別れ
……ついに、恐れていたこの日が来てしまった。
僕と彼女が出会ったのは、ある夏の日の商店街でだった。
一目見て彼女に惹かれた僕は、迷わず彼女に手を伸ばした。
それから、僕と彼女は常に一緒だった。
登校するときも、授業中も、お昼も、部活で土をいじっている時も、下校するときも。
ずっとずっと、一緒だった。
彼女に対して理解が無い人は、彼女の事を『ペッタン娘』『平面』『まな板の方がまし』などとあざけったが、それでも僕たちはくじけなかった。
僕たちは様々なところに出かけた。
海にも行った、山にも行った、遊園地や水族館にも行った。
僕たちはいろいろな思い出を作った。
花火大会、盆踊り、栗拾い、紅葉狩り、雪遊び、初詣、お正月、節分、ひな祭り……。
彼女はそれらすべてにいろいろな表情を見せてくれた。
笑った顔、照れた顔、怒った顔、泣きそうな顔、楽しそうな顔……。
それらは全部、僕のためのものだった。
僕達の仲に理解を示してくれる者もいた。
だけど、そいつらはみんな浮気が大好きで不誠実な馬鹿ばかり。
彼女一筋の僕としては、あんな奴らと一緒にしてほしくなんかない。
僕達の仲は永遠だ。
誰にも裂くことはできないし、終わりなんて絶対に訪れない。
そう僕は信じていた。
……だけど、永遠に変わらない物なんか、どこにもなかったんだ。
些細なことから僕たちの関係はぎくしゃくしだして、すれ違いが多くなって行った。
何が悪いかなんてわかりきっている。
彼女が悪いなんてことは決してない。僕があの時、選択肢を選び間違えたのが原因だ。
僕は何とか彼女との関係を修復しようとした。
だけど、何をやっても彼女は戻ってきてはくれなかった。
愛しているよ、と言えば同じことを返してくれた彼女の口元は、固く閉ざされている。
優しく僕を見つめていてくれた目は、悲しそうにゆがめられている。
彼女に対して、僕が何を言おうと耳を貸してくれないし、いくら伸ばしてもこの手は彼女に届かない。
……そうして、僕たちの間には決定的な破局が訪れた。
……こんな世界なんて、もういらない。
彼女のいないこんな世界なんて、もういらない。
だから僕は、リセットボタンを押すことにした。
手に持つ物を操り、このくだらない世界を完膚なきまでに消してしまう。
そして僕は、何もかもが叶う新しい世界へと飛び立つんだ。
そう固く心に決め、僕は彼女と作った今までの思い出を、消した。
さて、それじゃあ新規データで攻略を始めるか。
……まあ、勿論俺が選ぶのは彼女だけだけどね。
他の奴らなんか、彼女の魅力に比べたら全然だね!!
全く、なんであいつらはこの娘の魅力に気が付かないんだ……。
……ふむ、久しぶりに見てみると、このOPもなかなか秀逸だな……。
特にこの校舎まわりの背景とか――
――元園芸部部長 理由崎 倫理の手記より引用。
思いついてしまったのでついついやってしまった。
反省はしている。後悔はしていないが、公開はもうしている。
続きはない。
ちなみにこの人、『新年記念外伝 ぼーい・めっと・おーが! 【前編】』に出てきた園芸部部長さん(愛しのサリーちゃんの人)と同一人物だったりします。
これ以上出てくることはないので、裏設定でしかありませんけど。
また、このお話は以前に活動報告内で出した物をそのまま載せているだけです。
あしからず。