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魔法使い(30歳・♂・独身)の愉快な転生ライフ  作者: 九十九五十六
第二章 魔法少女の小さな大冒険編
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第三十話 少女が歩けば幸運に当たる

「こうして皆で一緒に寄り道して帰るのもいいね」


「まぁ、あんまりしない方がいいと思うけどな」


 隣を歩いている少女、希望ヶ丘 四葉が俺に話しかけてくる。身長は俺よりも頭ひとつ分低く、明るい茶色の髪を四つ葉のくローバーの髪飾りでサイドポニーに括っている。四葉は俺の幼馴染みで昔からよく一緒に遊ぶ仲だ、おっちょこちょいだが運がとても良く、たまに怖くなるほどだ。

 彼女は楽しそうにそう言うが、こんなところを先生に見られたら面倒なことになる気がする。まぁせっかく楽しそうだしあんまり強く言うのはやめておこう。


「別に買い食いをしているわけでもないから大丈夫だと思うよ、買ったのは文房具だしね」


「そうだな、悪いことをしているわけでもないから罰も当たるまい」


 そう言いながら俺たちの後ろを歩いていた男女の二人組、双子の兄妹である源仙 逢魔と紗友は手に提げたビニール袋を持ち上げる。

 逢魔は俺よりも少し身長が高く、細く引き締まった体と甘いマスク、少し長い黒髪と真っ赤な瞳というすこしミステリアスな雰囲気で女子から人気のイケメンだ。けっ

 その妹の紗友は綺麗な黒髪をポニーテールにして括っている。瞳は兄と対象に蒼い色をしており、鋭い目つきで近寄りがたい印象を持つ。その口調とあわせて武士のようなイメージを抱く。

 実はこの二人、俺と同じく別の世界からの転生者だ。かつての世界では逢魔は魔王、紗友は勇者であり、そのことで争うこととなったがなんとか仲直りすることが出来た。

 あれからというもの、俺たち四人は何かと一緒にいることが多くなった。逢魔と紗友の関係も良くなり、四葉とも仲良くなっている。四月ももう終わるという時期になり、今ではこうして一緒により道をして帰るような関係になったんだ。


「そういえば、商店街のくじ引きをもらったけど、引きに行くかい?」


「四回分引けるし、皆で一回ずつ引けるな」


 逢魔と紗友がさっき買ったときにもらったくじ引き券を持って、楽しそうに話していた。

 四葉と逢魔が余計なものを買ったせいか予定より買い物が大きくなってしまい、商店街でやっているくじ引きを四回引けるようになってしまった。正直かわいい消しゴムとかかっこいい魔導書みたいなメモ帳など、どこで使うのかもわからないものをかってどうするんだとは思ったが、別に俺の金でもないし関係ないか。


「えっ、あーどうしよっか善ちゃん?」


 二人に話をふられて、四葉は少し困ったように俺に聞いてきた。四葉は昔から運がいい、いや良すぎるんだ。こういうときは決まって自分の欲しいものを当ててしまうし、それで嫌な思いも何度かしている。だからどうしたらいいか迷ってしまうんだろう。

 正直こいつらなら大丈夫だと思う四葉の強運に頼ろうとはしないだろうし、四葉の運についても知ってるしな。それに一人一回なら変な空気にはならないだろう。


「んー、別に一回くらいはいいんじゃないか?」


「そっ、そうだね。それじゃあせっかくだから皆で引こっか!」


 その言葉を聞くと四葉は安心したのか嬉しそうな顔をした。本人はあまりやりたがらないが、本当はこういう運任せのものが好きなのだ。というよりは皆でわいわいこういうことをするのが好きなんだ。いつもは近くで見ているだけだから、余計に嬉しいのだろう。


「それじゃあ僕から行くよ」


 一番手は逢魔からだ、回す前に気合いを入れてゆっくり回す。前に座ってるおばちゃんにもっと早く回すように言われて早めると、白色の球が出てきた。


「あーポケットティッシュか、まぁこんなものだよね。次は誰が行く?」


「それじゃあ私が行こう」


 逢魔が八等という妥当な結果に終わりガックリしていると、次は紗友がガラガラの前に立つ。

 紗友がガラガラを回すと黄色の球が出てきた。おぉ、これはなかなかではないか。


「むっ、五百円分の商品券か」


「良かったじゃないか紗友、僕のポケットティッシュよりもダントツ使い道がある」


「それじゃあ次は俺だな」


 六等の五百円分の商品券といういいものを手に入れた紗友はほくほく顔でその場をどいた。次は俺の番だ。

 ちょっと気合いを入れてガラガラを回す。こういうときはいいものを狙うよりもポケットティッシュ以外なら何でもいいと考えて回した方がいい。その方が精神ダメージは少ないからな。

 ガラガラの中からは赤色の球が出てきた、これは七等だな。こうも連続で出るとちょっと怖くなるな。


「百円分の商品券かぁ」


「皆運がいいなぁ、こう言うのってだいたいポケットティッシュじゃないのかい?」


「それじゃあ最後は私だね」


 逢魔が嘆くのも仕方が無いが本来はそっちの方が普通だ。

 最後に回すのは四葉だ。いつもの調子でガラガラを回すと、銀色の球が出て来る。これは二等の……


「あっ」


「おめでとうございます!! アルミランドペアチケットです!!」


「やったじゃないか希望ヶ丘さん!」


「すごいぞ希望ヶ丘!」


 逢魔と紗友も喜んでいるが、紗友は少し困ったような顔をしていた。


「そうだね、けどこれだと皆でいけないね……」


「確かにそうだが、君が当てたものだから好きな人と一緒に行ったらいいじゃないか」


 逢魔が四葉にそう聞くが、本人はあまり納得できないのか首を横に振った。こいつはこういうときに色々考えてしまう、それも四葉のいいところだろ思うけどな。


「ううん、やっぱりいい。こういう幸せは皆で分け合った方が私は嬉しいな」


「……そうだね、皆でいける方法を考えようか」


 四葉は自分だけ使うよりも皆で遊ぶほうがいいようだ。こいつにとって幸運は自分に引き寄せられるものだから、こうしてほかの皆と共有したいんだろう。そこで俺から案を出すことにした。


「そうなると皆で半額ずつ出し合うか?」


「じゃんけんで勝ったやつがチケットを使えるという方法もあるぞ」


「あー、それもいいなぁ」


「とりあえずいつ行くか決めようよ! 皆で行くの楽しみだなぁ」


「そうだね、とりあえず今度の大型連休にでも」


「でも混んでないか?」


「それなら……」


 こうして俺たちはアルミランドへ行く予定と、ついでに大型連休の予定を考えながら帰路につくのであった。四月も終わりに近づく下校時間、4つの笑い声とともに楽しそうな話し声がどこまでも続いていった。




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