天使の涙
僕は今朝、一人の見知らぬ少女に出会った。早朝、まだ薄暗いロンドンの郊外。湖のある大きな公園に出かけた。特に手入れのされていない、だだっ広い草原だけが広がっていた。
キラリ キラリ
雲の上で 何かが光っている
真っ白な 雲の中に 一部だけ
どんより 灰色の 雲がある
ポツリ ポツリ
宝石の欠片が 落ちてきた
緑の原っぱ 一面に
キラリ キラリ と輝く 雫たち
ひんやり 冷たい 雫たち
仲間はずれの雲から溢れ出た 宝石たち
誰にも拾われない 孤独な 宝石たち
ただただ 広い野原の中で 露と消えていく...
湖のほとりに、少女はいた。薄いクリーム色の髪とウサギのように赤い目。声を掛けるべきか、迷った。しかし僕は、ぼんやりと水面に映る彼女の顔を眺めていただけだった。ゆらゆらと揺れる水面。葉っぱが一枚浮かんでいるだけで、音はしなかった。静かに、時間だけが流れていった。どれくらい立ちつくしていたのだろうか。気が付いた時にはそこに、少女の姿はなかった。起きがけの太陽が水面を優しく、そして眩しいくらいに照らしていた。
キラリ キラリ と 七色に