↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/13

11.妹の未来1

「カロリーネ、君の妹君がついにや(・)ら(・)か(・)し(・)て(・)しまったよ」

「まぁ」

「それも取り返しのつかないやらかしだ」

「あら」


 いつか何かをやらかしてしまう、とは思っていましたけれど。随分、遅かったようですわ。私としてはもっと早い段階の〝やらかし〟を想定していましたのに。いいえ、遅かったからこそ「取り返しのつかない」事態に発展してしまったのでしょう。


「それで、妹は何をしたのでしょうか?」

「ああ、それは——」


 夫から事情を聞き、もう呆れるしかありませんでした。

 産まれたばかりの赤子を連れて城を無断で外出……夫が言うには家出だそうですが。

 しかも、赤子は薄着のまま外に連れ出したらしく、そのせいで赤子は亡くなってしまったそうです。妹は「私に産まれた子供を見せたかっただけ」と、言っているようですが……。何故、私に見せる必要があるのでしょうか?

 誕生祝いなら贈ったはずです。

 今、私はソル王国の王妃。

 夫の国王と連名だったので気づかなかったのでしょうか?

 いえ、問題はそこではありませんわね。


「何故、ユリアは我が子の防寒をしなかったのかしら?」


 そうすれば、赤子は死ぬことはなかったでしょうに。


「それなんだが、本人は防寒をしていると言っているんだ」

「……赤子は薄着ですのに?」


 意味が分かりません。

 薄着なのに防寒をしている、とは?


「う~~ん、妹君は、自分はしっかりと防寒対策をしているから大丈夫、とのことだ」

「ますます意味が分かりません」

「防寒している自分が腕に抱いているから大丈夫と思った、ということらしい」

「……理解に苦しみます」

「普通は、そうだ。理解する必要はないよ」


 やや呆れ気味な夫に、私は苦笑で返すしかありませんでした。

 実の妹とはいえ、本当に理解に苦しみます。

 はぁ~~……。

 ただ、それでも妹です。

 可愛い妹ですもの。

 何を考え、何を思っているのか。理解したいと思ってもいるのです。たとえそれが、常人には中々難しいことだったとしても……です。


 一ヶ月後、妹は療養に入ったと帝国の伯母様から手紙が届きました。

 帝国での慣れない生活、度重なる出産——色々と重なりノイローゼ気味になっていたと。

 確かに、おかしな行動が多い妹です。「ノイローゼだから」と、言われれば納得する者は数多くいるでしょう。

 ですが、私は、あの子の姉です。

 妹の奇異な行動の数々は「ノイローゼだから」ではありません。全て「正常な精神状態での行動」だと断言できます。

 ただ、家族以外の人からは理解されないだけで……。


 帝国の第二皇女の死は、悲劇として語られるようになるのに時間はかかりませんでした。

 生まれて間もない子が亡くなったのですから当然でしょう。

 その発端となったのは、皇后の行動なのです。

 本来なら厳しい目で見られ、非難の的になるはずの皇后は「ノイローゼ」という盾によってそれを躱していました。


「懐妊が早すぎたのですわ」

「ええ、ご結婚も早かったですものね。もう少し待ったほうが宜しかったのだわ」

「王女とはいえ、いきなり帝国の皇后陛下ですものね」

「中々、厳しいものがありますわ」


 ソル王国の社交界では、妹の話で持ち切りです。

 大国の皇后のご乱心ですからね。嫌でも噂になります。


「療養されると聞きましたわ」

「ええ、早く良くなるといいですわね」

「全快の見込みはないとのお話ですわよ」

「まぁ、お気の毒に……」

「空気のいい場所での生活なら、少しは良くなるのではないかしら?」

「医師や看護師も常時いらっしゃるとか」

「なら、まだ快復されるのではないかしら?」

「どうでしょうね。マシにはなるかもしれませんけど……」

「難しい問題ですわね」


 いつの間にか妹は田舎に療養する話になっていますわ。

 そのような話は帝国から聞いていませんが……?

 伯母様からの手紙には「自室でふさぎ込んでいる」としか書かれていませんでした。


 社交の場では様々な情報が飛び交うのは自然なことです。その中で、噂話が肥大化した、というのもよくある話。少なくとも女性たちは妹を「子供を亡くした気の毒な皇后陛下」と同情的ではありますが、事実を知っている方々は、噂話に加わることなく、別の話題を話されていました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。