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悪魔の槌VS序列四位の剣③

 トンが“悪魔の槌”を駆り≪リ・セイバー≫となることを、当然ながら反対する真教幹部もいた。


反乱の最中、真教関連施設を破壊して回った“悪魔の槌”を即刻地の底に埋めたいと主張する強硬な勢力も存在したのだ。そして数多のせめぎ合いの中出された折衷案が……。


 トン・ビロードビレッジを≪リ・セイバー≫として任じると同時に、“悪魔の槌”を所持し続ける科を

責め、≪ドレイグ≫に指定する。



 急追する大剣。それに、トンはベルグハンマーをぶち当てる。


 刃と槌がせめぎ合い、突風が巻き起こった。


「おらどうした……パワーが足りねえぞッッ!!」


 トンがハンマーを振るい、アランの<バランエッジ>を弾く。

 トンの猛攻が始まった。



「ラァァァァァァァァァ!」



 その槌が繰り出す連撃は、序列四位の≪リ・セイバー≫に全く反撃を許さなかった。


「ドラ!オラ!ウラァァァァァァァァァァァァ!」


 それにしても、さっきから“キーン”と、耳鳴りのような音が鳴る。これはなんだ。しかし気にかけている余裕はない。


 もう何度槌と刃が激突したか分からないタイミングで、トンは槌が伝える衝撃と共に地面から足を浮かせた。トンが中空でハンマーを振り下ろし、アランが地面でそれを受ける。 


「……おい、さっきから防戦一方だぜ」


「むしろ誉めてもらいたいものだな。君の“悪魔の槌”に対してここまで持ちこたえているのだから

な……!」


ベルグハンマーが“悪魔の槌”と呼ばれる所以は、その圧倒的な破壊力でこの国を蹂躙したことにある。



 実際に使われたのはガロンの名を騙ったゼキムが使用した試作品だが、それだけでも各地の建造物を一撃で粉微塵にしており、そこらの武器では攻撃を受けることすらできないのだ。


「特A級の≪ドレイグ≫に誉められて喜んでちゃ、“聖騎士”様の名が泣くぜ」


「なるほど。誉められるべきは君の方だったな。この私相手に、ここまでついて来られたことを!」


 直後にぐん、とトンが握る槌を押し上げる力が強くなった。


「わが剣の冴えをその身で味わえ……!」


 剣と槌が離れたかと思うと、すぐに幾重もの剣撃がトンを襲った。


 アランは防戦から反撃へ転じた。鋭く唸る剣閃が、トンの槌を押し返していた。今度は、トンが防御に回る番だった。

 

 正直に言って、剣の速度は先ほどから大きな変化はない。しかし明らかに剣の威力が増している。


 何十合と撃ち合う最中、トンは<バランエッジ>の刀身に注視する。やはりだ。ベルグハンマーとの激突で刃毀れがかなりある。それなのに攻撃力が上がっているのはなぜだ?


 思考に気をとられ槌を振る手が鈍った。それが付け入られる隙となった。



「ぜえええええええい!!」



 裂帛の気合と共に放たれたアランの大上段・袈裟斬り・逆袈裟の三連が、トンの体を吹き飛ばした。

 地面を二、三転がり、トンは呻く。


「ぐっ……」


「フン……どうだ?序列四位の剣は」


「てめえ……『天地人』使ってるな」



 『天地人能力スキル』。この世界に生じる異能。他国ではありふれた超能力として扱われるが、この国では真教が昔禁じた黒魔術と同義であると見なされ、真教連によってその発現・行使を厳しく取り締まられていた。


 少なくとも真教連に雇われている≪リ・セイバー≫が使うはずはない力のはずだ。


「フフッ……流石察しがいいな。撃ち合うごとに相手の武器の力を奪う我が天地人能力スキル、『我が糧となれ汝がソウル・アブソーバー』と、

 我が家門に伝わる剣術を融合した、エイワス流一刀術・絶技、『クナイト・デスペラード』。どうだ?自慢の槌を破られた気分は」


 トンは立とうと、脚に力を入れる。しかし、腰を上げた瞬間に、ぐらっと、体が揺れた。


「そうそう。言い忘れていた。我が剣と撃ち合った時、耳鳴りのような音がしなかったか?」


 言われてみれば、確かに甲高い音が耳を打った。あれか……。


「あの音が貴様の耳に宿る三半規管の機能にほんの少し干渉したのだ。

 ……まあ、もう立てなくなっているだろうから、影響は大だがな」


 アランは口の端をにやりと変化させる。先刻までの涼しげな微笑はどこかへ消え失せ、本性が漏れたかのように表情が歪む。


「これが私の第二の能力……『刃鳴りが示す終末の墓標グレイヴ・コード』。さて、講釈はこれで終わりだ」



 地面に蹲るトンに対して、アランがじりじりと歩み寄る。



「そして、君の人生も。さらばだ、トン・ビロードビレッジ」



 アランの手に握られる<バランエッジ>の刃圏が、必殺確定の間合いに入った。



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