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エド・アタラクシア  作者: 笹村 怜哉
1/3

 初投稿です。 

 拙い文章ではありますが、温かい目で見守ってくださると幸いです。


 甲子園が終わって一週間が経った。


 その日は最高気温が40度まで上がるとの予報が出ていたが、そんなものは関係なく練習は行われる。ただ、夏休み最終日ということもあって午前中で練習が終わり、ほとんどの星ノ原高校の野球部員は帰路についた。夏休み最大の敵である大量の宿題を写し終えるために。


 大場碧斗と長友隆一、そしてマネージャーの赤坂莉緒もまた宿題を終わらせるため、練習着からジャージに着替え、三人の中で唯一宿題が終わっている隆一の家へ向かっていた。碧斗と莉緒は生まれた頃からの幼馴染で、隆一は中学から碧斗と仲が良くなり自然と三人でいることが増えた。今ではすっかり自他ともに認める仲良し三人組だ。


 「てか、お前いつの間に宿題とかしてたんだ?」


 碧斗はふと浮かんだ隆一への疑問を口にした。


 「ついこの間まで甲子園行ってたのに、よく宿題なんてする時間があったな」


 そう、碧斗達の所属する星ノ原高校野球部は甲子園に出場していたのだ。結果はベスト8どまりであったが、今まで星ノ原高校の野球部は全くの無名校だったのでTVなどでだいぶ取り上げられもした。

 そんな中で碧斗と隆一は一年生ながらもレギュラーとして試合に出ていた。なのでほぼ同じ状況であったにもかかわらず自分より遥かに宿題が進んでいる隆一が不思議だったのだ。


 「八月に入る前にだいたいは終わらせといたんだよ。 八月は甲子園で時間が無いのは分かってたことなんだから」


 「出た! 隆一の真面目発言! ほんっと隆一ってば真面目だよね~」


 隆一の真面目な発言に莉緒が笑いながら反応する。少し馬鹿にしたような莉緒の態度に隆一がむっとした表情になり、それを見て碧斗も笑う。


 そんなありふれた会話を交わしながら長友家へ向かう途中、不意に地面から飛び出た影が背後から碧斗達を包み込んだ。影は碧斗達を完全に包み込み、地面へと戻って行く。


 まるで最初から誰もいなかったかのようにその場から碧斗達は忽然と消えた。





 

 

 次の瞬間、碧斗達の眼前には草原が広がっていた。結構な田舎である碧斗達の地元でもなかなか見ることの出来ないほどの壮大な草原である。


 「な、なんだ…? 何が起こったんだ…?」


 碧斗は突然現れた見たことも無い景色に驚きと混乱を含んだ声を上げる。

 

 「えっと……なにこれ…?」


 莉緒も碧斗と同じく、混乱した様子だ。それも当然だろう。いきなり目の前の景色ががらりと変われば普通ならば混乱する。

 しかし、別段驚いたり、混乱したりといった様子のない隆一が、ふと何かに気づいた。


 「…何かこっちに向かってきてる」


 隆一が指を指し、碧斗と莉緒は隆一の示す方向に目を向ける。

 すると、碧斗達もこちらにものすごいスピードで向かってくる何かに気づいた。


 「何だろう、あれ?」


 莉緒は目を凝らしその何かを見る。


 「ウサギ、か? でもそれにしては大きい気がするし、額に角が生えてるな」


 目が良い碧斗はなんとかその姿を捉えることが出来た。

 ウサギより体が大きく、額から角を生やしている。そう聞いて莉緒はある動物を思い浮かべた。いや、それを動物という括りで捉えていいのかは分からないが。

 ゲーム好きの莉緒はそのような容姿の生き物に心当たりがあったのだ。


 「ねえ… あれってさ… もしかしてアルミラージなんじゃない…?」


 恐る恐るという風に莉緒が言う。


 「それってゲームとかに出てくるやつだよな? そんなの現実に存在するのかよ!?」


 莉緒ほどではないにしろ、ゲームをそこそこやってきた碧斗は目を見開き、驚愕する。

 碧斗と莉緒が慌てふためく中、隆一だけは冷静にこの場における状況を分析していた。

 自分達のいた日本ではまず見ることの出来ない広大な草原。空を見上げると月らしき赤と緑のものが二つ。極め付けは今こちらに向かってきている異形の生物。


 「そうか、異世界旅行してるのか、俺達」


 隆一はどこか納得したという声音でつぶやく。


 「お前バカなの!? この状況でよくそんなこと言ってられるな!? このままじゃ俺達はあいつの角で串刺しにされるかもしれないんだぞ!? 分かってんの!?」


 「隆一がここまでバカだったとは思ってなかったよ! このバカ!」


 完全に冷静さを失った碧斗と莉緒は隆一を非難する。

 しかし、隆一はあまり気にした様子もなく、すでに50メートルほどまで距離を詰めていたアルミラージを見てこう言った。


 「大丈夫だろ。 だってあいつ、リキに似てるし」


 リキとは隆一が飼っている犬の名前である。


 「そんなの大丈夫な理由になってねぇよ!」


 碧斗が力の限り叫ぶ。


 そんなやり取りをしている間にアルミラージがすぐ側まで接近していた。


 「くそっ!」


 碧斗が莉緒を守ろうとして前に出る。

 しかしアルミラージは隆一へと一直線に跳びかかり、隆一は両手を広げ、受け入れ態勢に入っている。碧斗は隆一を突き飛ばして助けようとするも間に合う距離ではなく、莉緒は顔を手で覆った。

 二人が諦めかける中、隆一は自分の胸に跳び込んできたアルミラージを抱きかかえた。するとまるで人間に馴れたペットの様に目を細めて、隆一に身を任せている。


 アルミラージを抱きかかえ、頭を撫でている隆一を見て、碧斗達が目を丸くしたことは言うまでもないだろう。

 ここまで読んでくださって、ありがとうございます!

 また近いうちに投稿させてもらうので、よろしければまた読んでみてください!


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