第二十八話 どこかもわからない場所より
ここはどこかもわからない場所。中央に円卓の置かれた部屋は、真っ黒な壁で覆われていた。黒い壁には白く発光するラインが伸びており、この部屋の唯一の光源になっている。今現在、中央にある円卓には三人の男が椅子に座っていた。部屋が薄暗く容姿はよくわからないが、ひとりは成人男性で、残りの二人はまだ若いように見える。彼らは何かを話すわけでもなく、部屋は静寂に包まれている。そんな静けさを打ち破るように、この部屋唯一の扉が乱雑に開かれた。
「おいお前ら、今のを感じたか!!」
この重苦しい雰囲気に似合わない乱雑な物言いの少年…… いや、少女がズカズカと部屋に入ってくる。学ランを着崩し上着のボタンはすべて開けている。男のような物言いと動きだが、スタイルのいい体と大きな胸が目を引く銀髪の美しい少女だ。しかしその背中には美しい見た目に不釣り合いな無骨な大剣が背負われていた。彼女は円卓までたどり着くと両手を円卓にたたきつける。
少女の言葉に誰も反応しないが、少女は最初からわかっていたかのように言葉を続ける。
「“王”同士の戦いを感じた、ようやく場所がわかったぜ!」
「わかっている、だから俺たちはここにいるんだ」
少女の正面に座る少年が口を開く、幼さの残る声からは想像もつかないほどの圧力が少女を襲う。しかしそんなものはどこ吹く風と少女は口を開く。
「じゃあ一番乗りは俺でいいか? いい加減生ぬるい環境に飽き飽きしてんだ」
「落ち着け、貴様では戦い優先して“目的”を忘れかねん。俺たちは戦うために奴らを探しているのではない」
「でも戦わなきゃいけないだろ? だったらいいじゃねえか」
「その前に目的のものを探す方が先決だ、ジン」
「ハイ」
返事をしたのはこの中で最年長と思われる男だ。黒いサングラスに白いスーツを身にまとい、赤いシャツに黒いネクタイを身につけたその姿はまるで司会者のようだった。
「偵察を頼む、ついでに“アレ”を守るものがいればどれほどかぶつかってこい」
「了解しました、我が主の心の赴くままに」
そう言うとジンと呼ばれた男は暗闇に溶けて消えていった。その様子を少女は残念そうに見ていた。
「独り占めはひどいだろ」
「お前が行けば事が大きくなる。そうすれば“目的”のものを隠されてしまう可能性もある」
「まぁ、それならしかたねえか」
「その代わり、時が来れば存分に暴れさせてやる」
その言葉を聞いた少女は一瞬惚けた顔をしたが、すぐに笑顔の表情を変えた。その笑顔は、綺麗な顔からは想像も出来ないほどに残忍で恐ろしいものであった。