第二話 童帝は思い出の場所にやってきた
「善ちゃんは何か部活に入ったりするの?」
幼馴染である四葉と一緒に歩いて登校していると、四葉がいきなりそんな事をきいてきた。んー部活ねぇ、そういえば全然考えてなかった。あぁでもバイトやってるし、毎朝師匠(近所で道場をやっているハッスル爺さん。俺の祖父さんの親友らしい)に俺の鍛錬に付き合ってもらっているから、あんまり時間が無いから出来そうにもないか。
「今のところバイトとかで色々忙しいからあんまり考えてないな」
「えっ、善ちゃんバイトしてたの!?」
しまった!!そういえば四葉にはバイトのこと話してなかった!!こいつに話すと毎日でもバイト先に来そうだから話さない様にしてたのに…。
「ねえねえ、どんなバイトしてるの?」
やはり聞いてきたか、このままではバイト先の先輩や店長に冷やかされてしまうぞ!!やっぱり好きな人がいる四葉は俺なんかと付き合ってるなんて思われたくないだろうし、何とかしてごまかすか?
「そっそれはだな、えーと…そうだ!!よく駅前とかでティッシュとか配ってるやつだよ!!」
「へえ~そうなんだ~、でもね善ちゃんって嘘つくと耳がぴくぴくするよね?」
それを聞いて思わず耳を両手で塞ぎそうになったが、以前同じ手を喰らった事を思い出してなんとか手を止めることが出来た。
「ふはははは!!残念だったな、俺が二度も同じ手に引っかかると思うなよ!!」
「あははは…、それって嘘ついたって言ってる様なものだよ?」
くそう!!嘘がばれた上に苦笑いされた!!ちくしょう、一体俺はどうすればいいんだ?
「ねえ、結局何のバイトしてるの?って、あ…」
「ん、どうした?ってあぁ、もうここまで来たのか…」
四葉が見ているほうを向くと、そこには懐かしい桜並木の道があった。小学生のころは通学路だったから毎日ここを通って皆でよくここにある公園で遊んだりしてたなぁ。
「なっつかしいなぁ、そういえばここで初めてお前と出会ったんだよな」
「覚えててくれたんだ、なんだか恥ずかしいなぁ~」
そりゃあ始めてあった時に泣いていた理由が理由だったからなぁ、まぁ流石に可哀想だから理由は言わないけど…
「それにここではいろんな奴等と出会ったからなぁ」
しばらく歩くと小さな公園があり、そこには他より一回り大きな桜の木があった。周りが少し狭いこともあってより一層大きく見える。この公園で四葉たちと出会い、学校の帰りにはよくここに立ち寄って遊んだり、休みの日には待ち合わせをしたりしたなぁ。
「そういえば、今頃皆はどうしているかなぁ~?」
「あのリア充野郎は今頃修行先でフラグ立てまくってるだろうし、紅ちゃんは親の仕事の手伝いで忙しくなってからあって無いな」
リア充野郎ってのは師匠の孫で、道場を継ぐために去年の春から世界のどこかで修行中らしい。あの師匠のことだからきっと恐ろしい修行なんだろうけど、あいつのことだから向こうでフラグを乱立してこっちに帰って来たら何人か追いかけてくるに違いない!!まあそれはともかく、始めて会ったのは四葉と会ってから少し後で、たしか幼稚園に入った頃くらいだったかな?最初のほうは喧嘩ばっかしてたけど、いつの間にか仲良くなってた。
紅ちゃんは喧嘩が強くて皆にあだ名を付けるのが好きな燃えるように真っ赤な髪をした女の子だった。ちなみに俺のあだ名は何故かチェリーだった…、正直泣きたくなった。ちなみに昔は俺とリア充と一緒に師匠に鍛えてもらっていた。
「…オジさんは今、どうしてるのかなぁ?」
オジさん、自称永遠の28歳で、始めて会ったときになぜか会ったことがあるように思えたり、一緒に遊んでいると本当に心の底から子どもになったかのように振舞ってしまったりと、不思議な人だった。近所の夏祭りで始めてあって、休みの日はいつも遊んでくれた。俺を含めた皆に好かれていたけど、ある日仕事のせいでしばらく会えないかもしれないけど、皆で一緒に夏祭りに行こうと約束して、姿を消した。今頃どうしているのだろうか…
「さあな、それよりもはやく学校行こうぜ!!初日から遅刻なんて俺は嫌だぞ?」
「え?ちょっとまってよぉ~。って結局バイトの話も聞いてないよ~」
「俺に追いつけたら教えてやるよ!!」
そう言って全速力で走り始める。後ろで四葉がバナナの皮で滑って尻餅をつくなんてベタなことやってたが、見なかったことにしよう。しかし俺はこの時前を見ていなかったことを後悔した。
「いってぇ!!」
滑ってこけて、頭を強打した!!足元を見るとバナナの皮が!?誰だよこんな所でバナナ食ってポイ捨てした奴!!
「…ねえ善ちゃん、まだ時間あるから歩いていこう?」
「ああ、そうだな…」
…すんげぇ恥ずかしいよ!!ほら四葉だってお尻さすりながら顔真っ赤にして俯いてるし!!結局この後気まずい雰囲気のまま一言もしゃべらずに学校まで歩いていった。穴があったら入りたい…