまり工夫の余地もないので、さっさとダンジョンを広げて遊べる要素を増やしたい。


「ダンジョンの改築ですね。確かにマナの余裕も出来ましたし、ちょうどいいタイミングだと思います」


 ジルに相談したところ、そんな感じでお墨付きを貰えたので俺はさっそくダンジョンコアの機能でパネルからダンジョンの改築を選択する。


 ちなみに今貯まっているマナは3000と少し。一段階目の改築には1500ほど消費する。


 ダンジョンを改築して大きくすればマナの産出量も増えるので、早い段階で大きくした方が収入面では美味しかったりはする。ただしその分人間たちからの警戒度が上昇してしまうので、今より強い冒険者や傭兵、騎士といった侵入者がやってくる可能性も出てくる。


 とはいえ一段階目の改築ではそこまで大きく状況が変わることはないはずだし、仮に強い侵入者がやってきたとしてもしばらくはゴブリン部隊で充分に対処できる見通しだ。


「アレス様、ダンジョンの改築が完了いたしました。これによりダンジョン内の部屋数は十部屋となり、入口からダンジョンコアまでの距離も遠くなったため今までより安全になりました」

「ああ、ありがとう」


 しばらくするとジルからそんな報告を受ける。部屋数は十部屋になり、より多くの魔物部隊や罠、施設などが設置できるようになった。


 俺はさっそくパネルを操作して、宝物庫の施設を作ることにする。


「宝物庫、ですか? あまり防衛には寄与しない施設なので優先度はあまり高くないように思いますが」

「ああ、確かにジルの言う通りだ。ただ宝物庫があれば冒険者たちが落としたアイテムや装備を貯めこむことが出来るのと、ダンジョン内に宝箱を設置できるようになる。宝箱を設置すると今以上に多くの冒険者たちを呼び寄せることが出来るから、マナを今以上に貯めやすくなるというわけだ」


 ちなみに宝箱の中に何を入れるかも自分で選べる。他の冒険者から入手したアイテムや装備でもいいし、マナを使って金銭や財宝を生産してもいい。マナさえあれば食料だろうが財宝だろうが大抵のものは作れるというのがこの世界における魔族の魔法だった。正直便利過ぎる。


 ダンジョン内の部屋の中で、一番奥まった場所にあって侵入者がたどり着きにくそうな場所に宝物庫を設置する。


 ただやはりそれだけでは不安なので、宝物庫を守るためにも新しい部隊が欲しいところだった。


「うーん、どの魔物にするか……」

「それでしたら、こちらの魔物などはいかがでしょうか?」


 パネルで魔物のリストを見ながら悩んでいると、ジルがオススメの魔物を示した。そういえばダンマスの過去作でもそんな風にオススメの魔物が提示されることがあったのを思い出す。


――――――――――

オーク

種族:魔獣族

レベル:1

HP:30

MP:0

攻:20

防:10

速:1

知:1

スキル:【クリティカル】【なぎ払い】【ノックバック】【護衛崩し】

――――――――――


「…………オークかぁ」


 ジルがオススメしてきたオークは高いHPと攻撃力、それなりの防御力を持つパワータイプの魔物だ。一方で速さと知力が最低値という、ある意味で分かりやすい脳筋な性能をしている。


 召喚に必要なマナが70とそこまで多くはない割りには高い攻撃力と耐久力、特にスキル【なぎ払い】での前衛に対する範囲攻撃が魅力的で、確かにジルがオススメしたくなるのも分かる。


