気を抜いてはイケナイ世界
雑居ビル最上階には、燦然と輝く別世界が広がっていた。
そこは、僕なんかの塑像を遥かに超えた別世界。
看板に刻まれた店の名を『クィーン&エンペラー』 -セントラルドグマ本店-
そう、異次元とでも表現したら良いだろうか・・・。
戸惑う僕の耳朶を聞きなれない、いや、生まれて初めて聞く言語が飛び交ってくる。
「いらっしゃいませーーーーーっ!!」
「お嬢様ぁーーーーーっ!
お帰りなさいませぇーーーーーーーーーーーーーっ!!」
「旦那様方ぁーーーーっ!!
お帰りなさいませぇーーーーっ!!」
店の入り口には、ズラリとイケメン男子が並び、左右から勢いよく声を掛けて来る。
最初に女性へ向けて片膝ついて挨拶をし、次いで男性客にも丁寧にお辞儀をして見せる事で、差別化と共に礼儀はクリアする。
「こちらへどうぞ。
あ、僕、シンジって言いますゥ。ヨロシクぅーっ!
フゥーーーーーーーっ!!」
「ボカァ、アスカでぇっす。」
「わたくし、イズモと言いますぅーっ!」
「ヤマトでぇっす!」
これが源氏名というヤツかっ!?
女性の手を軽く握り、店の奥にあるコの字型のソファーへと案内しながら、次々と名乗りを上げて座らせる。
「あ。コチラのお店、初めてですかぁ?
そうーですかー そうーですかぁー
どーーーぞ、どーーーぞぉーーーーっ!
ごゆっくりドウゾォーーーーーっ!」
「あ。シャンパンお持ちしましょうかぁ?」
「え、ドンペリいっちゃいますぅ?」
「生ハムメロン追加でお願いしまぁーっすっ!」
ちょっと待て、注文すらしていない物を次々と運んでくるなぁぁぁぁっ!!
「ちょ・・・ちょっと・・・。
ソレ、僕たち注文して無い・・・。」
イケメン男性陣に囲まれて、次から次へと見るからに高級そうなお酒やら食べ物が運ばれてくる。
「あ、そんなにグラスを重ねて!?」
ピラミッドみたいに、磨き上げられて透き通って美しい輝きを放つグラスが見る見る間に積み上げられていく。
「え、ソレをドバドバ注いじゃうのっ!?
え、えええっ!? えぇええええええええっ!!」
何故だっ!?
理解できないっ!!
飲みもしないのに、シャンパンを頂点に積まれたグラスから下の段へと惜しげも無く流し込む。
「ハイ。一番上のグラスは天上から舞い降りて来たようなキミに。」
そう言って、一番上にあったシャンパングラスをイケメンホストがサオリさんへ手渡して来た。
「さぁさぁ、当店自慢のシャンパンタワーお楽しみ頂けましたかぁー!!」
「ささ、旦那様方もどうぞどうぞっ!!」
固まってた僕とシロにもグラスが手渡された。
「さ。お嬢様。
今宵は、月が美しい。
だがしかしっ!キミの瞳と美貌の前では、そんな月でさえ嫉妬のあまり太陽の様に燃え上がることだろうっ!!
お連れ様も羨ましいっ!!
こーんなに美しい女性を二人だけで見つめる特権を、ボクたちにも今宵だけでも構わないっ!
共有させてはいただけないだろうか?
という訳で、キミの瞳と美貌に乾杯ーーーっ!!」
なんだか、訳の分からないけど、なんとなくソレっぽい口上が述べられたかと思ったら、周囲に居たホストたちも次々とグラスを飲み干した。
ここは、僕たちも飲み干さなきゃいけないのかな?
周囲の勢いに乗せられて、ついグラスを空けてしまった。
サオリさんも、クィーっと良い飲みっぷりで、ホストたちも拍手して二杯目を注ぐ。
しかし、ここでサオリさんは意外な行動へ出た。
「フゥ~ アタイは酒苦手なんだ。
シンジ。アンタが代わりに飲みな。」
そう言って、サオリさんが口を付けたグラスをシンジと最初に名乗ったホストへ渡してしまった。
クソ。なんて羨ましいっ!!
「ボクが・・・」
そう言いかけたボクへ、サオリさんは意味深な流し目を送り、パチリとウィンクして見せた。
ナニコレ!?
今夜OKってコトですかぁぁぁぁぁぁっ!?
ナニナニ?
ナニがOKなの!?
ナニしてもイイのっ!?
え?
え?
えええっ!?
一体何の合図ですくわぁぁぁぁぁぁああああっ!?
妄想が拡がり、暴走するボクの頭と胸が、ギュンギュン痛いんですけどっ!?
ついでに、身体のドコカ痛くなっちゃイケナイ場所まで、限界を感じさせる程硬くて痛くなっちゃうんですけどっ!!
あ。可笑しいな?
たった一杯しか飲んで無いハズなのに。
頭がグワングワンする。
目の前がグルグル回る。
アレ・・・・?
えと、行ったことないんで、とゆーか一生行くことも無いと思うんで・・・
かなーり妄想膨らませて書いてます(白目)