命名! 『シロ』に決定!!
犬飼山志郎が加わり、僕たちの旅路も目的地がハッキリしてきた。
彼が言うことには
「貴方が『桃太郎』だと名乗るのであれば、私だけでは足りません。
仲間を集める必要がありますね。」
と眼鏡をクイっとしながら、謎のポーズをキメて語りだした。
コイツ一々ポーズがウゼェ。
曰く。
①桃太郎は、犬(自分)、猿、雉、この三名の配下が居なければ、真の実力を発揮することができない。
②犬であり、知将である自分はともかく、残りの『猿』と『雉』は一筋縄ではいかない相手であること。
③場合によっては、こちらの実力を示す必要さえあるかもしれない、かもしれないこと。
※この説明だけで日が暮れてしまったので、その日は温っか寝袋で野宿しながらコイツの長ったらしい説明を子守歌にグッスリと休みました。
・・・
「以上が、桃太郎の全容です!
お分かり頂けたでだろうか?」
またしても、眼鏡クイっをしながら、変なキメポーズで語り終えた犬飼山志郎青年。
「・・・あー、ん?
オハヨウ。」
なんか知らんけど、よく眠れたわぁ・・・。
「とりあえず、残りの仲間を探せばいいんだよね?」
長く答えなくっても、一言でまとめれば十分だろう。
「頭の悪いアナタには、今はそれで十分でしょう。」
見下すように、僕へ軽蔑を込めた冷ややかな眼差しを向けて来る。
「ハァァっ?」
イカン。
屋敷での二人からの悪影響だろうか、僕はつい威嚇の声を上げてしまった。
「いえ、独り言です。」
先程の内容は否定すること無く、サっと視線を反らしてしまった。
コイツめぇ。
いずれ白黒キッチリ躾てやらんといかんようだなぁ?
「それで、残りの猿と雉の居場所は分かってるのかな?」
これまでの遣り取りで、この人とは主従関係でもあるし、駄犬に敬語使うのも馬鹿らしくなっているので、タメ口で良いかと。
「いえ、ただ、この近くに生息しているらしいとの風の噂ならば、耳にしたことがあります。」
風の噂ねぇ・・・。
ソレって一番正確性に欠けてて、頼りにならないヤツだよね。
「とりあえず、鬼ヶ島の近くまで行ってみて、その途中で探すっていうので良いんじゃないかな?」
「そうですね。」
またしても、クイっと眼鏡を上げる。
眼鏡を一々クイっとやんないと会話すら出来んのかいっ!?
そんなこんなで、とりあえずは『鬼ヶ島』方面へ向けて移動することにした。
勿論、旅の途中で残りの『猿』と『雉』も見つけ出せたらラッキーという感じでだけど、動かなきゃ始まらないしね。
犬飼山などは
「『犬も歩けば、棒に当たる。』と言いますから。」
などと、すっかり自分が桃太郎の犬であることにアイデンティティーを確立してしまったようだ。
そういえば、犬飼山って少し長くて呼びにくいな。
犬飼山志郎だから、今後の呼称は「シロ」で良いや。
「ところで、シロ。」
「はいっ!?
あ、私の呼び方ですか、なんか、ちっとも知将と呼ぶにはあまり相応しくない気がしますが・・・。」
「なら、苗字から一文字取って
『イヌ』って呼んで良いですか?」
「『シロ』でお願いします・・・(涙目)」
「この辺って、暴走族とか出んの?」
「へ?」
少し前から甲高い排気音とパラリラ音が、途切れ途切れではあったけど鳴り響いていた気がしたのだけど、段々こちらへ近づいてくる気がするのは、僕だけだろうか?
「あ、あれは・・・っ!?」
地平線の向こう側から土煙を上げて見えてくるシルエットに、シロの目が驚愕に眼鏡の奥で限界まで見開かれた。
こちらもよろしければどうぞ(`・ω・´)ゞ
『妹がヤンデレ過ぎて怖い件について』
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