 ただほぼ確実に先手を取られる速さなのもあって、活躍させるためには少々扱いに工夫が必要なモンスターでもあった。


 正直に言ってしまうと、あまり強くはない魔物だ。ただせっかくジルがオススメしてくれたのだから、それを生かすように部隊を編制してみるのもいいかも知れない。


「じゃあとりあえずオークと……キャタピラーとハングリースパイダー、あとは――」


 俺はそんな感じでさくっと六体の魔物を召喚して部隊を編制する。


――――――――――

キャタピラー

種族:虫族

レベル:1

HP:10

MP:0

攻:5

防:5

速:3

知:3

スキル:【粘着糸】【麻痺毒】【速度弱体化:2】

――――――――――


――――――――――

ハングリースパイダー

種族:虫族

レベル:1

HP:13

MP:0

攻:10

防:3

速:4

知:6

スキル:【粘着糸】【猛毒】【速度弱体化:4】

――――――――――


――――――――――

ハーピー

種族:魔獣族

レベル:1

HP:9

MP:0

攻:8

防:2

速:8

知:3

スキル:【回り込み】【速度強化:5】

――――――――――


――――――――――

フェアリー

種族:精霊族

レベル:1

HP:6

MP:10

攻:2

防:3

速:7

知:4

スキル:【部隊強化:3】【部隊弱体化:3】【部隊回復】

――――――――――


――――――――――

マタンゴガード

種族:精霊族

レベル:1

HP:11

MP:0

攻:1

防:7

速:3

知:3

スキル:【護衛】【反撃:麻痺毒】

――――――――――


 陣形はマタンゴガード、オーク、ハーピーを前衛。フェアリー、キャタピラー、ハングリースパイダーを後衛に配置した。


 これはオークの速度の低さを補うために、相手の速度を下げたり麻痺させたりといった行動阻害能力を持つ魔物を多く採用した部隊だ。


 【速度弱体化】は相手部隊全員の速度を実数で弱体化させるもので、直接の殴り合いの強さにはほぼ影響はしないが、オークのような鈍足の強いアタッカーの補助には効果的なスキルである。


 オークを使うというコンセプトが先にあったので、魔物を選ぶのはそこまで苦労しなかった。召喚に使ったマナも合計で240程度とかなり抑えられているも嬉しい。


 部隊としての強さやマナの安さはゴブリン部隊には及ばないが、第二部隊としては充分な性能だと言える。


「宝物庫を守る部隊はこれでいいか。あとは他の増えた部屋の罠と施設か」


 ダンジョンを増築した直後はやることが一気に増える。ただやはりこうしてどんなダンジョンを作っていくのか悩んでいる時間が一番の醍醐味だと言えた。


 せっかくなので罠に関してもジルにアドバイスを求めてみる。


 するとジルは火炎放射器などの、大火力で敵を直接殲滅するタイプの罠をオススメしてくれた。確かに火炎放射器なんかは優秀な性能をしているし、ダンジョンの防衛力という意味では間違いのない選択ではあったが、強力過ぎる罠は冒険者からじわじわとマナを搾り取るのには適していない。


 やはりジルはダンマスの過去作の補佐役たちがそうであったように、初心者に分かりやすい直接的な戦果を挙げる魔物や罠をオススメとして提示する傾向があるようだ。


 まあダンマスシリーズを初めてプレイするときなんかは、やれることが多すぎてそういうオススメがないと分かりにくいゲームだったりもするので、初心者救済用のシステムと考えれば選定基準も明解と言えるだろう。


 しかし何というか、見た目はクールで知的な美人秘書といった雰囲気のジルがオークや火炎放射器といった、脳筋ごり押しタイプの魔物や罠をオススメしてくるというのはギャップがあって面白い気がした。


 ゲームをやっていた頃はあまりそういったことを意識したことはなかったが、実際にこうして目の前で動いているキャラクターを見ているとさすがに考えずにはいられない。


 そういえばオークを使おうと決めたのも「せっかくジルがオススメしてくれたのだから」なんて考えだったけれど、ゲームをしていた頃の俺はそんなことを考えたりはせず、いつもオススメを無視して独自にプレイしていたはずだった。


 そんなことを考えながら俺はジルを見る。


「……? アレス様、どうかされましたか?」

「いや、何でもない」


 俺がそう言うと、ジルは小さく微笑みを返した。彼女は元々ゲームのキャラクターだけれど、この世界では間違いなく生きている。


 俺が転生してきたこの世界は、ダンマスの最新作によく似た世界だった。しかし似ているということは、確実にどこかが違うということでもある。


 ゲーマーとしての俺の生き方なら、別に今のままでも構わない。


 しかしもしかしたら俺は、魔界に領地を持つ魔王アレスとしての生き方を、もう少し考えてみる必要があるのかも知れないと、そんなことをふと思ったりするのだった。


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