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「ほんとうですかっ」
マルスさんが生きている。
また会える。
「マルスさんは今どこに?」
「ヒイロ」
普段よりも低めの声が静かに響いた。
「今はまだ、その時ではない」
それは、どういうこと……
「マルスさんは無事なんじゃ?」
「言葉に偽りはないよ。安心しなさい」
「でも」
無事なのに、
「会えないって、どうして?」
「彼の意志だよ」
つまり、そういう事……
口に出すのが怖い。けれど言葉にしなければ、もっと大きな不安にさいなまれる。
「マルスさんは、俺に会いたくない」
だから帰って来ないし、無事なのに姿も見せてくれないんだ。
「それは違う!」
ビクンッ
王様らしくない大声に、心臓が大きく拍動した、肩が揺れた。
「違うよ、ヒイロ。君に会いたくないものか!」
「でも」
「会いたくないから会わないんじゃない。会いたくても、今は……」
(王様?)
「彼を信じてあげてはくれないか」
紅潮しているのだろうか?
頬を撫でた手袋の下の体温があたたかく感じた。
「君が会いたいと願うように……いや、それ以上に...…」
彼も...…
「君に会いたいと願っている」




