表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

国家人民軍大佐の雑感録

名機関車 C11

 日本の鉄道技術は世界のなかで遅れている方である。でなければ電車列車へ逃げない。客車列車で貫き通せる技術がないから電車列車へ移行したのである。どちらが優れるか、比べるでもない。乗り心地では圧倒的に客車列車である。電車列車は客の足元にモーターがあるために客車列車に比べて乗り心地に劣り、乗客をより疲労させる。電車列車の方が速く出来るという意見があるが、そんなことはない。現にTGVは客車列車としている。そして日本のような鉄輪式から逃げた国とは違い鉄輪式にて574.8km/hを記録している。日本は決して鉄道に関して他国に勝ったことなど一瞬たりともない。


 さて、それはさておき。私には関係ない。なにぶん蒸気機関車以外は全く興味がない。そして日本の蒸気機関車は世界で最低の機械だとも知っているだからどうした。好きならそれでいいじゃないか。


 C11は小輸送に適した小型機関車であるという…

 間違いだ、その認識は。確かに小輸送に適した設計である。と言うかそのために設計された。しかし小型機関車ではない。あれは分類的には「中型旅客用機関車」である。そもそも中型旅客用機関車として設計され、かつ失敗作となったC50のボイラの長さを詰め、それを動輪径的に言うならば5%ほど小さくした足回りに載せたのであるから、まあ当たり前のこととも言える。厳密に言うならそのような設計のC10を軽量化したのがC11である。

 小輸送といっても、本来は都市近郊で快速列車を想定していたそうな。それゆえかは知らんが、原形のC10では、軽荷重の時に95km/hを叩き出したそうな。この形式の速度はカタログデータでは85km/hと記載があるが、それはあくまで目安にしかならん。蒸気機関車の場合はどこまであてに出来るかというと、ねえ?機関士や、機関助士の腕によるのでなんとも言えん。

 ただ、C11に関しては軽量化のし過ぎで、75km/hを越えるとき機関車左右についたサイドタンクと言われる水タンクの動揺が問題になった。仕方ないから左右のサイドタンクを鋼鉄のアーチで繋いだとか。視界を奪うけれども、ないと揺れが大きくなりすぎて乗務員が危険なんだから仕方ない。下り坂、バックで単機回送の際、メータ振り切ったらなんて話もある。メータの上限値が120km/hであるな。誰だ、軽自動車とたいして変わらんなんて言い出した馬鹿は。


 そしてこのC11は、C10もだが、とにかくバック走行に定評がある。蒸気機関車の場合に動輪はどうしてもカーブに弱い。D51なんてのは動輪にある程度左右動を許してフランジを弱めて何とか曲がっているが、つまりはこれだけカーブでは苦労するということである。そのガイドを果たすのが先輪である。C10とC11は一軸である。しかし、炭水車つきの機関車ならともかく、それがつかないタンク機関車ならば、バック走行もそれなりの頻度でなければならない。そしてその時に先輪の役割を果たすのは従輪であり、C10もC11も二軸である。そして二軸のほうが一軸であるよりも安定してカーブが曲がれるのである。だからバック走行のほうが無茶が効くのだとか。視界?気合いで何とかしろ。それが日本の鉄道省クオリティー。まあ、炭水車(テンダ)がついていてもバックのほうが視界がよいと言う人も居るから、その辺はなんとも言えん。


 よくC11は後期型でタンクを下に伸ばしたと言う人が居るが、それは違う。実際のところ、あれはタンクを上に延ばして居る。すると視界が狭くなるから、運転台床の方を嵩上げしてたのである。それゆえに見た目の上では運転台の床とタンクの下端に段差が出来、漫然と見ているならば確かにタンクを下に延ばしたように見える。それは錯覚だ。動輪とタンクのクリヤランスを見てやればその辺よくわかる。


 普通はこのようなタンク機関車はタンク内の水とコールバンカーの石炭を使うと軽くなり、動輪上軸重が減少し、空転しやすくなり牽引力を低下させる。使わないわけには行かないが。しかしこの機関車、水と石炭の重量を殆んど従台車で受けている。満載の時とからの時での動輪上軸重はわずか一トン程度の差である。全体で十四トンもの水と石炭を積んでいるのだから、この一トン程度というのは僅かと言い切ってもよい。

 ついでに言うなれば、脱線のしやすさは輪重・横圧比による。線路に押し付けられる力を横圧、輪重はその車輪にかかる重さである。そして横圧を輪重で除算したものが脱線係数という。だから、バック運転のときには、タンクやコールバンカーが満載の時のほうが脱線しにくい。


 何かと扱いやすい機関車であったことから今でも動態保存しやすいと言う。小さい機関車と言う人も居るが、誰がなんと言おうとも分類上は中型旅客用蒸気機関車(ちいさくはない)である。

日本の鉄道が電車に特化し、かつ他国と異なり貨物需要が旅客需要を下回った理由に江戸時代の道路事情がある。


家康が江戸に攻め込ませないために大井川などに橋を架けなかったのは有名であるが、街道の整備でも車両の使用に耐えないようにしていたのはあまり知られていない。


そしてその道路事情によって、他国は都市と都市の間隔は馬車による移動距離であったのに比して日本の場合それは徒歩で想定されたごく近くに都市が集中することになった。

 厳密には徒歩と馬匹では一日の移動距離はたいして変わらないが、それだけ道路事情が悪かったと考えてもらって構わない。

 よって鉄道駅間は短くなる。だからこそ頻繁に加減速を行うことになる。加減速は電車のほうがレスポンスに優れる。だからこそ日本の鉄道は電車に特化した。


 そして鉄道貨物の利点は長距離大量輸送である。しかし先程から言う通り、日本の場合都市と都市の間は短い。短いなら鉄道よりも自動車のほうが小回りが効く分効率がよい。だから、他国と異なり貨物需要が少ないのである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