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エド・アタラクシア  作者: 笹村 怜哉
3/3

 「私の名はラングといいます。 こちらは娘のアリスです」

 

 アリスと呼ばれた少女は軽く頭を下げる。

 見た感じ、年齢は碧斗達と同じか少し下だろうか。 とても可愛らしく腰ほどまで伸びた長い金髪が綺麗な子だ。 


 「どうも。 俺は長友隆一といいます」 

 「私は赤坂莉緒でーす! よろしくです! あ、こっちの人は大場碧斗で、この子はブランです」


 とりあえず自己紹介をする一行。

 莉緒は言葉が理解出来ていない碧斗と抱えていたブランの紹介もする。

 全く話についていけていない碧斗はいまだキョトンとした顔をしているが。


 「よろしくお願いします。 立ち話もなんですし、とりあえず移動を始めましょうか」


 そう言って、ラングは碧斗達に馬車へ乗るよう促す。

 

 「なんて言ってるんだ?」


 碧斗が説明を求めて莉緒に話しかける。


 「移動するから馬車に乗れってさ」


 言いながら、莉緒は馬車へと歩いて行く。

 慌てて碧斗もそれに続く。

 馬車を見ると、すでに隆一が乗り込んでいた。

 中に乗り込んでみると、そこには木箱や麻袋などがちらほらと置いてあった。


 「狭いところですが、どうぞごゆっくり。 あと半日もあれば町に着きますので」


 ラングは碧斗達が馬車へ乗り込んだことを確認すると、布1枚で隔たれた運転席の方へ乗る。

 前は1人しか乗れないらしく、アリスは碧斗達と同じく荷台に乗り込んだ。

 この荷台は周りを布で覆っているタイプで、心地よい風が時々吹き込んでくる。部活に加え、だいぶ歩いて来た碧斗達は、久しぶりの影の中での休憩に心の中で歓喜した。







    ※    ※    ※    ※







 「…ん、んぁ」


 しばらく馬車に揺られているうちに、碧斗は睡魔に襲われ、為す術無く寝入ってしまっていた。

 目を覚まし、欠伸を1つこぼしながら周囲を見渡す。

 すると、隆一とアリスが楽しそうに話しており、それを莉緒が少しむっとした表情で見ている、という、碧斗にとっては見慣れた光景が広がっていた。


 「またか」

 「あ、碧斗おはよ」


 碧斗が起きたことに気付いた莉緒が声をかける。


 「おはよ。 隆一のやつ、また天然ジゴロ発動したのか」


 莉緒に挨拶を返して、隆一とアリスの方へ視線を移す。

 少し不機嫌な莉緒とは反対に、碧斗はニヤニヤしながら隆一達を見る。


 「そうなの。 隆一はどこに行っても隆一だってことね。 碧斗、ニヤニヤしてないでいつもの頼める?」

 「……了解です、姉御」

 「姉御言うな!」


 碧斗は莉緒にしっかりと頷いた。




 「いつもの」というのは、度々隆一に惚れている、あるいは惚れかけている相手と隆一が2人っきりでとても楽しそうに話している時に、その間に碧斗が入り、2人っきりという状況を打破する、というものだ。 

 ここまでくれば誰でも分かるだろうが、莉緒は隆一に惚れている。

 そして、碧斗は莉緒の気持ちを知ってから莉緒の応援をしようと決めていた。 隆一のことが好きなほかの女子達には悪いと思いながらも、やはり幼馴染の恋を応援したかったのだろう。


 「隆一君、ちょっといいかね」

 「ん? ああ、起きてたのか。 おはよ」


 碧斗は早速行動に移し、隆一とアリスの間に入っていく。

 アリスはやや困惑したような表情を浮かべるが、碧斗は構わずに隆一へ向かいなおす。

 隆一は何も気にしていない様子で碧斗に挨拶をした。

 「この反応… やっぱり隆一は無自覚か」と思いながら碧斗は隆一に挨拶を返す。


 「おう、おはよ。 なんだもう仲良くなったのか? 相変わらず手が早いことで」

 「そんなんじゃない。 アリスにお前の言葉が通じてないからいいものを、誤解を招く言い方はやめてくれ」

 「へいへい」


 隆一に注意され、碧斗は素直に返事をする。


 「で? 何話してたんだよ。 俺も入れて」


 アリスを横目に見ながら碧斗は隆一にお願いする。


 「別に構わないけど、碧斗はアリスの言葉がまだ分からないんだろう? 話についてこれるのか?」

 「ん、それもそうだな…」


 隆一に指摘され、今更ながら碧斗は自分がこの世界の言語を理解出来ていないことを思い出す。

 どうするか悩んでいると、隆一とアリスの2人きりという状況が打破され、多少機嫌が直ったらしい莉緒がやってきた。

 莉緒は今の会話を聞いていたようで、とある提案をする。


 「分からないなら、分かるようになればいいんじゃない? 私達も教えるし、町に着くまでにはなんとかなるでしょ、碧斗なら」


 さも当然のことのように言いのけたその言葉に、碧斗が来てからは黙っていたアリスが反応した。


 「そんなことはほぼ不可能ではないですか? 私もその方の使っている言葉は理解出来ませんし、たった数時間程度で覚えられるものではないと思いますが…」


 莉緒の発言で碧斗との会話を予想したらしいアリスは、碧斗へのその要求は叶えることの出来ない無理難題だと思ったのだろう。

 しかし、隆一と莉緒は顔を見合わせたかと思うと、微笑を浮かべた。

 アリスはそんな2人を訝しむように見る。


 「確かにアリスの言う通り、普通なら無理だろう。 1つの言語をたった数時間で覚えることは不可能に近い」

 「ならばなぜ莉緒はそんなことを言ったのですか? 冗談、という感じではないように見えましたが」


 尚更疑問だ、と言うようにアリスは隆一に聞き返す。

 すると隆一は碧斗の肩に手を置き、アリスに言った。


 「碧斗は学習能力がとんでもなく高いんだ。 いや、学習能力というよりも記憶力と言った方が適当だな。 完全記憶とまではいかないが、それに近い能力を持っている。 1年前の夕食くらいなら思い出せるそうだ」

 「いや、それは盛り過ぎ。 さすがにそこまでは覚えてねえって。 俺が覚えてるのは、あくまで俺自身が意識して覚えたことだけだよ」


 碧斗の言葉が分からないアリスは、当然隆一の言ったことしか聞き取れない。 そのため、隆一が盛った話しか理解出来ていなかった。


 「そんなことが可能なんですか…?」


 まだ信じられないという顔のアリスを見て、莉緒は笑った。


 「そりゃ、いきなりそんなこと言われたって信じる人は少ないわよね~。 ま、そのうち信じざるを得なくなるわよ」



 そうして、隆一と莉緒による異世界語の授業が行われたのであった。

 ここまで読んでくださってありがとうございます!

 テストがあり投稿がだいぶ遅れてしまいましたが、これからは頑張って早く投稿出来たらな、と思います。

 これからも頑張っていく所存ですので、よろしくお願いします!

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