鬼が島前到着!
タクシー内には、助手席にキジ、後部座席に僕とサオリさん。
トランクルームに駄犬シロ。
運転手は勿論、タクさんだ。
流れるように、スムーズに車を操り、一時間ほどで目的地へ到着してしまった。
「ヘイお待ちっ! 『鬼ヶ島』前でさぁっ!
お代は7,980円でさぁっ!」
ニコニコしながらタクさんが、キジへ手を伸ばす。
「仕方が無い、ココは貸しってことで。」
釣りは要らぬと万札を一枚手渡すと、僕たちは黒塗りのタクシーから降りた。
「わぁ~なんか・・・・ 思ってたのと違う気が・・・・。」
『鬼ヶ島』と聞いたから、ものっすごく怖そうな厳つい島かと想像して来てみたら、なんか普通?
山や岩の形も、尖っていないし、全体的に丸っこい。
看板も出てはいるけど『ようこそ! 鬼ヶ島へ!』なんて、どこの村興し?
って感じのほのぼのしたイラストとか書かれてるし・・・・。
「フッフッフッフフー。
どうやら、ここは知将であるWA・TA・SHI!
の出番のようだなっ!」
あ。
トランクルームで熟睡してたお陰で、なんか無駄にヤル気とか体力回復してしまって、満ちてる感を前面に押し出して来た駄犬が吠えてる。
「ここは表の顔さ。
鬼どもは卑怯なのさ。
人間相手に、如何にもって感じを出していると、誰も近づかないから、表の顔では、すっごく優しそうにして見せるのさ。」
サオリさんが横からスット出て来て言ってしまう。
その後ろで涙目になって、固まる駄犬。
「そうだな。
ここの裏側にある、海からしか出入りできない場所に、本当の顔があるのさ。」
ガーンっと頭を殴られたようなショック顔で、更にワナワナ震える駄犬。
「ワ・・ワタシのセリフを・・・・・(涙
き・・・・貴重な出番を・・・・・」
そ-ゆー出番。
要らないから。
「海かぁ・・・・ クルーザー借りてくれば良かったなぁ・・・・」
「あるヨ。」
「え!?」
キジが無駄に恰好付けて、カードキーを見せびらかす。
まさか、この人クルーザー持ってるのか!?
ヤダ、イケメンっ!
なんで、そう都合よく!?
「ココのハーバーは、昔よく遊んでいたものさ。
近頃は、すっかり鬼どもの棲み処になっちまったみたいだけど、俺たちの遊び場だったのさ。」
ちょっと遠い眼をしながら、感慨深げに語るキジ。
うん。
どっから見ても、茶髪ホストにしか見えない。