第十一話 童帝と勇者の戦いは決着がついた
目の前には俺を襲ってきた少女、周りに人はいない。つまりここに居るのはこいつと俺だけ、派手なことさえしなければ大丈夫だ。ちらりと彼女の方を見ると肩を震わしている、先ほどの言葉に相当頭が来たらしい。
「……一体どこまで私を愚弄すれば気が済むのだ魔王!!」
「いや知らないし、それに魔王じゃないし」
それにしても目が血走ってとても女の子がしていい顔じゃないですよ、めちゃくちゃ怖いって!!それにこの迫力のある声と殺気、師匠に鍛えてもらってなかったら元一般人だった俺は一瞬で気絶してただろうな。
「一体何の魔法かは知らんが、そんなもの発動させる前に貴様を潰せばいい!!」
やばい、気づかれたか!!彼女は一瞬で俺の目の前にある魔法陣の前まで移動し、俺を潰すために障害となる魔法陣に斬りかかった。やばい、頼むから持ってくれ!!だけど準備は遅々として進まない、おかしい、何かを忘れてるのか?なんだ、思い出せ……そうだ!!詠唱だ!!思い出した瞬間に頭に詠唱文が浮かび、驚いた。神のじいさんのおかげかな?
――ここに来たるは定めなり――
奴の目が一瞬驚きに染まるが、すぐに攻撃を再開し始める。なんてことだ、魔力は急激に減るが、魔力に反比例して俺の心は満たされる。
――惑いし穢れ無き者どもよ――
攻撃はより一層過激になり、目の前の魔法陣に罅が入る。けれど心配なんて微塵にもない、逆に心が踊るばかりだ。
――我らの契は世界を越える――
罅は徐々に広がり、今にも崩壊しそうだ。だからなんだ、俺は絶対に逃げない。なぜなら、手の届くところに欲しいモノがあるからだ。
――童よ来たれ、我は汝を導く帝なりや――
魔法陣が壊れ、源仙がこちら向かってくる。やつは憎たらしい笑みを浮かべたが、その笑みもすぐに消えるだろう。なぜなら……
――共に歩もう、我が世界を魅せてやる――
「悪いが、タイムリミットだ」
「なっ……」
――第■■□ットの不完全な開h■■を確認――
魔法陣を中心に突風が吹き荒れ、源仙は吹き飛ばされる。突風が吹き止むと、魔法陣から発せられた稲妻の姿はなく、代わりに桜花の花弁が舞っていた。ほのかに桜の香りがする、俺はその香りを鼻イッパイ吸い込んで宣言する。
「『童帝王の絶対魔法』発動!!」
――judge,対象者が確認できないため、『童帝王の絶対魔法』を不特定に発動します――
「刮目せよ、これが帝の力だ」
その瞬間、世界がまばゆい光に包まれた。
「うっひょーーーー!!レミたんキタ━(゜∀゜)━!!これでかつる!!」
「「……はっ?」」
この時、おそらく俺と源仙の心はひとつになっただろう。こいつ誰だ?目の前魔法陣の上にいるのは太ったメガネの男、ボサボサに伸びきった髪と顔にできたニキビは不潔感を漂わせ、汗とその他の得体の知れない臭さが漂う。これは……カビか!?
そいつは丸めたポスターがはみ出ているパンパンのリュックを背負い、携帯用ゲーム機をしながら何故かハイテンションに独り言を言っている。
「いやいやいや、なんだお前h「ここここれは、本物のレミたん!?拙者のためにここまで来てくれたでござるか!!」だよ!?」
はっ?何言ってんだこいつ? ……ってもしかして源仙のことか!?そんなことを考えていると奴はいきなり源仙にル○ンダイブをってやめて!!今そいつ無茶苦茶キレてっから!!ほら手に握ってる木刀握り締めて今にも俺たちを殺さんとしているよ!!
「さぁレミたん、今こそ次元を超えた愛を育mぐふぉう!!」
やっぱりぶっ飛ばされたよ!!そしてこっちのこと親の敵みたいな目で睨んでくるし!!絶対馬鹿にしてるとか思われてるだろうけど仕方ないじゃん!!誰がこんなの出てくるって予測できるよ!?
「キ・サ・マァァァァ!!!!こんなもので私を「我々の業界ではご褒美であります!!」のか!!って、えっ……?」
うわっ、あんなのくらって平然としていると思ったらご褒美とか。しかももっとお願いしますとか言って厳選に向かって走るし、てかあの源仙がヒいてる!?
「ひっ、くるな変態!!」
「レミたんの罵声とか、何これ萌ゆる!!」
あっ、ついに源仙涙目になってるよ。なんか流石にかわいそうになってきたな、だけどあいつその涙目すら興奮の燃料にしてるし近づきたくないな。
「く、くそ!!覚えていろよって来るなぁぁぁぁ!!」
「レミたん待ってーハァハァ」
最後に捨て台詞をはいて全速力で逃げた源仙は一瞬で見えなくなった、……とりあえずコイツはどうやって戻せばいいんだ?
「んっ?なんだ男か……」
イラッ、やっとこっちに気づいたと思ったらなんだその反応は?とりあえずむかつくからコイツの足元の魔法陣を思いっきり踏みつけてやった、てかこれコイツが動いたら一緒に動くんだな。
「ちょ、それはらめーーー!!」
踏みつけると何かいい音で砕けた、そしてあいつは変なことを叫びながらパシュンと音を立てて跡形もなく消えた。
「……一体なんだったんだよ?」
俺のつぶやきには誰も答えない、なんだかさみしいな。疲れたしもう帰ろう、そしてバイトの時間まで寝てよう。それにしても源仙は何者だったんだ?明日学校で面倒なことにならないといいんだが……
『童帝王の絶対魔法』については次話で説明します