第五話 童帝と雪姫は放課後に喫茶店によっていった
そんなこんなで放課後になりましたー。いやーあのあと特に話すこともなく放課後になって今淡雪と一緒に放課後デート?してますよ!!ちなみに四葉は今日は用事があるらしく先に家に帰った。うっひょー、放課後にクラスの女の子と寄り道なんていう夢にまで見たシチュエーションがまさか自分に起こるとは!!もうこのまま死んでもいいくらいですよ!!…いや、まだダメだ。俺はまだ自分に与えられた不名誉な称号を返上してないじゃないか!!諦めるな俺!!
「…何してるんですか?」
「…あぁ、ちょっと全身で喜びを表現していたところだよ」
「そうでしたか、なんか変なことしてたんで救急車を呼ぶところでした!」
あははは、あぶねー!!一歩間違えれば大惨事だったー!!この子いい子だけどあぶねーよ!!ってかさっきまでの行動全部見られてたのかよ恥ずかしー!!こ、ここは話題を変えて気を紛らわせよう!!
「と、ところでいまどこに向かってるんだ?」
「この前見つけた喫茶店です!!とても美味しいんですよ!!」
「そういえばそんなこと言ってたな。それに飯もまだだし、ちょうどいいな」
それにしてもなんかこの辺見たことあるような…、最近ここをよく通ってる気がするんだよな、なんでだろう?それになんか嫌な予感が…
「あっ、着きましたよ!!」
「へぇ~ここ、が…」
あぁ、嫌な予感が的中してしまった。目の前にあるのは少し古びた小さな喫茶店、入口付近にはカボチャを模した置物が積み重なり壁は蔦が覆っている。立て掛けられた看板には大きく『Pumpkin Magic』と書かれている。なんでよりにもよってここなんだ!?
「ここはですね、カボチャを使った料理がとっても美味しいんですよ!!今は季節じゃないですけど、ケーキとかも美味しいんです!!」
「へー、そーなんだー」
あははは、それはよーーーく知ってますよ。なんだってここは…
「それじゃあ入るですよ!!」
「わっ、ちょっと待てって!!まだ心の準備が…」
淡雪は扉を開いて進んでいく、その白い手で俺を引きづっていきながら。扉を開けるとカランカランとベルの音が鳴り、その音に気づいた店員がこちらを向く。店員が俺を見たとき少し驚いた顔をしたがすぐに面白いおもちゃを見つけた子供のような笑顔になった。
「いらっしゃ~い、何名様ですか?」
「二人です!!」
「かしこまりましたー。…それにしても桜童くん、確かにお客として来るなら女の子と来なさいって言ったけど、いきなり彼女を連れてくるなんて思わなかったわ。なかなかやるわねー」
俺のバイト先だからな!!それにしてもやっぱりおちょくられたよ!!ちょっと、このこのとか言って肘でつつかないでくださいよ!!
「何言ってるんですか?桜童さんは高校生になって初めてできたお友達ですよ。それにしてもお二人さんはお知り合いだったんですか?びっくりしたです」
あはは、そんな無垢な笑顔で否定されたらなんとも言えん気分になるな。勉強になったよちくしょーーー!!これ完璧に脈無しだー!!…まぁ、今日あったばっかだから仕方ないか。これからもずっと仲のいい友達ポジションな気がするけど
「実はこの子ウチでアルバイトしてんのよ。それと桜童くん、ドンマイ!!」
「それって満面の笑みで親指立てて言う台詞じゃないですよね!?」
ひどい!!この人わかってて追い討ちかけてきたよ絶対!!
「まあまあ、二人共落ち着きなさい。それに麻女さん、桜童くんは今はお客様なんですから」
店の奥から出てきたのは、ダンディーなヒゲを生やした壮年の男性。この店の店長である黒山 猫男さんだ。名前通り真っ黒な髪をしているけど全く猫っぽくない。あっ、目はちょっと猫っぽいかも。もちろん好物はカボチャである。
「はーい、店長。ゴメンネ桜童くん」
そう言って両手を合わせてこちらに謝ってくるのは麻女 南さん。橙色の髪は背中にかかるほど長くとてもサラサラしている。ちなみに大学生で、俺よりもだいぶ前からここでバイトしているらしい。
「別にいいですよ、気にしてないですし」
「それにしても桜童さんがここで働いてるなんて知りませんでしたでしゃばっちゃってすいませんです…」
あっ、淡雪がしょんぼりしてる!どどどうしよう!?とりあえず何か言ってあげないと!!
「そういえば俺ってここの料理食べたことないんだよ。お客さんがどんなのをよく頼むかとか知りたいし、今後のためにもよかったらおすすめを教えてくれないか?」
「それに桜童くんがおごってくれるって」
「ちょっと麻女さん!?」
「ホントですか!?じゃあこれとこれと…」
ちょっと麻女さん何言ってんですか!?それに淡雪本気にしちゃってるし、どんだけ頼むんだ!?やばい、今月のお小遣いが…
「わたし、ここの食べ物いっぱい食べてみたかったんです」
あはは、そんなキラキラした目で見られたら断れねぇや。麻女さんも予想外だったのか目を丸くしてるし
「…これはサービスですよ桜童くん、強く生きなさい」
そう言って店長はそっとコーヒーをサービスしてくれた。コーヒーのほろ苦さが今の俺の心情を物語ってるかのようだ、店長の優しさがしみるぜコンチキショウ…
12/24 麻女さんの名前を変更しました