第一話 童帝はいつの間にか高校生になっていた
俺の名前は桜童善次郎、転生者だ!!あのクソジジイに転生させられて今年でもう16年たったが、いまだに彼女が出来ない…(泣)
まあ、人生まだまだこれからだし、それに今日から俺は高校生!!つまりは青春の真っ只中!!流石に彼女の一人や二人できるだろう!!ん?16年間何をしてたのかだって?まあ、いろんなことがあったな…
まず俺が転生した世界についてなんだが、ほとんど前の世界と変わらなかった。けどなんかちょくちょく違うところはあるな、例えば、太平洋の真ん中に大きな島があって、そこにも前世に無い国があったり、能力者と呼ばれる不思議な人たちがいたり、あと今はあまり戦争が行われていなかったりと、なかなかに平和な世界であったりする。てか魔法うんぬん言ってたわりには何も無い普通なとこなんだけど。
それで、俺が転生してからのことなんだが、そりゃあもう大変だったね。なんせ赤ん坊の頃から意識があるから、母さんが母乳飲ませてくるのが恥ずかしくて恥ずかしくて…。ちなみに母さんは美人だが背が小さくてさらに童顔、そして父さんはでかい、何がでかいって?もういろんなところがだよ。始めてみた時は思わず前世の自分と比べて落ち込んでしまった…。あと、妙に老けて見える、母さんと同い年の筈なのに…。
それはともかく、大変だったのはこれからだ。歩けるようになった頃は、周りの子にあわせようとするのに苦労したし、文字は一緒だからすぐに読み書きができることがばれて、必死になって言い訳したり(パパとママを驚かせるために隠れて練習してたといったら、さっすがわが息子といって泣いて抱きついてきた。二人ともものすごい親バカである)、こっそり魔法の練習をしていたら(なぜか自分の部屋に『チェリーでも分かる、初心者魔法講座』という本があった、あのクソジジイ今度あったらただじゃおかねぇ…)幼馴染の希望ヶ丘四葉に見られて必死に言い訳したり、子どもだからって四葉と一緒に風呂に入ったときに生まれたときからある胸の紋章(半分に分かれたハート型の真ん中に王冠のマークがあり、その周りに四つの人魂のようなマークがある)を見られ、必死に言い訳しようとしたら目をキラキラさせて「かっこいい…」となぜか感動されて、誰かに言ったらこれが消えちゃうといって口止めしたりと、とにかく大変だった。てか今思ったら、俺言い訳しすぎじゃね?
ちなみに幼馴染と言ってもよく漫画やギャルゲにあるようにおれに惚れているわけではない。そう、四葉には好きな人がいる!!子どものころに「わたしおおきくなったらぜんちゃんのおよめさんになる~」ってよく言われてたからちょっと期待してたから、結構ショックだった…。やっぱり子どもの頃の約束なんてこんなもんなんだな、はぁ。
それで、中学に入ったころ辺りにいきなり四葉に大事な話があるなんて言われて内心すげぇ喜んだんだ、ついに俺にも春が来たって。だけど現実はそう甘くなかった。なぜならその大事な話とは恋愛相談だったからだ!!いやね、さっきまでの自分がすげぇ恥ずかしかったね。しかも四葉の奴、俺に相談しといて誰が好きか全然教えてくれないんだぜ?
しかも相談の内容って言ったら、デートの練習と称して買い物の荷物持ちにされたり、料理の練習と称してポイズンクッキングの餌食にされたり、もう散々だったね。ちなみに料理のほうは俺の頑張りのお陰で何とか食えるレベルになった、それでもまだ“まずい”と思えるレベルだが…(しかし、なぜか卵焼きだけは美味い)。他にもたまに弁当を作ってくれたり、そんとき真っ赤な顔で「はい、あ~ん」をやってきたり、毎年バレンタインにチョコくれたり、もう下手な恋人より恋人やってるからちょっと心配になってきてこのことを両親に行ってみたら、「流石あなた(お前)の息子ね(だな)」ってため息疲れた。どういう意味なんだ??
まあそんなこんなで彼女も出来ずに16年、俺もついに高校生だ!!つまりは青春真っ盛り!!今度こそは彼女を作ってやる!!
ピンポーン
おや、誰か来たようだ。扉をあけるとそこには…
「おはよう善ちゃん、今日もいい天気だね~」
幼馴染の希望ヶ丘 四葉がいた。…まぁ、分かりきってたけどね。明るめの茶髪で、サイドポニーって言うんだっけ?少し長めの髪を左に四葉のクローバーを模した髪留めで括っている。小柄で、俺より頭ひとつ分くらい低く、性格は明るくてやさしい。それに可愛いので学校の男子にも結構人気だ。
「おう、おはよう。確かにいい天気だな、絶好の昼寝日和だ」
そう言って靴を履き、鞄をもってネックレスを首にかけ、家を出る。
「いってきまーす!!」
台所のほうからいってらっしゃーいと聞こえる、たぶん母さんは皿洗いをしていたのだろう。
フハハハハ!!待っていろよクソジジイ!!もうすぐ汚名返上してやるからな!!