私の友達
「今日、遅刻したと聞いたのですがどうかしたのですか?」
昼休み、晴れている日限定で私達は屋上でおべんとうをたべることにしている。
「わかったこと聞かない。咲夜が幽霊に絡まれてたのよ」
「やっぱりですか。私より先に家を出たはずなのに学校に着いてないと聞いたときは心配したんですよ?」
「それはどうも」
さっきから紅葉と話しているのは十七夜昤。私の後輩であり、紅葉の従姉妹。紅葉は彼女の家に居候している。
昤ちゃんは小さな体と長い黒髪で、正直なところ小学生高学年で通りそうな体型だ。
これは余談だけど、彼女達にも幽霊は見えているらしい。もしかしたら、見えるのは彼女たちの家系なのかもしれない。
「それで、咲夜さん。大丈夫だったのですか?」
「うん。心配してくれてありがと。なんともないよ」
「それならよかったです」
昤ちゃんはホッと胸をなでおろす。その仕草は小動物のようで、とても可愛い。
「そういえば、咲夜。今日生徒会じゃなかった? 行かなくていいの?」
「うん。ホントは昼休みだったんだけど、会長が忙しいらしくて放課後に集まることになったんだよ」
会長は多忙のようで、よく生徒会の活動の時間が変更される。私は部活もやってないし、特に問題はない。
「副会長さんも大変ねぇ。夜遅くならないうちに帰りなよ? 最近変なのも多いし」
「変なの?」
「ニュースには上がってないのですが、最近この街で死者が出てるという噂を聞きました。紅葉がいいたいのは多分そのことでしょう」
紅葉はそういうこと、と頷く。
その噂は私も聞いたことがあった。最近はその話題で持ちきりだった。なんでも、死因は出血多量。その割りに、死体があった場所には血痕が一つもなく、死体の体内の血液が著しく失われているという。この犯人は吸血鬼なのではないか、と冗談でいわれているがら私達にしてみたら冗談というわけにもいかない。私は見たことないのだけど、そういう類の生物はこの世の中に存在している。犯人が吸血鬼だというのを否定できない。
「大丈夫だよ。遅くなっても大通りを通って帰るから」
幽霊は別として、妖怪の類は通常の人間にも見える。彼らは人と関わるのを防ぐから、人の多い場所には現れない。遠回りになるけど、大通りを通って帰れば安全だろう。
「それならいいんだけど」
どうもこの二人は心配症な面があるらしい。なんであれ、私のことを思ってくれているのはとてもありがたいことである。