ボケにはツッコミが基本やろ? ~ 謎の美女が同行する理由 ~
「何故、貴女はボクと一緒に来ると?」
謎の美女に一番の疑問をぶつけてみた。
「それはアンタが桃太郎で、アタイが従者になることが決まっていたからさ。」
「ハイ?」
頭にクエスチョンマークが乱舞するボクとは裏腹に、謎のキメポーズをしながら駄犬シロが、メガネクイっをしてここぞとばかりに謎の美女を指差した。
「やはり・・・ 貴女は伝説の選ばれし戦士の一人なのですねっ!?」
これまで空気だったくせに、こんな時ばかり存在感を全開にするなよ。
駄犬が。
「なんだよ! 『選ばれし伝説の戦士』って!!
厨二病かっ!?
すみませんねー この駄犬には後でよーく言って躾ておきますから・・・。」
駄犬を蔑みの目で見つめてから、美女へ視線を向ける。
わぁー 見れば見るほどナイスバディだな・・・。
イカン。視線が特に一か所で釘付けになってしまう。
コホン。
「いいや。気にしなくって良いさ。
『駄犬』と言うからには、その見た目だけで中身は阿保そうな青年がイヌか。
フン。駄犬とはお似合いじゃないか。」
「だ、黙れっ!! 太郎様も太郎様ですよ・・・。
私よりも、こんな後から現れた女の方が良いんですかっ!?」
駄犬シロがヨヨヨと悔し涙を浮かべて、ハンカチの端を齧って見せた。
ナニコレキモチワルイ。
このまんま生ゴミとして、収集所に置いてって良いかな?
良いよね?
「あ、うん。
ボクだって、こんな綺麗な人と一緒に移動する方が嬉しいし?」
ジーっと綺麗なお姉さんの顔を見つめながら、率直な感想を述べてしまった。
「ほう、アタイの良さが分かってんじゃねーか。
自己紹介が遅れたね、アタイは猿ノ渡沙緒莉ってゆーんだ。
サオリって呼んでもらって構わないよ。」
口調は不良っぽいけど、どこか一本真っすぐな線が通ったような人柄が感じられた。
「沙緒莉さん・・・。
名前まで綺麗ですねー。」
頭のてっぺんからつま先まで、失礼にならない程度に見つめてしまった。
「ハッハッハッ。言うねぇー
照れるじゃねーかよ!」
豪快に照れ笑いを浮かべたサオリさんは、スっと真顔に戻ると
「あ、名前で分かったと思うけど、アタイの役割は『猿』だよ。
桃太郎で言やあラスボスって役割さね。」
フフンと鼻高々に告げるサオリさん。
えと、どうツッコンだら良いんだろ?
コレ?
美人だけに、ツッコミにくいんですけど。
てゆーかツッコンだら、ボクの命は大丈夫なのかな?
「フン。何を言いますか。
愚かな猿風情が、知将であるこの、私、犬飼山志郎の存在を超えることなど百年、否。
千年早いですぞっ!!
笑止千万!
片腹痛いとは、正にこのことですな。
ハッハッハッハッハッハッーーーーーーーーーっ!!」
えーっと。
どうして『猿』がラスボスなのかツッコミを入れるタイミングを外したと思ったら、駄犬シロが更なるボケをかましてくれた。
ボケにはツッコミだろっ!?
ボケにボケを返してどーすんだよっ!!
と、ボクは盛大に巨大ハリセンで二人の頭をスパパーンと叩きたい衝動を抑えなければならなかった。