桃太郎の初恋 ~『猿』が鬼と戦う動機 ~
「それで、サオリさんはどうしてあんな所で、世紀末覇者のような真似をしていたんですか?」
「そうさね・・・。」
サオリさんが、どこか遠くを見つめる視線を空へ向けると、ポツリポツリと事情を語ってくれた。
サオリさんの説明によると、周辺崩壊集落に見えた人気の無い廃屋ばかりが並ぶこの辺一帯は、元は豊かな土地で、人も沢山住んでいたこと。
ところが、数年前から『鬼ヶ島の鬼たち』がこの辺りまで時々やって来ては、悪さをする影響で、人が住まなくなってしまったこと。
そんな廃墟でも、人間の領域であることを主張したくて、世紀末風コスプレでパトロールをしていたこと。
※何故世紀末風コスなの?
それは、鬼が怖いから。威嚇の意味も込めてたらしい。
そんな感じで、実はアノ恐ろし気なモヒ頭集団『通称:泣く子も黙る渦潮雷団』も、すっごく心の優しい(?)良い人たちの集まりらしい。マジかよ。
「鬼どもめぇ・・・ こんなところまで来て悪さを・・・ 許せん。」
駄犬がメガネクイっをしながら、俯き加減に言った言葉は、ボクも同じ思いだ。
「鬼どもは、人が住めなくなる程の悪逆非道の限りを尽くしたのですか・・・?」
ボクは、どんな蛮行が行われたのか、情報集めの意味でも聞いてみた。
「ああ。酷いもんさ。」
サオリさんは、悲しそうな顔をして、フゥっと溜息を吐くと
「ここら一帯は、かつては温泉街だったのさ。
アタイはそんな由緒ある温泉宿の女将の娘として生まれたんだ。
小さなころから、この辺はアタイの庭みたいなモンだったのさ。
それを・・・・」
昔を思い出したのか、サオリさんの澄んだ左の瞳から、一筋の涙がスゥーっと零れ堕ちた。
「サオリさん・・・・。」
ボクは思わず、彼女の両手を無意識に掴んでしまった。
「わっ。ゴメンなさいっ!!
サオリさんが泣くことが許せなくって、つい・・・。」
慌ててパッと掴んだ手を放してしまった。
「構わないさ。
アタイが女々しいとこ見せちまったのが悪いのさ。」
と、サオリさんはバツが悪そうに気にするなと言ってくれた。
「それより、鬼どもには取り立てなきゃなんねー借りがタンマリとあるんだっ!!
絶対に一匹たりとも許しゃしないよっ!!」
そうか、老舗旅館で暴れられた借りを『鬼退治』という正義の鉄槌を下すことで返すのだな。
なんて逞しくって、素晴らしい魅力的な女性なのだろう。
ボクは生まれて初めて心から女性に魅かれた。
クリスマス?
ナニソレ美味しいの?
ココではそんな俗世間の風習なぞ知らんっ!!
ということで
(*´Д`)o。゜+メリークリスマス+゜。o(´Д`*)