第九話 童帝は運命の予言を受けた
「ねぇ善ちゃん、なんかさっきから源仙さんに睨まれてるけど、何かあったの?」
教室で弁当を食ってると、四葉がいきなりそんなことを言ってきた。ちなみに今は俺と四葉、そして淡雪と一緒に机を囲んで食っている。
「ちょっとアレ見られちゃってさ。ほら、源仙さんって真面目そうじゃん」
「ええっ!?アレ見られちゃったの!?」
「アレってなんですか?」
「ああ、それくらいしか思いつかん。昨日一ノ瀬にドロップキックした時も睨まれたけど、あの時は今日みたいにずっとじゃなかった。そういえば彼女は一ノ瀬のファンなのか?」
「それはないと思うな。だって一ノ瀬くんの方全然見てないし、それにファンならあの子達みたいに一緒にご飯食べるんじゃない?」
そういって四葉は一ノ瀬の方に視線を向ける。一ノ瀬は周りに美少女をはべらせて仲良く食事をしているようだ。
「まぁ、確かに」
「二人共なんの話ししてるんですか?ついていけません」
「ああ、ちょっと一ノ瀬について話してた。そういえばあれから大丈夫だったか?」
「私は大丈夫だったよ、近くに来ても先生に言うよって笑顔で言ったらどっか行ったし」
「一ノ瀬ちゃんの話だったですか、あの子はああ見えて悪い子じゃないですよ」
あれ?意外にも淡雪が一ノ瀬をかばってる、って一ノ瀬ちゃん!?
「ねぇ、もしかして淡雪ちゃんって一ノ瀬くんと知り合い?しかも結構古くからの」
「ふぇ!?は、はい。実は幼稚園からずっと一緒だったんです」
「へぇ、意外だな…」
まさか一之瀬と淡雪が知り合いだったとは、びっくりだ。ってことは一ノ瀬の恥ずかしい過去の一つや二つ持ってんじゃね?正直聞きたくないけど。それにしても、なんか慌ててたけどどうしたんだ?
「そ、それより今日もまた放課後にどこか行きませんか?前回はお詫びのはずなのにこちらが奢ってもらってしまったので、今度は私に奢らさせてください!!」
あー、一応前のこと反省してたんだ。でも正直女の子に奢ってもらうのは嫌だな。
「ちゃんと自分で払うから私もついて行っていいかな?」
「もちろんです!!」
「あー俺もいいよ、奢ってもらわなくて。あれは男の甲斐性ってやつだから気にすんな、その代わり今度はちゃんと美味い店を紹介するだけにしてくれ」
「はい、わかりました!!」
あー、やっぱり女の子は笑顔が一番だな。なんか癒される。
「あっ、それと今日はバイトだから先に帰るわ。だからまた今度教えてくれ」
「えっ、まぁバイトなら仕方ないですよね」
「そういえば善ちゃんのバイト先まだ聞いてない?」
「あっ、桜童さんのバイト先は「それ以上言わないで!!」…えー、なんでですか?」
「それはさ、ほらバイト先で知り合いに会うと気まずいだろ?それにこれも昨日のお詫びだと思って!!」
「…はい、そこまで言うなら言わないです」
「えー、善ちゃんのケチー」
へっ、何とでもおっしゃい!!それにしても危なかった、思わぬところに伏兵がいたとは。正直四葉が来たら麻女さんと俺の恥ずかしい昔話に花を咲かせそうで怖いんだよな…
「…ねぇ、善ちゃん」
「なんだ、急に真面目な声出して」
「あのね、私なんか嫌な予感がするんだ。だから一緒に帰らない?」
…マジか?まさか今日に限って四葉に予言されるとはな。
とても運がいい四葉は自分か親しい人に危機が迫ると嫌な予感がすると言ってくることがあり、俺たちはこれを予言と呼んだ。大体は四葉と一緒にいるか何か対策を取れば回避できるが、それを無視すると何か危険な目に遭う可能性がある。例えばロリコンは警察に捕まりかけたし、俺とリア充と紅ちゃんは師匠に3時間正座で説教されたし、ロリコンに出会った時もそうだったし、オジさんは帰ってこなかった。
「大丈夫だって、俺もでっかくなったし一人で帰れるよ」
そう、大丈夫だ。確かに何かしらの危険が迫っているだろうが、大抵はくだらない事で命に関わるようなことはめったにない。その時は四葉だってもっと必死に止めるはずだ、気をつけていれば大丈夫なはずだ。それに四葉の運がいいからといって四葉が巻き込まれないわけじゃない、だから四葉とは帰らない。
「だからお前は淡雪と一緒に楽しんどけ。ほら、さっさと食わないと昼休み終わるぞ?」
「えっ、うそ!!もうこんな時間!?」
「わわっ、早く食べないと授業始まっちゃいますよ!?」
時計を見て慌てる二人を見ながら無言で弁当を食べる。うん、やっぱり母さんの料理はうまいな。
11/23 第二話の登場人物の名前を訂正しました